音楽隊のコンサート報告記事を書くのは本当に久しぶりです。しかも、今回は、いろいろな意味で感慨深く、また、これまでとは異なる観点から感動することの多い演奏会となりました。
折悪しく、演奏会の日程と私のパソコンの換装作業が重なってしまったため、なかなか記事書きに着手できなかったのですが、ようやく、曲がりなりにも環境が整いましたので、腰を据えて書いてみたいと思います。
ところで、横音の演奏会が行われた翌日、三宅由佳莉さんのインスタグラムに、なんと大量6件もの新たな写真がアップされました。
https://www.instagram.com/ganbaru.ashitae/
全て制服姿ですが、笑顔の中にもキリッとした凛々しさを感じさせ、また新たな魅力に溢れた雰囲気を湛えています。演奏会の翌日に更新されたことも含め、何かのメッセージなのかも知れませんね。この件に関しては、また改めて記事を書ければと思います。
さて、演奏会です。
すでに当日、会場である横須賀芸術劇場へ早朝から進出したこと、また会場入りしてウェルカムコンサートを楽しんだことまでは速報で報告しました。
今回は、本当に長い期間を経ての久しぶりの演奏会でしたし、ファン仲間が集まるのも当然ながら久しぶりです。皆さん再会を喜び合いながらも、演奏会への逸る心を抑えきれない様子でした。あ、私もですけど(╹◡╹)
また今回は、遠方から遥々駆けつけて三宅由佳莉さんの歌声を初めて聴かれるという方々もブログチームに合流して下さいました。そんな皆さんにとって、今回の演奏会は忘れ難い思い出になったに違いありません。詳細は後ほど書きますが、素晴らしい内容でした。
1500、開場時刻となりましたので、入場が始まったのですが、来場者が密になりすぎないよう、待ち行列の先頭から10人づつ順次に案内されました。もちろん、入り口では一人一人に対する検温が実施されています。
入場して、自分が指定された席に行きますと、前後左右の席が空席になるよう、格子状の座席指定となっていました。コロナ禍が始まって以来、これまで開催されてきた他の演奏会などでは、ステージと客席を隔てる大きなシールドが設けられていたりする会場設定も見られましたが、今回のステージは、通常通りでした。ただ、最前列から3列目くらいまでは空席となっていたようです。
また、すでに報告した通りですが、募集広報の有力なツールでもある演奏会がずっと開催されていませんでしたので、久々の機会である今回の演奏会では、募集対象者である学生さん達への座席割り当てが普段よりも多かったようです。一番前のセクションはほぼ学生さん用となっていました。昨今の我が国周辺の国際情勢の緊迫化にもかかわらず、大変深刻な募集難に直面している海上自衛隊としては、当然過ぎる措置だと思います。
ところで、昨年の館山や今年初めの木更津では、本公演に先立ちウェルカムコンサートが実施されましたが、コロナ禍の今、どうなんだろうと思っていましたら、スペリアFUJIさんが、横監広報の方に確認した情報として、1530からウェルカムコンサートが行われること、そしてウェルカムコンサートだけは撮影OKであることを伝えてくれました。とは言え、スマホで撮影できるような距離ではありませんので、一応トライはするものの、真っ当な撮影機材をお持ちの方々の投稿に期待することにしました。
今回のウェルカムは、おそらくコロナ対策なのでしょう、観客席を縫っての入場という形を取らず、ステージ袖からの登場となりましたが、ディキシーバンドの中央にはタンバリンを手にした三宅由佳莉さんが、その向かって右側には赤㟢尚子さんの元気な姿がありました。
演奏曲目は、①聖者の行進、②切手のないおくりもの、③ありがとう、の3曲でしたが、聖者の行進の演奏が終わったところで、三宅由佳莉さんは腰をかがめてタンバリンを床に置きました。
