あれこれdiary

海自OBによる偏見御免徒然あれこれdiary

東京音楽隊の「世界の国旗国歌コンサート」…スピンオフ

 3月1日(日)に紀尾井ホールで開催された「世界の国旗国歌コンサート」の模様を、2週間かけて、全6回の報告記事で紹介させていただきました。

 素晴らしいコンサートでしたし、自衛隊音楽隊の演奏会が全て中止となる情勢下、唯一の機会でもありましたので、私にとっては大変心に残る演奏会となりました。

 (6)でも書きましたが、一つの演奏会の報告記事を6本もの記事の分割して2週間もかけて書き続けたことはこれまでありません。書き終えたくないという私の潜在意識がそうさせたに違いないと思っています。

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 そして、スピンオフのネタも温存してありました(結果論)(╹◡╹)

 この演奏会で新たに出会ったYさんのことについて(2)で触れましたが、その際、Yさんからお聞きした「ちょっと微笑ましいエピソード」を改めてご紹介しますと書きました。構成上、本筋の記事の中で取り上げることができませんでしたので、スピンオフでご紹介します。

 (2)でもご紹介したとおり、Yさんは愛知県にお住まいで、昨年行われた東京音楽隊蒲郡・名古屋公演をお聴きになり大変感銘を受けられたとのことでした。

 Yさんはフィギュアスケートの大ファンでもあり、大会をご覧になるため、北海道へも何度となく通われているそうです。

 さて、そんなYさんが、代々木体育館で開催されたフィギュアスケートの大会を観戦するために上京された折に、愛知での公演で大変な感銘を覚えた東京音楽隊の所在地を訪ねてみたくなったのだそうです。

 住所を頼りに用賀の住宅街を歩いていると、なんたる偶然か、自転車に乗った樋口隊長にばったり出くわしたそうです。樋口隊長が自転車で移動しているのもビックリですが(^ ^)、そんな隊長にばったり出くわすYさんの強運にも驚きですね。

「あ、隊長!先日は愛知公演を聴かせていただきました、とても素晴らしい演奏に感激しました」とご挨拶すると、樋口隊長は「え?わざわざ訪ねて来てくれたんですか?だったら、せっかくですからうち(東音)に寄って行きませんか?」と誘ってくださったとのこと、有名な樋口隊長の、あまりの気さくさに心底驚かれたそうです。

 道すがら、代々木で行われたフィギュアスケートの大会を観戦するために上京したこと、音楽まつりが代々木で行われたこともあり、縁を感じたことなどを話しながら東京音楽隊の敷地へ向かいます。

 隊長に伴われて初めて足を踏み入れる東京音楽隊の敷地。

 庁舎入り口では、隊員の方々が隊長を出迎えるような感じ(おそらく当直士官と当直海曹でしょう)だったとのことで、なんだか隊長と一緒に正門を通ることだけでも「申し訳ない」気持ちになったそうですが、その反面、”あの”東京音楽隊の本拠地を訪ねる興奮と好奇心は半端なかったそうです。わかりますよね(^ ^)

 Yさんが、庁舎入り口付近に飾ってある盾などを背景に写真撮影をさせていただき、「ありがとうございました」と礼を述べて帰ろうとすると、「これをどうぞ」と海上自衛隊のカレンダーを頂き、それはそれは大感激だったそうです。

 それにしても、とYさんはおっしゃいます。

 「樋口隊長、偉い方なのに全然そんな素振りも見せず、初めてあったばかりの私に、あんなに親切にしてくださって、信じられなかったです」

 樋口隊長の人柄については、皆さん異口同音に「気さくでサービス精神旺盛」とおっしゃいます。もう、そのママの方だと私も思います。

 Yさん、貴重なエピソードをありがとうございました。

 

  いつか、庁舎内を見学する機会があったなら、2階の講堂に飾られたジョージ・ハワード大佐顕彰をご覧になるといいなと思います。この写真は、私が昨年5月に水交会の研修で東京音楽隊に初めてお邪魔した際、ブリーフィングを受けた講堂の後方に展示したあるのを撮影したものです。樋口好雄隊長の名が輝いています。

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東京音楽隊と樋口好雄2等海佐に授与されたジョージ・ハワード大佐顕彰

 

 そんな樋口隊長の任期はあと2年ほどあります。というか、あと2年しかありません(≧∀≦)

 それなのに、このコロナ騒ぎで、その指揮ぶりを見る機会が思い切り絞られてしまっています。それってどうなの?誰に聞いてるんだろ(≧∀≦)

 東京音楽隊のファンの皆さんは、新型コロナへの不安感とともに、樋口隊長率いる東京音楽隊の演奏が本当にまた聴けるのだろうかという心細さを抱えておられるのではないかと思います。

 でも今は、それをじっと耐えて待つしかありません。

 その日は必ずやって来ますから。

 

 本記事末尾に埋めた動画は、一昨年の6月18日に大阪を中心に大きな被害を出した「大阪府北部地震」の際、東京音楽隊がリリースしている動画の一部を拝借して急ごしらえで編集したものです。この動画を載せた応援記事も書きました。

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 そして、同年9月6日に北海道を襲った「北海道胆振東部地震」の際にも、やはり応援記事にこの動画を載せました。

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 三宅由佳莉さんが歌うこれらの曲が、震災後の不安を抱えておられるであろう皆さんの心に寄り添ってくれるに違いないと思ったからです。

 そして今、色々な意味で不安を抱えておられるであろう皆さんの心にも寄り添ってくれるはずだと思います。

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東京音楽隊の「世界の国旗国歌コンサート」(6)

前回の続きです。

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 前回、中川麻梨子さんを助手席に乗せた楽器運搬車が帰路につくところまで辿り着きました。

 いつもとは勝手の違うコンサートではありましたが、東京音楽隊のバンドの演奏を生で聴き、中川麻梨子さんの、普段は聴く機会のない外国の国歌の歌唱も楽しむことができた高揚感が覚めやらぬうちに、始めてのお見送りに参加していた私は、会場を後に走り去る楽器運搬車を見ながら思いました。

