あれこれdiary

海自OBによる偏見御免徒然あれこれdiary

心遣い

 コロナ感染が急激に広がっているとの認識のもと、首都圏の一都三県に対し二度目の緊急事態宣言が出されたのを受け、私の職場でも昨日から2/3体制での勤務が始まりました。もっとも、昨春の緊急事態宣言以来、テレワークを取り入れた3/4体制が確立していましたので、大きな混乱もなく移行できているように思います。

 この一年で、私たちの日常は本当に劇的に変化しました。

 コロナは重大な脅威ではありますが、それへの対応が、本来私たちの社会が内包していた変革への萌芽を具体化するという難事業に、強力に棹さすプラス効果も一面ではあったと思います。

 他方、コロナへの対応が、少なくとも短期的にはマイナスの効果しかもたらさない事業だってたくさんあるでしょう。

 例えば、音楽隊の演奏会もその一つです。もちろん、演奏会が思うように開催できないことで、動画配信など、新たな活動様式が模索されている面も確かにありますが、やはり聴衆を前にライブ演奏を行うことの意味は計り知れません。ですから、昨秋あたりから、入場者数を半減させてでも、レギュラーコンサートがようやく開催できるようになってきたことは、私たちファンにとって希望の光のようでしたし、おそらく音楽隊の皆様にとっても同じだったのではないでしょうか。

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 そして来週の金曜日(1月15日)、1年4ヶ月ぶりとなる東京音楽隊のレギュラーコンサート「第61回定例演奏会」が昭和女子大人見記念講堂で開催されること、諸般の事情から、演奏曲目を大幅に変更し、募集対象者にフォーカスした演奏会になること、私自身、当選ハガキを頂いたことなどは既に報告したとおりです。

 ただ、首都圏への再度の緊急事態宣言が取り沙汰されるようになった時点で、開催は難しいのではないかとは思っていました。今回の演奏会は、我がブログチームの皆さんんの多くが当選されていたのですが、やはり開催を危ぶむ懸念の声が多かったですし、遠方の方々は、そもそも首都圏入りすること自体に職場や家族から制限がかかるのではないかという点も心配されていました。

 そして昨日、案の定、東京音楽隊のホームページに演奏会が「中止」となったことが告知されました。

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 当然でしょう。「国」が首都圏に「緊急事態」を宣言しているのです。「国」の一部である防衛省自衛隊が首都圏で演奏会を開催できる筈がありません。誰が考えても已むを得ない判断です。でも、これには続きがあるんです。

 昨夜、私は職場で遅くまで残業していました。新たな勤務体制の発動により、当初は予定になかった連休明けの12日がテレワークとなったため、その仕込み作業が必要だったからです。その時、卓上に置いてある私のスマホに着信がありました。03から始まる知らない電話番号でしたが、取り敢えず出てみました。

 すると、「海上自衛隊東京音楽隊音楽科長の本田2尉ですが、○○さん(私の本名)ですか?」…最初、「海上自衛隊」と聞いた際には、あ、横須賀教育隊司令かな、と思いました。と言うのも、3.11当時に統合幕僚監部に勤務していた主要メンバーの同窓会が2月に予定されており、その海自OBへの連絡担当が横須賀教育隊司令になっているからです。緊急事態宣言で「中止」になったのかな?と思いました。でも「東京音楽隊」「本田2尉」続いたので、驚きました。本田航司2尉のことは、これまでの記事でも何度か書かせて頂いていますが、一昨年5月のランチタイムコンサートでタクトを振られていた、あの本田2尉です。

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 また、同じ月に私が水交会の研修で初めて東京音楽隊を訪問した際にアテンドして下さったのも本田2尉でした。

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 そんな、私にとっては印象深い本田2尉ですが、個人的な繋がりがあるわけでもなく、何故電話が? と思っていましたら、「今月15日に予定されている当隊の定例演奏会にご応募いただき、当選のハガキを送らせて頂いたのですが、ご存知のとおり、首都圏に緊急事態宣言が出されましたので、大変残念ではありますが開催を中止せざるを得ない状況となりました。せっかくご応募頂きましたのに申し訳ありません。なお、送らせて頂いたハガキにつきましては、お手数ですが、ご自身で破棄して下さるようお願いいたします。ご迷惑をおかけして申し訳ありません。」

 正直驚きました。

 当選ハガキを送った全員に、一人一人電話で「中止」となったことを連絡しているのです。ほとんでの方は、演奏会が開催されるのか気が気ではなかっでしょうから、東京音楽隊のホームページをチェックして確認している筈です。現に、昨日仕事中にも、ブログチームの皆さんから「中止」になった旨の報告がありました。

 とは言え、ホームページをチェックしない方、できない方もおられるでしょう。また、入場者数を半減しているとは言え、当選者は700〜800人にもなるでしょうから、今から全員にハガキで通知するには十分な時間があるとは言えません。そこで、「全員に電話連絡する」ということになったのでしょう。

 でも、大きな基地に所在する部隊なら、基地に引かれている何本もの電話回線を使用することができますが、東京音楽隊は独立部隊であるため、電話回線は1本しかない筈です。とても1日や2日では終わらないでしょう。現に、私のところには昨夜電話がありましたが、今日電話が来たという方もいらっしゃいます。この連休中、在隊員の方々が順次に当番となって電話されているんだと思います。

 そうまでして、確実に「中止」になったことを伝えようとされている心遣いに、ちょっと感動しました。ですから、「お忙しいのにわざわざの電話連絡をありがとうございました」と心からの感謝を申し上げました。

 さて、緊急事態宣言が出されたこで、首都圏への進出が出来なくなった方々からも色々な報告がありました。皆さん、それぞれ東京音楽隊に電話連絡をされ、ご自分が行けなくなったことを報告された際には、隊員の皆さんへの応援のメッセージを伝えられたそうですが、電話口の隊員の皆さんからは「本当に多くの人の前で演奏したい」という強い気持ちや、応援のメッセージに対する感動のようなものが感じられたとのことでした。

 ファンの側のこうした心遣いも、隊員の皆さんに届いていることがとても嬉しく感じられました。

 音楽隊の演奏会が開催できないことで、寂しい思いをしているのは私たちファンだけじゃない、音楽隊の皆さんは、きっとそれ以上に寂しい思いをしているに違いありません。だからこそ、ともにこの苦難の時を乗り越え、かつての「日常」を取り戻しましょう。