そして、伴奏なしで2曲目の「切手のないおくりもの」を歌いはじめたのですが、やがて少しづつ伴奏が乗ってくるというスタイルでした。驚いたのは、ただ歌うだけではなく、全ての歌詞を手話で表現されたことです。と、もっともらしく書いていますが、実はダメ元で動画撮影にチャレンジしていた私は、三宅さんの手話には気づいていませんでした。スペリアFUJIさんのコメントにそう書かれているのを読んで、「え?」と思い、自分が撮影した動画を見直して「本当だ!」と、その時に驚いたのでした。
これまでも、時々手話を交えながら歌われている姿を目にすることはありましたが、こんなにしっかりと手話で同時通訳しながらの歌唱は初めて拝見しました。人知れずいろいろな努力を続けられていることがよく分かります。
更には、スペリアFUJIさんも手話ができることを初めて知り、それにも驚きましたし、感銘を覚えました。
ステージ上での三宅さんの様子を「海上自衛隊横須賀地方総監部Gallery」さんがアップして下さっていますので、ここに埋めさせていただきます。やっぱり、スマホとは大違いですね(╹◡╹)
今回のウェルカムコンサートは、途中の口上もありませんでしたから、黙ってステージ袖から登場し、無言で演奏をして退場するというものでしたが、これもコロナ対策なのでしょう。それだけに、唯一の「声」だった三宅由佳莉さんの歌唱が、横須賀音楽隊からの「ウェルカム!」の気持ちを伝えるメッセージともなりました。
うわ、ウェルカムコンサートまでで2500文字も使ってしまいました。先が思いやられますが、どうかお付き合い下さい(╹◡╹)
ウェルカムコンサートは10分余りで終了しましたが、久々の生演奏、そして三宅由佳莉さんの生の歌声を聴いたばかりの会場内には、何とも言えない興奮が静かに満ち渡り、本公演に対する期待が弥が上にも高まります。
突然、大聖堂の鐘楼から鳴り響くような心地よい鐘の音が流れ初めたのは、開演5分前の1555でした。ブザーではなく、鐘の音で開演の近いことを知らせる演出は、この演奏会を本当に心待ちにしていた私たちの心に響きました。
そして1600、開演時刻です。再び鐘の音が響き渡るなか、会場の照明が絞られ、そこだけ浮き上がったように見えるステージの両袖、そして左奥の3カ所から隊員の皆さんの入場が始まり、会場からは拍手が巻き起こりましたが、何しろ定員の半数しか入場していませんので、どうしても「喝采」の厚みに欠ける感は否めません。
入場された隊員の皆さんを見渡して「あれ?」と驚くこと三度。まず、ステージ右端にチューバの芝陽子さんがおられるのを見て「あれ?」
そして、ステージ中央のクラリネット席に大石あやさんの姿を発見して「あれ?」、最後に左奥のパーカッションエリアに中島佳奈恵さんが立っておられるのに気づいて「あれ?」
皆さん、この夏の定期異動で横須賀音楽隊勤務になっていたんですね。この御三方はブログでもよく取り上げさせていただいているので一目で分かりましたが、何しろちょっと遠目でしたので、他にもおられるであろう異動組は確認できませんでした。
今回の演奏会の司会進行は、隊員のMCではなく、フリーアナウンサーの井上英里香さんがその役を担われました。井上さんは、長野県出身で、四国放送のアナウンサーとして活躍されたあと、フリーに転向されました。この演奏会のことをツイートされていますのでここに埋め込ませていただきます。
📍よこすか芸術劇場
— 井上英里香@アナウンサー (@inoeri1030) 2020年10月3日
今日はこちらで
🎼海上自衛隊横須賀音楽隊♬
ふれあいコンサート2020の司会を
務めさせていただきます🥰🎤#リハーサル中#海上自衛隊横須賀音楽隊 pic.twitter.com/aTyvOLy5mN
横音の演奏会経験の少ない私には何とも言えませんが、「ふれあいコンサート」では、いつもこうしたアナウンサーの方にお願いしているのかも知れません。あるいはこれもコロナ対策の一環なのかも。だって、演奏会を通じて、三宅由佳莉さんの歌唱以外、隊員の皆さんの声は一言も聞くことはありませんでした。その代わり、全員マスクなしの素顔で演奏してくださったのは、可能な限り通常のステージに近い演奏会を目指してくださったからなのではないかと思います。私たちの気づかないところで、様々な配慮が廻らされていたに違いありません。