 まもなく、樋口隊長も、他の皆さんもここから去って行ってしまうんだな。

 楽器運搬車が去っていくのを見て、そんな当たり前のことを改めて感じたのは、もう当分の間、彼らの姿を見ることもないという寂しい気持ちがあったからだと思います。周囲におられた皆さんも同じことを感じていたのではないでしょうか。

 次にいつ彼らの演奏を聴くことができるのか、それは誰にもわかりません。首尾よく感染防止対策が奏功すれば良いのですが、それでも、一度設けた制限を解除していくには、一定の期間が必要でしょう。そんなことも考えました。

 そして、この演奏会の報告記事が分割形式で長々と続いているのも、実は、書き終えたくなかったからではないのかなと思います。自分のことなのに「思います」と言うのも変な話ですね。でも実際、特にそのような意識を持っていたつもりはないのですが、何故か当初から記事を分割し始めた理由が私にもわからなかったのです。今になって考えれば、きっと、いつまでもこの演奏会の記事を書いていたいという気持ちがあったからではないかと思った次第です。だって、この記事を書き終えてしまったら、もうしばらくは音楽隊の演奏会のことを書くことができないのですから。

 とは言え、この演奏会の記事も今回で終わりです。

 最後に、東京音楽隊の皆さんをお見送りした時の様子をお伝えしたいと思います。

 楽器運搬車が走り去るのを見届けたあと、私たちは、隊員の皆さんが出てこられるであろう紀尾井ホールの裏側に移動しました。

 最初にキャッチしたのは、チューバ奏者の芝陽子さんでした。

 大阪泉佐野市でのコンサート記事でも紹介させていただきましたが、いつも明るい笑顔を絶やさず、名前のとおりお陽様のような方です。

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 おそらく、隊員の皆さんが乗車するバスの誘導等があるので急いでおられたのだと思います、「立ち止まることができないので、動画でお願いします」と言いながらも、掛け値無しの満面の笑顔を頂きました。

 実は、芝さんメインの記事が書きたくて、以前から機会を伺っているのですが、なかなかお話をお聞きすることができません(≧∀≦) 昨年の赤坂ランチタイムコンサートのスピンオフ②で、フォーカス記事を書く許可を頂きたいと思っている方とコンタクトし損ねたことを書いたのですが、その隊員さんこそ芝陽子さんでした。

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 今回、短い動画を撮影できたことは、偶然とは言え私にとっては大きな成果でした。遠からず、芝陽子さんのフォーカス記事が書けることを楽しみにしています。

 さて、芝さんが足早に通り過ぎてから、少しの間をおいて、隊員の皆さんが次々と出てこられました。ほとんどがマスクを装着されていますので、誰が誰やらと言う感じですが、わかる人にはわかるのかな?私が明らかにわかったのは樋口隊長だけです。

 この時の様子を収めた動画を、FUJI20171118さんがアップしてくださっていますのでご紹介します。雰囲気がよく伝わると思います。

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 隊員の皆さんが歩いて向かっているのは、先ほど楽器運搬車が出発した紀尾井ホールのエントランス前です。そこに、東京音楽隊の大型バスが横付けするようです。

 私たちも、隊員さんたちの後を追いました。

 エントランス前にはすでに大型バスが到着していました。隊員の皆さんが順次バスの中に消えて行きます。バスの窓ガラスは全てスモーク仕様となっているため、中の様子は全く見えません。スペリアFUJIとそのお友達のKさんは、東京音楽隊のトランペット奏者・藤沼直樹さんの大ファンですので、皆さんが次々乗車される中、藤沼さんとの別れを惜しんでいました。藤沼さんのファンなので当然なのですが、側から見ている私には、それだけではないような気がしました。

 今直面している事態によって、大好きな東京音楽隊をはじめ、自衛隊の音楽隊との絆が断ち切られようとしているかのような切迫した危機感を彼女たちは感じていたのではないかと思います。その心理の背景には、やはり、この得体の知れないウイルスの脅威がもたらす計り知れない不安感というものがあったのでしょう。

 まるで「今生の別れ」のようなシーンが続きます。

 そして、他の隊員の皆さんの乗車が終わったところで、藤沼さんが「もう、行かなくてはなりませんので、それでは!」と終止符を打って、バスに乗車されました。

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 このシーンが、私たちファンと東京音楽隊のしばしの別れを象徴しているような気がしました。しばらく会えないけど、再会の時まで、お互い頑張ろう! そんな思いが通じ合ったように感じられました。

 スモークガラスで隔てられた東京音楽隊の皆さんが、大型バスで帰路につく様子を、やはりFUJI20171118さんが動画で残してくださっていますので、ご紹介します。

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 東京音楽隊の皆さん、新コロ脅威が蔓延しつつあるなか、素晴らしい演奏をありがとうございました。次に演奏を披露していただけるのはいつになるのか、誰にもわかりませんが、その日まで、普段はなかなか取り組むことのできない、自分の音楽と向き合う時間を充実していただければと思います。そしてまた、一皮向けた東京音楽隊の姿を見せて下さる日を楽しみにしています。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

【付録】

 すでにお伝えした通り、東京音楽隊の楽器運搬車はカーゴボックスへのグラフィックペイント施行中であったため、今回の演奏会では、横須賀音楽隊の車両を借用していました。

 ゆっくりと記事を書き進めているうちに、なんと、東京音楽隊の楽器運搬車のペイントが完成していました。なんともゴージャスですね(╹◡╹)

 詳しくは、東京音楽隊のホームページをご覧ください。

www.mod.go.jp

 この真新しいグラフィックペイントを施した東京音楽隊の楽器運搬車をこの目で見る日が楽しみです。

9年目の「3月11日」

 一昨年のこの日、1本の記事を書きました。

 2011年3月11日に発生した東日本大震災から、7年が経っていました。多くの方が、「もう7年も経ったのか」「まるで昨日のことのようだ」という感慨に襲われたのではないかと思います。

 2018年の3月11日は日曜日でした。

 私は普段テレビを見ませんのでわかりませんが、おそらく多くの特集番組が組まれているのだろうなと思いながら1日を過ごしたのを覚えています。

 記事を書くことには逡巡もありました。

 まだ、あの時の自分の感覚や思考が咀嚼し切れていはいなかったことに加えて、震災以降、「祈り」という歌を通じて被災者を始め多くの国民を勇気付けてこられた三宅由佳莉さん・東京音楽隊の活躍を遅れ馳せで追体験し始めたばかりの頃でしたから、「あの震災」を自分がどう捉えているのかを書き切る自信がなかったからです。

 ですから、記事が書きあがったのは本当に一日の終わり頃でした。

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 それでも、書いておいてよかったと思います。わずか2年ではありますが、この間に私の中では「あの日」が少しだけ歴史に近づきました。忘れることは決してないだろうけれど、自ら感じたものが次第に整理され、記憶という形になって収まっていきます。そのように整理された記憶ではなく、まだライブの感覚として残っていたものを書き残したことで、2年前のこの日に自分が何を感じていたのかを、心の中に再現するよすがにはなっているからです。

 さて、「あの日」から9年が経過した我が国はいま、全く類の異なる脅威に晒されています。目に見えない脅威ですから、不安が先立つのも仕方ないかもしれません。

 でも、人間は強い存在です。

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https://www.photolibrary.jp

 そのことを思い出させてくれたのが、今日という日でした。

東京音楽隊の「世界の国旗国歌コンサート」(5)

 前回の続きです。

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 正直言って、こんなに長い報告になるはずではありませんでした。東京音楽隊の様子を軸に、簡単にまとめようと思っていたのですが、国旗や国歌に対する吹浦忠正さんや新藤昌子さんの真摯な思いというものが、このコンサートを通じて静かに、でも深く伝わってきたんだと思います。記憶にある限りのことを全部書きたくなってしまったんです。大変冗長になってしまいましたが、ご容赦ください。

 前2回の記事で、演奏会の内容について書いてきましたが、構成をうまく整えられず、紹介できなかった出演者の方々がおられます。

 ステージの紹介の中で何度かグランドピアノについて触れましたが、ピアニストが出てきませんでしたよね。

 今回のコンサートでメインのピアノ演奏を勤めたのは気鋭のピアニスト、鼓緒太(こおた)さんでした。

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 ちょっと厳つい感じの風貌ですが、美しい演奏を聴かせてくださいました。

 そして、特別出演でピアノ演奏を聴かせてくださったのが、新垣隆さんです。かつてある事件がきっかけで脚光を浴びるようになりましたが、才能溢れる作曲家としても有名ですね。

www.takashi-niigaki.com

 2017年11月12日に放送された新垣さんのラジオプログラム「People」に三宅由佳莉さんが出演されたこともありました。懐かしいな。

park.gsj.mobi

 

 そして、このコンサートを終始大声量で支えたのが、国歌合唱団「コール・アンセム」の皆さんです。一般からの公募で、半年くらい前から時間をやりくりしながら練習会に参加し、この日のために準備を進めて来られました。

 国歌の合唱は全て原語ですから、それらを歌いこなすまでには大変な苦労があったのではないかと思いますが、ステージ上の皆さんのお顔を一人一人拝見しますと、どなたもとても素敵な表情で、それぞれの国歌を一言一言大切に歌われているのがわかりました。

 そんなコール・アンセムの皆さんも、このコンサートの大きな魅力の一つだと思います。次の機会があったら応募してみようかな、とも思いましたが…

音痴だし、やっぱ無理か( T_T)\(^-^ )

 

 それにしても、このような大がかりなイベントから東京音楽隊にお呼びがかかるこは、ファンとしては嬉しい限りです。防衛省として、というより政府として多人数が集まるイベントの開催を極力抑制している中、陸海空とも音楽隊の演奏会は全て中止となりましたが、このコンサートについては、主催者側から防衛省のトップレベルまでの粘り強い働きかけにより例外中の例外として認められたようです。

 このご時勢、ステージの上に、樋口隊長はじめ東京音楽隊の皆さんの姿を見ることができたこと、そしてその力強い演奏を聴くことができたことは本当に幸いなことでした。

 感動の余韻に浸りつつ、私たちは東京音楽隊の皆さんを見送るべく、楽器運搬車のあたりに移動しました。私は通常、演奏会が終わるとさっさと帰ってしまうのですが、今回は、今後しばらく東京音楽隊の皆さんの姿を見る機会もないんだなという思いもありましたので、お見送りさせていただくことにしました。初めてのことです。

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 楽器運搬車の周りには、普段目にすることのないこの車両を見たり写真を撮ったりする方が結構集まっていました。車両が横須賀音楽隊から借用したものだったこともあり、「東京音楽隊なのに横須賀にあるの?」という声も上がっていました。外国人と思しき男性も一人スマホを準備して立ってましたので、隊員のどなたかの姿を追っているファンなのかもしれません。

 搬出口のシャッターが上がり、トラックへの楽器の積み込みが進んで行きますが、何人かの隊員の方がマスク装着の姿で歩道上に展開して歩行者の安全誘導に当たっていました。そのお一人が、フルート奏者の田中英暢さんでした。昨年、カナダのハリファックスで行われたロイヤル・ノヴァスコシア・タトゥーでは安倍晴明役を演じられました。今回初めて二言三言、言葉を交わす機会があったのですが、ステージ上では迫力のある存在感が半端ない田中2曹が、失礼な物言いになるかもしれませんが、ちょっと可愛いキャラクターに感じられました。ステージを下りると、素の自分に戻られるのかもしれませんね。

 楽器の積み込みが行われる中、突然、中川麻梨子さんが登場されたものですから、あたりは俄かにざわめき始め、自然にフォトセッションのような流れになりました。たくさんのシャッターが切られてましたが、もちろん私も何枚か撮らせていただきました。いい笑顔です。

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 中川さんは、決してフォトサービスのために出てこられた訳ではありません。大事な任務があったのです。

 昨年12月に館山で行われた横須賀音楽隊のクリスマスコンサート終演後、三宅由佳莉さんが楽器運搬車の助手席に乗って会場を後にする動画を記事で紹介させていただきましたが、何と今回は、中川麻梨子さんが、全く同じ車両の助手席に乗り、運転補助員として会場を後にされたのでした。FUJI20171118さんの動画をご覧ください。