第1部
コンサートの第1部は「メモリアルを迎えた作曲家を中心に・・・」と題したプログラムでした。指揮は、横音副長の森田信行・2等海尉です。今「副長」と書きましたが、パンフレット上は「副隊長」となっています。海上自衛隊に「副隊長」という呼称はなかったのですが、昨今進められている統合用語の整理のなかで、「副隊長」に統一されたのかも知れません。例えそうだとしても、長年聞き慣れた「副長」の方が、私にはしっくりきます。ええ、古い奴なんです。
1曲目、行進曲「劔の光」
この曲は、横須賀音楽隊の新編30周年の折に、作曲家の酒井格さんに委嘱して作られた曲です。今年が50歳の節目となる酒井さんのメモリアルという位置付けで演奏されました。大変勇壮で、躍動感に溢れるこの曲、久々の演奏会の口火を切るコンサートマーチに相応しい名曲だと思います。
曲が始まった瞬間、響き渡る力強い音に心を掴まれました。何しろ半年以上も聴くことのできなかった生演奏です。体中の細胞が蘇るような、そんな感覚です。
h1way2012さんの動画でお楽しみ下さい。
2曲目、久石譲作品集
このメドレイは、事前に予定曲として公表されていましたし、久石譲さんの作品は私も大好きなものですから、今回とても楽しみにしていた曲目の一つです。久石さんの作品は、どれも素晴らしいのですが、個人的には「Summer」が一番気に入っているので、事前報告でも、この曲が演奏されたらいいな、と書きました。角田鈴音さんのピアノソロを勝手にイメージしていたんですけど(^^)
会場入りしてパンフレットを拝見しましたら、このメドレイの最初に「Summer」と書いてあったので、嬉しくて仕方ありませんでした。やはりこの曲は人気なんだなぁとも思いました。演奏はピアノソロではなく、バンドによる吹奏楽でしたが、この名曲の深い魅力が重厚な演奏で余すところなく引き出されていました。
メドレイ構成は、Summer 〜 Oriental Wind 〜 HANA-BI 〜 タムドクのテーマ となっており、久石さんの世界観を限られた時間のなかで最大限に描き切ることができたのではないかと思います。
YouTubeでそれぞれの動画を探しては聴き比べていたのですが、偶然にも、全く同じ構成で演奏されている動画を発見しましたので貼っておきます。演奏会の雰囲気をお楽しみ下さい。
3曲目、夢のあとに
この曲は、今年の1月18日に木更津で行われた「海の音楽まつり」でも演奏され、三宅由佳莉さんが見事なソプラノを披露されましたので、パンフレットを拝見した瞬間から、期待感が半端ではありませんでした。だって、本当に素晴らしかったんです。
木更津のコンサート報告のなかで、この曲について簡単に解説しましたので、こちらにも引用して紹介します。
19世紀から20世紀初頭にかけて活躍したフランス人作曲家、ガブリエル・フォーレの作品です。もともと、イタリアのトスカーナ地方に古くから伝わる詩がフランス語に翻訳され、これに曲をつけたものです。
その詩というのは、夢の中で巡り合った美しい女性との甘美で幻想的な世界と、夢から覚め、独り現実世界に取り残された哀しみに悶え苦しむ魂の叫びが描かれています。同じようなテーマは、楚の懐王の故事として漢詩でもよく扱われており、世の東西を問わず、儚きものへの憧憬は芸術を生み出すモチーフの一つなのでしょう。
MCの井上英里香さんが曲紹介をされている間に、ステージでは、クラシック演奏に向けた大きな構成変更が行われ、横須賀音楽隊の機動力を感じさせます。曲紹介に続き「3等海曹・三宅由佳莉の歌でお送りします」とアナウンスされると、予想していたこととは言え、会場にはソワソワとした雰囲気が広がって行きます。
そして、左袖から三宅由佳莉さんが登場するのですが、その堂々たる風格にまず息を呑みました。昨年暮れの館山でのステージでも、以前と違って大歌手のような風情が感じられたのですが、今や大歌手そのものです。公演が行われない間も、歌唱力と共に内面を鍛え続けて来られたことが、その立ち居振る舞いからよく伝わってきます。