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  偶然とは言え、この短期間に二人の歌姫の同じようなシーンを見ることになるとは思いもしませんでした。因みに、トラックの向こう側で出庫警戒に当たっているのは、今回コンサートミストレスを勤められた清水恭子さんです。皆さん、何でもこなします。

 トラックを見送り、「ハイOK!」で終わりかと思いましたら、まだ続きがありました。長くなりましたので、今回はこの辺で。 

東京音楽隊の「世界の国旗国歌コンサート」(4)

前回の続きです。

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 前回は、コンサートの第1部についてご紹介しました。

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 15分間の休憩時間の間に、私たちは席を移動しました。最前列は確かに情報量は多いのですが、結構高さのあるステージに座席が近すぎるものですから、ステージ前縁に立って歌われる歌手の皆さんをかなり見上げる形になり、ちょっとしんどかったんです。

 左脇の、ステージと同じレベルにある座席が空いていましたのでそちらに座ることにしました。そこから会場内を見渡してみると、大入りなのですが、皆さんマスクをしてらっしゃいましたし、空席も結構ありました。やはりコロナの影響で来場を見合わせた方が結構おられたということなのだと思います。前回の記事でも書きましたが、出席予定だった各国大使も軒並み欠席となったようです。

 

第2部

オリンピック賛歌

 第2部の幕開けは、お馴染みのオリンピック賛歌です。

 吹浦さんの解説では、この曲はオリンピックが近代に復活し、ギリシャアテネで第1回大会が開催された際に演奏されたのですが、その後楽譜が紛失してしまい、以後の大会では演奏されることがなくなってしまったのだそうです。1958年、アジアで初の開催となるIOC総会を前に、ギリシャで楽譜が見つかり、開催国日本に届けられたのですが、それはピアノ用に編曲された楽譜だったため、JOCNHKを通じて作曲家の古関裕而さんにオーケストラ用の編曲を依頼しました。

 古関裕而さんと言えば「愛国の花」や「ラバウル海軍航空隊」など、このブログをお読みの皆さんにも馴染みの曲の作曲者ですし、海上自衛隊の隊歌「海を行く」も手がけられ、帝国海軍や海上自衛隊とも所縁のある大作曲家ですよね。

 その古関裕而さんが改めて編曲された「オリンピック賛歌」が、東京で開催されたIOC総会の際に天皇陛下昭和天皇)御臨席の下披露され、その素晴らしさに感動したIOCは、この古関版を公式のオリンピック賛歌として認定したのだそうです。以前から、感動的な曲だとは思っていましたが、このようなエピソードをお聞きし、日本人として大変嬉しく、また誇らしく感じました。高い評価を受けたからということよりも、ようやく見つかった楽譜を元に、オリンピックの象徴となる賛歌として復元しようと努力した姿勢を誇らしく思うのです。お聴きください。

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 オリンピック賛歌が吹奏される中、会場の後方2箇所の入り口から、ホワイエに並べられていた国旗が、コールアンセムの皆さんの手に握られて次々と入場して来ます。そしてステージの上に26本の国旗がずらりと並びました。壮観です。

 吹浦さんから、解説がありました。「これらの国旗は、2020オリンピック東京大会で使用される本物です。オリンピックに国旗を提供する会社から「有償で」拝借しました。」…「有償で」を強調されたので、会場は思わず笑いに包まれました。とても素敵なパフォーマンスでした。

 

オリンピック・マーチ(1964年東京大会)

 この曲も、古関裕而先生の作品です。東京音楽隊の動画がありましたのでお楽しみください。いい曲ですよね。

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13 メキシコ合衆国国歌

 吹浦さんの解説は思い出せないのですが、私には大変馴染みのある曲です。なぜかと言えば、昨年、練習艦隊がマサトランに入稿した際、艦上レセプションで三宅由佳莉さんが披露された両国国歌の独唱動画を編集する際に、何度となく聴き込んだからです。

懐かしさが込み上げてきました。

 それにしても、こんなに長い国歌の歌詞を短期間で全部覚えて歌ったのですから、三宅由佳莉さんの努力は改めて凄いなと思います。もちろん、100曲以上を諳んじておられる新藤昌子さんの凄さはまた別格ですが(╹◡╹)

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14 イスラエル国国歌

 イスラエルは、第二次世界大戦後に人為的に創られた国ですし、周囲にはその建国を認めない国ばかりです。吹浦さんの解説では、そんな環境の中で、自国のイメージを明確にしようとする意思が国旗のデザインにも現れているとのことでした。中東のアラブ諸国の国旗は、デザインこそ様々ですが、赤・黒・白・緑の色合いが共通しているとのこと、言われてみればそうですね。そのような中にあって、シンプルであるにも関わらず断然目立つのがイスラエル国旗です。なるほどと思いました。

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望郷のバラード

 ここで、やはり友情出演してくださったヴァイオリニスト・天満敦子さんの「望郷のバラード」が披露されました。天満さんの演奏を生でお聴きするのは初めてのことでしたが、まさに引き込まれるような感覚でした。「望郷のバラード」は、天満さんの才能を絶賛するルーマニアから楽譜を託されたものだそうですが、天満さんを代表する名曲ですね。

 幸いなことに、2015年に行われたコンサートの動画がYouTubeにありました!