美しいソプラノの歌唱ですが、三宅さんご自身が歌われる動画は残念ながら公開されていません。木更津レポートの時と同じ、高橋薫子さんの動画を貼らせていただきます。色々と聴き比べて見て、三宅さんの歌唱の雰囲気に近いと私が感じた動画だからです。とても素敵な曲です。
それにしても、ウェルカムコンサートでの「切手のないおくりもの」は、所謂可愛いアニメ声で楽しく軽やかに歌われた三宅由佳莉さんですが、この曲では、ご自身の本来の姿である本格的なソプラノ歌手として、圧巻の歌唱力で私たちを薙ぎ倒します。いや言葉が過ぎたかも知れませんが、本当に薙ぎ倒されたような衝撃を受けました。今回初めて三宅由佳莉さんの生歌をお聴きになった方は、ウェルカムコンサートとのあまりのギャップに驚かれたことでしょう。そうでなくても、歌が始まった途端に、自分の中にある三宅さんの歌唱のイメージと実際の歌声の違いに毎回驚かされるのですから。
三宅由佳莉さんの生歌を、幸運なことに私はこれまで何度も拝聴する機会があり、その度に大きな驚きと深い感動を覚えてきたのですが、今回、この歌を聴いた私はちょっといつもとは違っていました。
久しぶりに聴くからなのでしょうか、それとも、この貴重な機会を、子供のように指折り数えながら楽しみにしていたからでしょうか。何度も目頭が熱くなるのを抑えることができませんでした。
言わずと知れた楽聖ベートーヴェンの名作の一つですし、様々な場面でお聴きになる機会も多いと思います。大変美しい曲ですが、井上さんの曲紹介によると、ベートーヴェン自身が命名したタイトルは味も素っ気もないもので、どこにも「月」など出てこないそうなのですが、後世の演奏家たちが、その曲調・曲風から感じ取ったものが「月光」という美称に結実したということのようです。
心の奥深くに重々しく存在しているのに、表現吐露して伝える術が見つからない狂おしい想いを抱きながら見上げる月、そこから注がれる儚くも優しさに満ちた光を受け止めながら、自らの境遇を嘆きつつも、そこに微かな希望を見出し、顔を上げて自らを鼓舞していく、そんな物語が語られているように感じられます。
ここでもまた、ステージは大きく変換され、隊員の皆さんによってグランドピアノが正面中央に運ばれました。
隊長とともにステージに登場したのは、もちろん横須賀音楽隊のピアニスト、角田鈴音さんです。昨年入隊されたばかりで、音楽隊でのキャリアはまだ1年あまりですが、今年2月の長岡公園で角田さんのこの曲をお聴きになったチーム・スペリアによると、緊張はされていたけれど、新人とは思えない見事な演奏だったとのことでした。
今回もやはり緊張されているようです(当たり前ですけど)が、スペリアによると、前回とは全然違い、安心して見ていられるとのことでした。やはり、日々成長されているということですね。もちろん、素晴らしい演奏でした。
動画で、この美しい曲をお楽しみ下さい。
さて、先ほど三宅由佳莉さんの歌唱をお聴きしながら何度も目頭が熱くなったと書きましたが、その続きがあるんです。角田さんがこの曲の第一楽章を演奏され始めてすぐに、その演奏に引き込まれ、意識が研ぎ澄まされて行きました。そして、思いもよらないことに、私の両の眼から涙がとめどなく溢れてきたのです。演奏会で深い感動は何度も味わいましたが、涙が溢れたのは初めてのことでしたので、自分でも驚きました。でも、その時に私の心を過った漣のような感覚から、先ほど三宅由佳莉さんの歌を聴きながら目頭が熱くなった理由も分かったのです。
もちろん、歌唱や演奏が素晴らしいからというのは当然なのですが、この素晴らしい歌唱や演奏を多くの聴衆の前で披露できるようになるまで、音楽隊の皆さんがどんな思いで自らを律し、先の見えない中で努力を積み重ねてこられたのだろうと思うと、曲への感動とはまた別の、まるで我が子の成長を見守る親の心情にも似た感動がこみ上げてきたのです。そんな風に感じられる自分がいたことが嬉しくもありました。