 ぜひお聴きください。

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15 カナダ国歌

 吹浦さんから、大変面白い解説がありました。

 英連邦に属するカナダの国旗はもともとこういうデザインだったのですが、エリザベス女王を元首として頂いているとは言え、完全な独立国である以上独自の国旗を制定しようということになったそうです。

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 紆余曲折を経て、東西を海に囲まれ、雪の大地にメープルの葉が際立つデザインに落ち着きましたが、当初の案は海を表す色として青が用いられていました。ご存知の通り、カナダの公用語は英語とフランス語です。英国系とフランス系の住民がそれぞれ力を持っているからです。ところが、左右が青になると、フランス国旗のイメージに近くなってしまうので、英国系から反対の声が上がり、それではと赤になったのだそうです。世界広しと言えども、海を赤色で表現している旗はカナダだけだとのことでした。

 国歌についても、英語とフランス語の歌詞があり、比べてみると微妙にニュアンスが違うので面白いともおっしゃってました。

 前回から引き続き国歌の動画を埋め込みさせていただいている「World National Anthems JP」さんも、三種類のカナダ国歌を準備されていますが、そのうち、英語とフランス語が交互に歌われるバイリンガル版を貼っておきます。

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16 ナイジェリア連邦共和国国歌

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17 南アフリカ共和国国歌

 吹浦さんの解説では、南アフリカ共和国の国旗も幾多の変遷を経て現在の国旗になりました。英国やオランダ系住民に支配されてきた南アフリカは、その時々の情勢を反映した国旗をいくつも制定してきましたが、長きにわたるアパルトヘイトに終止符を打つことになった自由選挙で選出されたネルソン・マンデラ氏が「レインボー・ネイション」の言葉で語った理想の国家を象徴するため、6色の虹色で国旗をデザインしたとのことです。南アフリカの国旗は「レインボー・フラッグ」と呼ばれています。日本では、虹といえば7色とされていますが、実際には無限に近い色のグラデーションであり、何色かとは特定できません。諸外国では6色と認識されている場合が多いのだそうです。最も新しい独立国である南スーダンの国旗もやはりレインボーカラーになっているとのことでした。

 国歌の合唱に祭し、駐日南アフリカ大使館から、女性の三等書記官(Ms. Mabena Nokuphumla)が参加され、力強い歌唱を披露されました。ご心配もあったでしょうに、よく来てくださいました。

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18 タイ王国国歌

 吹浦さんの面白い解説がありました。詳しくは覚えていないのですが、タイ王国の国旗は以前は全く違うものでした。ある時、何かの式典だったか、パレードだったかの際、国王陛下が、上下逆さまに掲揚されている国旗をご覧になって憂慮され、絶対に逆さまにならない国旗を制定せよとおっしゃった、というような話だったと思います。そこで、上下対象の現在の国旗が制定されたのだそうです。

 しっかりとした記憶に基づいてはおりませんし、国王陛下のお言葉を取り違えている場合には不敬に当たるかもしれませんが、そこはご容赦ください。

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19 インド国歌

 吹浦さんが、駐日インド大使ご夫妻のご来臨を紹介されました。各国大使が出席を見合わせるなか、確か唯一のご参加だったのではないかと記憶します。先日、インド政府による日本人向けビザの無効化について記事を書きましたが、一方でこのように日印関係を大切に考えていることをアピールもされているわけです。

 さて、インドの国旗は中央部分に車輪のようなものが描かれていますが、これは紡績機の車だそうです。元々の図案は紡績機そのものが描かれていたのですが、その特徴を最もよく表している車輪部分を意匠化したようです。

 さて、インド国歌ですが、この歌を独唱されたのは、なんと横須賀音楽隊の中川麻梨子さんでした。それまでの国歌でも、合唱で参加されていましたが、全くの一人舞台となったのはこのインド国歌だけです。

 インド音楽独特の節回しも多く、大変難しい曲だと思うのですが、とても自然に美しく歌い上げられました。中川さんの新しい魅力が垣間見えるステージでした。

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20 ジブチ共和国国歌

 ジブチ共和国はアフリカのツノの根元に位置する国です。吹浦さんからは、この国が戦略的に大変重要な位置を占めていることから、各国が軍の基地を置いて活動拠点にしており、わが海上自衛隊も航空基地を開設して海賊対処活動に従事していることが紹介されました。

 この国の国歌だけは「World Natonal Anthems JP」さんのチャンネルで見つけることができませんでしたので、他のチャンネルからの動画にリンクします。

 ジブチ共和国の国歌にも、もちろん歌詞はあるのですが、通常、吹奏だけで歌が歌われることはないのだそうです。そこで、その習慣に習い、この曲については、吹奏のみで演奏されました。もちろん東京音楽隊の演奏です。

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21 ロシア連邦国歌

 吹浦さんが「ロシア連邦共和国のミハイル・ユーリエヴィチ・ガルージン駐日大使閣下、お見えになっていますでしょうか」…「あ、やはり無理だったようですね。ひょっとしたら行けるかもしれないという電話をいただいていたのですが、こういうご時勢ですから致し方ないですね」とのことでした。

 ロシア国旗についての解説では、近代ロシアの礎を築かれたピョートル大帝のことが紹介されていました。大帝は、若き皇太子時代に当時の最先進国の一つであったオランダで学びました。大海洋国家オランダの造船技術を目の当たりにして、自ら造船技術を習得されたほどの進取の気概に溢れた王子だったわけですが、オランダへの憧憬が、ロシア帝国の国旗にも影響したと言われているとのことです。確かに色の順序は違いますが似ていますね。

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ロシア国旗(左)とオランダ国旗(右)

 さて、ロシア国歌ですが、ソ連邦が崩壊したことにより、ソ連国歌は廃止され、ロシア連邦国歌が制定されたのですが、やはりあの勇壮な曲を好む国民が多かったのでしょう。外国人の私たちが聴いても、曲としてのスケールが大きいですし、美しく感動的な旋律だと思いますよね。ということで、ソ連邦当時の国歌の歌詞を一部書き換えて現在のロシア連邦共和国国歌が改めて制定されたということだそうです。

 実は、今回のコンサートでは駐日ロシア連邦大使館付属学校の児童・生徒の有志の皆さんが友好出演してロシア国歌の合唱に参加してくださる予定だったのだそうですが、新コロナ対策のため、日本の学校よりも先に学級閉鎖になってしまい、参加することができなくなってしまったとのことでした。残念ですが仕方ありません。

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22 パキスタン国歌

 パキスタンは元々インドの一部で、長く英国の植民地でした。第二次世界大戦後、英国からの独立を勝ち取ったインドですが、宗教や民族に起因する争いが絶えず、ついに西パキスタン(現パキスタン)、と東パキスタン(現バングラデシュ)がインドから分離独立することになりました。吹浦さんは国際赤十字のお仕事で東パキスタンに駐在しておられたこともあるそうです。