こうして、第一部が終わり、15分間の休憩に入ります。
通常であれば、ステージ上での作業を終えられた赤嵜尚子さんにお声かけして、短時間ながらご挨拶するのですが、今回はどうなんでしょう。コロナ対策のために万全を期しておられる音楽隊との接し方は大変難しいですよね。迷いつつステージに近づきはしましたが、前方の列を空席にしてソーシャルディスタンスを保とうとされている現実を目の当たりにして、残念だけど、やはり今回はやめておこうとなりました。またいつか、そんな交流ができる時が必ずやって来るはずです。それまでは、赤嵜さんを始めとする音楽隊の皆さん、みんな、目に見えないところからでも応援し続けていることを忘れないで下さいね。
第2部
第2部は「クールジャパン〜海外から見た日本の魅力〜」と題し、横須賀音楽隊長、長岡英幸・1等海尉の指揮で繰り広げられました。クールジャパンは、政府の肝煎りで展開されているソフト戦略ですが、その旗頭はなんと言っても質の高いアニメでしょう。このブログでも、何度かアニメにまつわる話題を取り上げてきましたが、私自身も子供の頃から今に至るまで、様々なアニメから多くの影響を受けてきましたし、勇気や博愛、献身といった、普遍的な価値観であるとか、大自然とともに歩んでいくのだという世界観などを、知らず知らずのうちに学んできたような気がします。身になっているかは別としてですが(≧∀≦)
そして、日本アニメの世界観というものに対する共感が、想像以上の規模で世界に広がっていることは、自慢とかではなく、ごく自然に嬉しいし、古来より連綿と伝えられてきた日本的な美風が、多くの困難や争いの絶えない世界に少しづつでも良い影響を与えることができたなら、それに勝る喜びはないと思います。
5曲目、「鬼滅の刃」オープニングテーマ 紅蓮華
いつも申し上げているとおり、私はテレビを見ません。そんな私でも、「鬼滅の刃」が世界中を席巻していることがわかるほど、この作品の存在感は大きいということだと思います。そんな作品のオープニングテーマ「紅蓮華」を第二部の冒頭に持って来たのは、休憩を挟んだ後、改めて勢いをつけようという意図でしょう。
事前報告では、ひょっとして三宅さんが歌われるのかな?と書きましたが、ここは吹奏楽オンリーでの演奏となりました。実のところ、三宅さんがこの歌を歌うイメージが全然湧いてこなくて、歌われるとしたらどう料理するのか見ものだなとは思っていました。どんな曲でも自分なりのスタイルで完成させてしまう方ですから。今回はそんな驚きはありませんでしたが、後ほど続きがあります。
さて、東京音楽隊はもちろんそうですが、横須賀音楽隊も、どんなジャンルの楽曲でも、何の苦もないかのように演奏してしまいます。
昨年9月、人見記念講堂で開催された東京音楽隊の第60回定例演奏会にゲスト出演された、海自音楽隊出身の気鋭のトランペット奏者・類家新平さんが仰っていました。聴いている皆さんには分からないかもしれないが、ジャズとクラシックでは各楽器の演奏の仕方がまるで違う。それを、同じステージで事もなげにやってのけている昔の仲間を見て心から誇らしいし、また尊敬している、と。
どんなジャンルでも吹き分けることができるってただ事じゃないんですね。改めて音楽隊の皆さんの凄さを思い起こしました。
6曲目、映画「魔女の宅急便」より 海の見える街
誰もが知るジブリの名作の一つ「魔女の宅急便」ですね。見習い魔女のキキが、掟に従い一人暮らしを始め、箒に跨って空を飛べることを活かした「魔女の宅急便」で生計を立てつつ、人として、魔女として成長するという、どう考えても荒唐無稽な設定なのですが、魔女が一般大衆の中に普通に溶け込んで生活しているという世界が、何の説明もなくても自然に受け入れられます。少なからぬジブリ作品がそのような面を持っていますよね。何も説明はないけれど、私たちが心の中で共有している憧れや恐れや喜びといったものに直接語りかけてくるので、全く違和感なくその世界観を理解し、共感できるんだと思います。しかも心地よく。
今回演奏されたのは、「魔女の宅急便」のボサノババージョン。これまでも、野外コンサートやオープンスペースでの演奏会で各音楽隊が演奏して来ましたので、投稿されている動画も数多く、大変馴染みのあるアレンジではないでしょうか。オリジナルよりもこちらの方がスタンダードに思えている方もいらっしゃるかも知れません。
横須賀音楽隊の演奏を動画でお楽しみ下さい。
7曲目、「君の名は」メドレー
「君の名は」は、2016年に公開され、大変な社会現象を引き起こした新海誠監督の名作です。戦後の日本で同じタイトルのラジオドラマが映画化もされ、やはり空前の社会現象を引き起こしましたが、内容こそ違え、「君の名は」というテーマが、ハラハラするような物語の鍵となっているところは通じています。
この作品が公開された当時、正直あまり関心はありませんでした。まだ時々テレビを見ていた頃でしたので、本当に偶然なのですが、テレビで放映されたのを視聴して大変驚きました。時空系物語の宿命として、分かりづらいところや論理的に説明できないところがあるのは確かですが、この作品のモチーフは、そんな小理屈ではなく、誰にとっても、大切な人との出逢いというものは奇跡のようなものだということでしょう。私は素直に感動しました。そして、劇中に使用されたRADWIMPSの意欲的な楽曲が、この作品に更なる輝きを与えています。そんな楽曲のメドレーが、久々の演奏会に花を添えました。動画でお楽しみ下さい。
8曲目、Everything
ようやくここまで来ました。
この曲もご存知のない方はおられないでしょう。MISIAさんの大ヒット曲ですよね。クールジャパンをテーマとした第二部でこの曲が取り上げられた理由を、MCの井上英里香さんが説明して下さったのですが、正確には覚えていないんです。確か、クールジャパンのPRイベントが米国かどこかで行われ、その際、MISIAさんが披露されたのがこの「Everithing」だったということだったと思います。こういう話は大抵覚えているのですが、久しく演奏会に行っていなかったし、演奏会の記事を書いていなかったので勘所が鈍ったのかも知れません。でも、もっと大きな理由としては、果たしてあのMISIAさんの代表曲である「Everything」を三宅由佳莉さんはどう仕上げて来たんだろうということが気になっていたんだと思います。もちろん、三宅さんが歌うとはどこにも書いてありませんでしたが、単曲でプログラムに上がっているのですから、三宅由佳莉さんが歌われるに違いないと思っていました。
先ほど、「ようやくここまで来ました」と書いたのには理由があります。演奏会が終わった時点で、今回の報告記事のメインは「Everything」で決まりだと思っていたのですが、一体どう書けばいいのか途方に暮れてもいたんです。今回、報告記事が遅れに遅れている理由は、パソコンの換装が…とか言ってますけど、本当のところは、この曲にあったんだと思います。
これまでも、三宅由佳莉さんの全体像を掴み切れないと何度も何度も書いて来ました。見るたび聴くたび、同じ人物とはとても思えない一面(二面、三面も…)が繰り出されるので訳が分からなくなってしまうからです。
ですから、驚かされるのには慣れているはずなのですが、この曲を歌われる三宅由佳莉さんは、全く別格でした。
歌い出しで驚かされるのはいつものことではありますが、「この人誰なの?」と思ってしまうほど、「別の」三宅さんが歌っています。どうしてこんな声が出るの?と思わず周りの方々に聞いてしまいそうでした。
三宅由佳莉さんの歌声は、どちらかと言うとシャープでキレの良いイメージがありますよね。同時に、大変心地よい声質なものですから、多くの方から「癒される」と言う声を聞きます。
ところがです、「Everything」を歌われる三宅さんから繰り出されるのは、大変ボリュームのある、ずっしりとした声でした。全く予想外の仕上がりに、私の頭は混乱し「誰なのこの人?」と本気で思ってしまいました。