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23 オーストラリア連邦国歌

 オーストラリアも英連邦国ですから、「God Save the Queen」も国歌なのですが、それは象徴的な存在であって、実質的な国歌が「進め美しきオーストラリア」となります。ただ、私たちの耳によく馴染んでいるのは、オーストラリアの愛国歌「ワルチング・マチルダ」の方かも知れませんね。

 あまり聞きなれないオーストラリア国歌ですが、美しい旋律だと思います。

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24 ブラジル連邦共和国国歌

 ブラジル国旗について、吹浦さんから興味深い解説がありました。国旗の中央に夜空が描かれ、南十字星が中央に位置しています。南十字星を国旗に用いている国は他にもあります。オーストラリアとニュージーランドですが、ブラジル国旗に描かれている南十字星は左右が逆転しているというのです。よく見ると確かに左右が逆です。吹浦さんによると、オーストラリアとニュージーランドは地上から見たままの構図であるのに対し、ブラジルは天球儀上の星の位置関係を図柄にしたからだそうです。つまり、向こう側から見た位置関係になっているわけです。言われてみないと絶対にわかりませんね。

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25 アメリカ合衆国国歌

 コンサートも大詰めが近づきます。ここでわが同盟国であるアメリカ合衆国の国歌となるのですが、吹浦さんがクイズを出されました。ご存知の通り、アメリカ合衆国の国旗は独立時の13州が赤白のストライプで表現され、現在の州の数が左上の青地の部分の星の数で表されています。吹浦さんは、二枚の合衆国国旗を表示して、どちらが現在のアメリカ合衆国国旗でしょうか、と問われました。ほとんど同じで見分けがつかず、会場の意見も真っ二つでした。

 下の動画の図柄が正しいのですが、吹浦さんが示したもう一枚は、星の数が51個なのだそうです。つまり、アメリカは、次に州が増えた時のための準備をちゃんと整えているということです。そんな時が来るのかどうかもわかりませんが、やれる準備はやっておくということなのでしょうか、ちょっと驚きました。

 よく耳にする合衆国国歌です。出演者総出での壮大な演奏になりましたが、この時の樋口好雄隊長の指揮ぶりは、これまで見たこともないほど躍動感に溢れ、感動的なほどでした。演奏が終わった瞬間、喝采を送りながら「カッコいい!」という言葉が口を衝いて出ました。動画に収められないことが本当に悔しかったです。

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26 日本国国歌

 そして、最後は我が国の国歌「君が代」です。

 最初に書くのを失念していたのですが、コンサートの開始に先立ち、吹浦さんからは次のようなコメントがありました。

「本来、国歌を演奏する際には起立して威儀を正すのが礼儀というものです。ただ、今回はコンサートということでありますので、ご着席のままお聴きになられて結構です。ただし、第2部の最後に日本国国歌「君が代」を演奏いたしますので、その際は皆さんご起立の上、斉唱していただきたいと思います。」

 そうです、自国他国を問わず、国旗・国歌には敬意を払うのが礼儀であり、文明人として当たり前の作法であります。ただ、今回は吹浦さんのおっしゃる通り、お許しをいただいたうえで着席のまま拝聴いたしました。違和感を感じておられた方もおられると思います。言及が遅くなり申し訳ありませんでした。

 さて、君が代の演奏の前に、吹浦さんが新藤昌子さんに、「君が代」を歌う際の留意点などを質問されました。新藤さんは「歌い方で言いますと、『さざれ石の』の部分では『さざれ』『いしの』と区切ることなく『さざれいしの』と続けて歌うようにしてください。それから、この曲は演奏側の都合によってキーを変えたりしてはいけません。必ず『レ』の音から演奏を始めるのが正しいです」と教えてくださいました。

 吹浦さんが「それでは会場の皆さま、ご起立のうえ演奏に合わせて斉唱をお願いいたします」とおっしゃると、皆さんが一斉に立ち上がり、斉唱に備えます。

 もちろん私もその場に「気を付け」の姿勢で立ちます。

 演奏が開始され、腹の底から「君が代」を歌わせていただきました。そして会場に広がる一体感に、心からの感動を覚えました。どの国の国歌もそれぞれに素晴らしいけれど、日本人にとって「君が代」ほど感動する国歌があろうはずはありません。

 なんというか、言葉には表せないほどの感慨です。素晴らしかった。

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 君が代の感動が覚めやらぬ会場に、吹浦さんの印象的なコメントが届けられます。

「このコンサートを通じて、国旗や国歌というものへのご理解が深まればと思います。排他的にならない限り、国旗や国歌を通じた愛国心というものは、全ての国において大切なものだと思います。」

 まさにその通りだと思います。自らの国を愛せない者が、他国への思いやりなど持てるはずもありません。

 今回、東京音楽隊の演奏が聴きたいという動機で足を運んだ私でしたが、このコンサートの趣旨に心からの賛同を覚えますし、このような素晴らしい企画を推進して来られた関係者の皆様に感謝申し上げたいと思います。

 コンサートの報告はここまでですが、終演後のエピソードなどを次回の記事で報告したいと思います。

 

東京音楽隊の「世界の国旗国歌コンサート」(3)

 前回の続きです。

 これまで、(1)ではこの演奏会のチケットを無事購入できたところまで、

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そして、(2)では、この演奏会のアウトラインについてご紹介しました。

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 この間、インドのビザ無効化の話や東音からの演奏会中止のお知らせハガキなど、時期を失すると意味がなくなる記事を書いていたものですから、ちょっと間延びしてしましました。まぁ、そう言う事情もあるのですが、正直言って、どう記事にまとめるべきか迷いの多い演奏会でもありました。

 

 演奏会の出だしの情景がはっきりとは思い出せないのですが、MCの吹浦さんが口火を切られ、協会代表の方からのご挨拶があったような気がします。そして、演奏を担う東京音楽隊が紹介され、拍手に迎えられながら、両袖から隊員のみなさんが入場して来られたんだと思います。

 やはり人数は少なめで、27〜28名くらいだったでしょうか。

 前回の記事にも貼ったステージの合成写真をご覧になればお判りの通り、今回は、指揮台の左前にはグランドピアノが置かれているため、クラリネット席は右側にシフトしていました。

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 いつもなら、ここでコンサートマスターの横野和寿さんがチューニングの音頭を執るのですが、今回横野さんの姿はありません。コンサートマスター役を勤めたのは、バスクラリネット奏者の清水恭子さんでした(女性の場合は「コンサートミストレス」と呼ばれます)。これまで、コンサート会場などで2度ほど言葉を交わす機会をいただきましたが、控え目ながらシャープな印象を強く受けました。

 今回、コンサートミストレスを務める清水さんからは、気品と矜持が感じられ、私は思わず「美しい」と呟きながら、撮影できないことが残念でなりませんでした。

 前々から素敵なプレイヤーだとは思っていましたが、今回目にした清水さんは、一つステージアップしたような魅力にあふれていました。

 目を左に転じると、ピアノの左奥にはサックスやホルンの奏者が配置されています。そこに在川詩織さんの姿を見つけたのですが、え?なんか痩せちゃった? いつも健康的な笑顔を絶やさない在川さんですが、痩せちゃった感じがするんです。まさかコロナの影響ではないでしょうから、激務が響いてるのかな、ちょっと心配になりました。ただ、ステージ上ではライティングの影響で印象が随分変わりますから、私の思い過ごしなのかもしれません。

 ところで、昨年7月、大阪で行われた「たそがれコンサート」に出演した舞鶴音楽隊の記事を書きました。

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 その中で、「ルパン三世」風のオーボエ奏者の方のことにも言及したのですが、お名前がよく聞き取れませんでした。「向井2曹」と聞こえたような気がします(後日、若井祐志さんであることが判明しました)。

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 その「ルパン三世」が今回のステージ上におられたので、驚きました。

 ひょっとして、舞鶴から支援に? でも、終演後、隊員の方に「今回、他の音楽隊からの支援はありましたか?」とお尋ねしたところ「いえ、今回はありません」とのことでした。つまり、東京音楽隊に異動になったということです。

 なんだか、今後の東京音楽隊のステージに、新たな魅力が加わった感じです。

 

 チューニングが終わり、吹浦さんの紹介により樋口好雄隊長が登場すると、拍手が巻き起こりますが、今回の会場は、東京音楽隊のファンで埋め尽くされているいつもの演奏会とは異なりますので、あの熱狂的な拍手ではなく、盛大ではあるけれど柔らかい印象がありました。

 

第1部

オリンピックファンファーレ(1964年東京オリンピック

 最初に演奏されたのは、1964年東京オリンピックのファンファーレです。

 私の席からは、ピアノの向こう側に並ぶ藤沼直樹さんらトランペットの皆さんによる立位での演奏でしたが、このファンファーレは本当に名作だと思います。どこかしら雅楽のような厳かな和の調べを感じさせながら、聴く者の気持ちを静かに高揚させてくれます。

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1 ギリシャ共和国国歌

 次に演奏されたのは、オリンピック発祥の地、ギリシャの国歌です。吹浦さんのお話では、本来、駐日特命全権大使コンスタンティン・カキュシス閣下の御臨席を賜る予定でしたが、新型コロナへの対応ということで、代理の方が出席されているとのことでした。残念なことではありますが、特命全権大使が万一感染でもすれば一大事ですから、やむを得ないことだと思います。

 各国国歌については、世界中の全ての国歌を動画化するという壮大な試みにチャレンジしておられる「World National Anthems JP」さんの動画を埋め込ませていただきます。

  昨年、遠洋練習航海に参加された三宅由佳莉さんが各寄港地で披露された各国国歌の動画で欠けている部分を補うために何度か使用させて頂きましたが、見事なチャンネルですので、是非お訪ねになってみてください。

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  なお、この演奏会では、前回ご紹介したソプラノ歌手の新藤昌子さんの他に、オペラの舞台で活躍されているメゾソプラノの北澤幸さん

utabonbon.com

やはりオペラで活躍されているテノールの新津耕平さん

tenoreniitsu.wixsite.com

そして、新進気鋭のバリトン・清水一成さん(公式ページが見当たりませんでしたので、清水さんを応援されている方のブログ記事をリンクします)

www.ongakuno-hanataba.com

 が国歌の歌唱に参加されました。

 更に、友情出演されたのが、日本を代表するバリトンとして声楽界の大御所とも言える河野克典さんです。

www.k-kono.com

 錚々たる顔ぶれですが、国歌ごとに皆さんで歌われたり、ソロで歌われたりと構成のバリエーションが豊富だったものですから、各国歌ごとにどなたが歌唱に参加されたかは逐一記憶に残ってはいません。特に印象に残っている場面だけ、コメントをさせていただくことにします。

 みなさん、あれ?と思われてますよね。中川麻梨子さんは?

 もちろん、中川さんも歌唱に参加されましたし、独唱もされましたよ。それは後ほど報告させていただきます。

 

2 フランス共和国国歌

 各国の国旗や国歌ごとに、吹浦さんの興味深い解説があったのですが、耄碌した頭には全てをとどめておく事などとてもできませんでした。フランス国旗についても大変興味深いお話があった気がするのですが…ごめんなさい( T_T)\(^-^ )

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3 イギリス(連合王国)国歌

 女王陛下の長寿を願い、神よ女王陛下を護り給えと歌われる連合王国の国歌は、我が国の君が代に似ているとのお話がありましたが、代が替わりリチャード皇太子が即位された暁には、国歌のタイトルが「God save the King」になるとのこと。それはそうだよなと思いつつ、英国は「女王陛下」が君臨する王国というイメージがあまりにも強く根付いているため、ちょっと意外な感覚でした。

 また、国旗であるユニオンジャックは、英国が「連合王国」になる際、イングランドスコットランドウェールズ北アイルランドのそれぞれの国旗を重ね合わせた図柄になっているのですが、よく見ると上下左右が対称になっていません。そのため、外国で逆さまに掲揚されるような事例が結構あるとのことでした。国連本部でさえ、そのような「事故」があったそうです。ですから、国際的なイベントの際には吹浦さんのような国旗の専門家の知見が必要なんだと思います。