声だけではないんです。これまで聴いたことのないきめ細かい表現が随所に織り込まれ、ふくよかな声が時折鼻に抜けるような発声や、体全体をダイナミックに使ったダンサブルな身体表現と挨まって、全く初めて見る大物歌手の世界を作り上げているのです。驚いたなんてものではありません。コロナのおかげでマスクをしていたから良かったようなものの、マスクをしていなければ、ぽかんと口を開けた阿保面を晒すところでした。
たった半年、たった半年です。この方の進化が止まらないのはわかっていましたが、とてもフォローし切れないと思いました。そんな三宅さんを想像しながら、この曲を動画で楽しんでみてください。
昨年、遠洋練習航海に参加された三宅さんが、エクアドルのグアヤキルに入港した折、市内のマレコン2000という広場で「涙そうそう」を披露されました。その動画を現地の方がアップして下さったのですが、小節を回しながら歌われるのを聴いて驚いたのを思い出します。残念ながら、その動画はいつの間にか削除されてしまったのですが、あの時も、人知れず努力を続けておられるのがよく分かりました。そして、今回の「Everything」です。おそらくですけど、三宅さんは、それぞれのジャンルごとに異なるゴールを設けて、それぞれの「三宅由佳莉」を作り上げようとされているのではないでしょうか。そうでも考えないと、このような進化が理解できません。
以前、「三宅由佳莉さんって一体何人いるんだろう」と思ったことがある、と書きましたが、実はその通りだったということなんじゃないでしょうか。それぞれのジャンルで完成された「三宅由佳莉」になる、なんて壮大な取り組みでしょうか。そして、それはおそらく達成されるのに違いありません。
私は、とんでもない人をテーマにブログを書いて来たんだな、と、今更ながら途方に暮れています。
9曲目、「ファイナルファンタジー」より
バトルメドレー 〜 プレリュード 〜 メインテーマ
そして、第二部の最後は「FF」こと「ファイナルファンタジー」のメドレーです。日本が生んだ壮大なロールプレイングゲームとして、「ドラゴンクエスト」と並ぶ名作であるファイナルファンタジー。世界中で愛されていますから、その楽曲も様々なグループやオーケストラによりコンサート等で演奏されています。今回演奏された内容をなんとか再現しようと探し回ったのですが、あまりにも動画の数が多くて絞り込めませんでした。そこで、この曲に関しては全く別の観点から動画を選定しました。
クールジャパンが世界に浸透していることを如実に物語る一本です。会場がどこなのかは判然としなかったのですが、おそらく北欧だと思います。聴衆の皆さんも、ステージ上の演者も、現地の皆さんです。
そんな会場で、高らかに演奏されているのが「ファイナルファンタジー」の楽曲なのですから、嬉しい限りです。そして、演奏が終わった時のシーンが私には印象的でした。演奏が終わっても聴衆は静まり返っています。指揮者がまだ演奏の余韻を引っ張っていたからです。そして、指揮者が緊張の糸を解いて両手を下ろした瞬間、楽団も聴衆も解放され、大喝采が巻き起こります。このような、演奏の余韻に対する敬意の払い方というものを見習いたいな、と思ったからです。以上、二つの理由でこの動画を選定いたしました。よろしければご覧になってください。
アンコール(1) 瑠璃色の地球
こうして予定されていた演目が全て終了し、音楽隊長は左袖に退場されましたが、鳴り止まない拍手に応えて、再び登場、MCの井上さんも登場し、アンコールに応えてもう一曲演奏することが伝えられました。なんだろう、ワクワクします。
井上さんが退場されたのに、左袖のドアが開いたままです。それを見た瞬間、三宅さんが歌ってくれるに違いないと思いました。花道が開いているんですから。
案の定、三宅由佳莉さんが登場し、ステージ中央に立たれました。イントロが進行してから登場されるのかな、と思っていたので、意外に早い登場に驚きました。