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4 パレスチナ国歌

 大変複雑な背景を持ち、長らくイスラエルとの抗争が続いているパレスチナですが、1988年に独立を宣言して以来、国家承認をする国が次第に増加し、現在では日米欧豪などを除く多くの国に承認され、国連においても「オブザーバー国」として扱うようになっています。我が国が未だ承認していないパレスチナの国歌をエントリーしているところに、この演奏会の高い志が感じられました。何人も、自らの故郷を愛し、誇りに思うのは当然のことであり、その思いの象徴が国旗であり国歌なのですから。

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5 スウェーデン王国国歌

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6 オランダ王国国歌

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7 パナマ共和国国歌

 吹浦さんの解説の中で、「事前に打ち合わせはしてないんですが、ここでちょっと東京音楽隊の皆さんに質問してみたいと思います。この中で、パナマ運河を通峡した経験のある方はいらっしゃいますか?」と問うと、半数くらいが手をあげ、会場からは響めきが起きました。吹浦さんが続けます「たくさんいらっしゃいますね、海上自衛隊では毎年遠洋練習航海が行われていて、半年くらい世界中の国々を訪問するんですが、音楽隊の皆さんも参加されているんです」、いいPRになりました。

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8 中華人民共和国国歌

 プログラムではベトナムの順番なのですが、どうした理由か演奏会では中国が先に演奏されました。この曲は、新藤昌子さんの独唱だったと記憶します。もちろん歌詞をご覧になることなく、諳んじてらっしゃる中国語で見事に歌い上げられました。

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9 大韓民国国歌

 お隣の国なのですが、意外にも、私は韓国の国歌を聴くのは今回が初めてのような気がしました。

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10 ベトナム社会主義共和国国歌

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11 ドイツ連邦共和国国歌

 吹浦さんからは、第二次世界大戦後、東西に分割されていたドイツが冷戦終結に伴い再び一つの国家に統合された経緯などの解説がありました。

 この曲については、我が国におけるドイツ歌曲の第一人者である河野克典さんの独唱で歌われました。素晴らしいバリトンの響きです。こんな風に歌えたら、さぞ気持ちいいだろうなぁ

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 ここで吹浦さんから会場に向けた質問がありました。「我が国内で最も多く掲揚されている国旗は、どの国の国旗だと思いますか?」唐突な質問に、会場はちょっとざわざわしました。

 「実は日の丸ではなく、イタリア国旗なんです」意外な言葉に会場は響めきました。

 そして、その理由が解説されたのですが、一言で言えば我が国にはイタリアンレストランがたくさんあって、必ずイタリア国旗が掲揚されているからというわけです。そのあたりまでは、クイズなどでも目にすることがあるかもしれませんが、吹浦さんの解説は続きます。

 第二次世界大戦で、我が国は日独伊枢軸同盟を結び連合国と戦いましたが、1941年、その一角であるイタリアは連合国との間で休戦協定を結んでしまいました。日独両国からすれば「裏切り行為」ですが、当時のイタリアの国内事情ではやむを得なかったのでしょう。

 当時、イタリア海軍は極東艦隊を編成して、中国を拠点に活躍していましたので、同盟国である我が国の港湾を訪問することももちろんありました。イタリアが休戦に入った時にも、イタリア海軍の艦艇2隻が神戸港を親善訪問していたそうです。突然同盟関係が消滅してしまったため、去就に迷った艦隊は本国に指示を求めますが、「独自の判断で行動せよ」と突き放されてしまい、熟慮の末、両艦とも乗員を退去させたうえで艦底弁を開き自沈措置が取られました。乗員は、それぞれ自分たちの生きる道を探ったのだと思いますが、吹浦さんによると一部は帝国海軍に受け入れられそこで働いていたようです。海上自衛隊も同じですが、艦艇には専属のコックが配属されており、艦内でその腕を振るっています。そして、乗艦を失ったイタリア海軍のコックたちが、日本人にイタリアの食文化を伝えようと、イタリアンレストランを始めたのだそうです。これが我が国にイタリアンが浸透していくきっかけだったのでしょう。大変興味深いお話でした。

 そのイタリア国歌が第1部の締めとなりました。

12 イタリア共和国国歌

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 吹浦さんの解説は、本当に興味深く面白い内容ばかりだったのですが、ほんのわずかしか記憶にとどめて置くことができませんでした。お伝えできないことばかりで申し訳ありません。

 第2部でもまた、色々なエピソードがありましたが、長くなりますので、ここで一区切りつけさせていただきます。

三宅由佳莉セレクション

 

 なんと言いますか、コロナ旋風が吹き荒れていますね。

 皆さん、「元気ですかー?」

 未知のウイルスですから、用心しなければならないのは確かですが、心配し過ぎたり、怯えたりしていませんか? 怯えは心の隙を作りますし、おそらくですけど免疫力を低下させます。心配しすぎると自己治癒力が失われ、却って感染しやすくなってしまうのではないかと、私は思っています。

 ですから、自分ができる予防対策を行ったら、あとは普段通りに生活すればいいんじゃないでしょうか。笑ったり、感動したり、そう言うポジティブな心の作用が、体の耐性を強化してくれるに違いありません。根拠はありませんが、私の中の「寅さん」がそう言っています。「コロナが怖くて日本人やってられるか」

 あ、勘違いしないでくださいね、手強い相手ですから油断してはいけません。でも、やれることをやったら、あとは自分の心を強く持つしかないと申し上げています。決して「奴」を過小評価してはいけません。

 そんなことを考えている私にとって、嬉しい動画がアップされました。

 皆さんお馴染みの「h1way2012」さんです。

 コロナ騒動の煽りで自宅で無聊を囲っている人が多いであろうことを見越して、ご自身がこれまで撮影してこられた、三宅由佳莉さんの動画から「セレクション」として2本編集して下さいました。とても嬉しい配慮ですね。

 ひょっとしたらもっと増えるのかも知れませんが、とりあえず、今日現在アップされている2本を下に埋め込みさせていただきました。

 心配するより、三宅さんのステージ姿を見て元気をもらいましょう(╹◡╹)

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 h1way2012さん、ありがとうございます!