そして演奏が始まりました。このイントロは・・・松田聖子さんの「瑠璃色の地球」です。これは昨年の音楽まつりで中川麻梨子さんも歌われましたね。でも、その前に、2年ほど前、小月で行われたスウェルフェスタでの佐世保音楽隊の演奏会にゲスト出演された三宅由佳莉さんがこの曲を歌われたと、モンスターさんが報告してくださったと記憶しています。私も好きな歌ですので、三宅由佳莉さんが歌われるのを一度聴いてみたいと強く思いました。それが、今回思いもかけず実現するとは、本当になんと言って良いやら、ただただ嬉しい限りです。
先ほど、「Everything」で疲れ切るほど驚かされた私は、今度も何かあるのかなと、ちょっとおっかなびっくりで歌声を待っていたのですが、今回は、しっとりとした歌い方ではありましたが、普段の三宅由佳莉さんだったと思います。思います、と言うのは、先ほどの衝撃が大きすぎて、多少のことがあっても気付かなかったのではないかと思うからです。
この素敵な歌を、アンコール曲として歌ってくださったことに本当に感謝したいと思います。
ウェルカムコンサートも含め、今回、三宅由佳莉さんは4曲歌ってくださった訳ですが、もうお気づきでしょう。全部、歌唱法が違うんです。 1つのステージで4人の三宅由佳莉さんを堪能させていただきました。なんとなく、歴史に残りそうな演奏会ではなかったかと思います。
アンコール(2) 宝島
三宅由佳莉さんが退場され、続いて隊長が再び左袖へ、それでも鳴り止まない大喝采に応えて隊長と井上さんが再び登場します。井上さんが「スペシャルゲストの登場です」とアナウンスされ、登場されたのは横須賀市立鴨居中学校吹奏楽部の皆さんでした。ほとんどが女子で、男子が1人だけという、ほぼガールズバンドでした。
ステージの最前列で立位での演奏となりましたが、やはり学生さんたちとのジョイント演奏は隊員の皆さんも楽しいのでしょうね、そんな雰囲気が伝わって来ました。
生徒さんたちは緊張もされていたと思いますが、伸び伸びと演奏されているような感じでした。特に右端でコントラバスの演奏をされていた女子生徒の方は、終始笑顔で体全体でリズムを取りながら本当に楽しそうに演奏されていました。
東京音楽隊のベーシスト・岩田有可里さんに注目しているためか、どうしてもコントラバスに目が行きますが、そんな事情を差し引いても、本当に演奏を楽しんでいるのがよく分かり、将来音楽隊に入ってね、と心の中でお願いしました。
真島俊夫さんの遺作の中でも特に人気の高い曲なんだと思います。東京音楽隊も人見での演奏会では生徒さんたちとのジョイントパートで必ずこの曲をやりますよね。ノリのいい曲ですし、瑞々しいメロディが学生さん向けなのかも知れません。
えーと、ここで何かがあったと思うのですが、いくら思い出しても出て来ません、勘違いかも知れませんが、どうもm(_ _)m
アンコール(ファイナル) 軍艦
井上さんが、「皆さんが楽しみにしておられる、あの曲、もちろん最後に用意してありますよ、ではお楽しみください!」と紹介されたのは、もちろん「軍艦」です。これを聴かずに演奏会は終われません。しかも、本当に久しぶりの生「軍艦」です。聴衆の皆さん、最初から手拍子でノリノリでした。
途中でこちらをふり返った長岡隊長も、嬉しそうな表情でした。そうですよね、どれだけこの雰囲気が味わいたかっただろうと思うと、またちょっとグッと来てしまいました。
最後になりますが、横須賀音楽隊のホームページに、今回の演奏会前に撮影されたと思しき集合写真が掲載されています。撮影が許されない演奏会ですから、このような心遣いはとてもありがたいですね。
さて、この記事をアップするまでに、ほぼ一週間もかかってしまいました。大抵翌日、かかっても2日以内にアップしているのですが、今回は難航しました。
いろいろなことがあったのは確かですが、やはり三宅さんの進化をどうやってお伝えしたら良いのかで足踏みが始まってしまったのが最大の原因だと思います。
もっとも、いつもながら私の独断と思い込みで書いているだけですので、そんな見方もあるのね、程度で読み流してくださいね。
随分と長い記事になってしまいまいましたが、最後までお読みくださいまして、ありがとうございました。