あれこれdiary

海自OBによる偏見御免徒然あれこれdiary

3自衛隊音楽コンサートを聴いてきました(╹◡╹)

 昨日(2020年11月28日(土))「青少年のための3自衛隊音楽コンサート」を聴きに三軒茶屋にある昭和女子大人見記念講堂に行ってまいりました。

 このブログを長くお読みの方にはもうお馴染みの素敵なホールです。

 以前、中目黒から人見記念講堂まで徒歩で向かう様子を記事にしたことがあります。

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 今回は、渋谷から徒歩で向かう様子を、動画にしてみました。

 夕暮れ時の国道246号線を下っていきます。当初は右側の歩道を行きますが、途中にある大橋ジャンクションの下で歩道橋を渡り、以後左側の歩道を行きます。

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 こうして辿り着いた、昭和女子大は、正門から続く街路樹のイルミネーションが華やぎ、久々の人見記念講堂は、ライトアップされ、大変美しい姿で迎えてくれました。

 新型コロナの影響で入場者数を半分に制限しているため、会場周辺もロビーの中も、人の姿はまばらで、昨年の9月に訪れた際の賑わいとは隔世の感がありました。

 私の席は、一階中央の最後列でしたから、ホール後面のドアを入ればすぐ目の前です。席を探す手間が全く要らないのがメリットなのですが、やはりステージまでの距離が果てしなく遠く、演奏中の隊員の皆さんの様子を拝見することは諦めました。

 ステージに向かって右端には、東京音楽隊航空中央音楽隊の隊旗が並んで置かれています。

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 本来なら、ここに陸自中央音楽隊の隊旗も並ぶはずだったのですが、期日直前になって隊員の一人が新型コロナウイルスに感染していることがわかり、已む無く参加見合わせとなりました。とても残念です。

 ところで、この隊旗を撮影するためにステージ前まで行くと、すぐ目の前の席に「いかづち」さんが座っていました。入隊適齢の息子さんの付き添い枠だそうです。先ほどまで荒木さんがステージ左端のハープのところでチューニングをされていたそうですが、さすがに声かけはできなかったとのことでした。岩田さんのチューニング姿は見えなかったということですが、考えてみれば最初に演奏するのは航空中央音楽隊ですから、今ステージに上がっているコントラバスは岩田さんのものではありません。きっとステージ裏で、ご自分のコントラバスのチューニングをされているのでしょう。

 ここなら、ステージ上のこともよく見えるでしょうから、情報収集はお任せすることにしました。

 席に戻って座っていると、なんと、あの斉藤さんが姿を現したので驚きました。ご存知のとおり、斉藤さんは三宅由佳莉さんの大ファンで、三宅さんが横須賀に異動になったのを機に、東京音楽隊の演奏会からは姿を消しました。「今日はどういう風の吹き回しですか?」とお聞きすると、「いやー、工事が終わってブルーシートの取れた人見記念講堂が見たかったから」と、意味がわかったようでわからない答えが返ってきました。ひょっとして、三宅さんが出演するという情報でもあるのかなと思いましたが、そんなはずはありませんよね(≧∀≦)

 開演を待つ間、自分の席からステージを見ていましたら、荒木美佳さんが、2度目のチューニングなのか、指慣らしなのかわかりませんがハープに就いて何やら奏でられています。いつもながら優雅な姿ですね。

 これは午前の部をご覧になったスペリアFUJIさんが、荒木さんのご了解を得た上で提供して下さった写真です。お元気そうで、素敵な笑顔ですね。安心しました。

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 そして、開演10分前に、場内アナウンスがありました。新型コロナウイルスの感染者が出たため、陸上自衛隊中央音楽隊は出演を取りやめたことを伝えるとともに、感染拡大防止への協力や、演奏中における観客相互の気遣いなどを求めるものでした。大変落ち着いたナレーションで、どこか懐かしい感じはしていたのですが、「いかづち」さんから「これ荒木さんですよね」とLINEがきて「あ。確かに荒木さんだ」と思い至りました。普段の軽妙なMCとはまるで違う、端正で落ち着き払った大人の雰囲気が醸し出されていました。

 荒木さんのナレーションで、今回のコンサートは、コロナ感染拡大防止の観点から休憩時間は設けずに行われること、陸自中音の参加は取りやめられたけれども、海空音楽隊の演奏曲目を増やすため、演奏会の時間に変更はないことも伝えられました。

 実は、会場入り口で配られたリーフレットに記載された演奏曲目は、本来3自衛隊で演奏するはずだった構成になっています。直前の変更ですから、刷り直しなどできるはずがありません。他方、ネット上に公開されたリーフレットは、海・空音楽隊の演奏曲目がそれぞれ1曲づつ追加された形になっています。素早い対応ですね。

 さて、いよいよ開演時間です。

前半 航空自衛隊航空中央音楽隊

①国歌「君が代

 言わずと知れた、我が国歌です。「国歌の吹奏を行います、ご来場の皆様はその場にご起立ください」とのナレーションに従い、皆さんその場に起立し威儀を正します。「感染拡大防止の観点から、斉唱はお控えください」なるほど、それはそうなんだけど、歌いたかった私は残念です(≧∀≦)

 久々に聴く、生演奏の君が代に身が引き締まる思いがいたしました。

 

②Esprit de Corps

 この曲は、昨年の9月、同じこの人見記念講堂で開催された、海上自衛隊東京音楽隊の第60回定例演奏会でも演奏されました。曲の詳しい解説はその時書いていますので、この記事を参照してみてください。

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 上の記事にも埋め込んだ動画です。かっこいいですよ。

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 曲が終わったところで、航空中央音楽隊のMCを勤められた准空尉の方が、おっしゃいました。「いや、拍手というものはいいものですね。コロナの影響で、このようなホールで、お客様の前で演奏するのは実に10ヶ月ぶりになりますが、こうして久々に私たちの演奏に対する拍手を直接いただき、それを感じるられることがどれほど嬉しいことなのか、どれほど励みになるのか、隊員一同涙が出るほどの思いで受け止めております。」胸に迫る言葉でした。

 やはりそうなんですね。音楽隊の演奏会が行われず、私たちも寂しい思いを抱いてきましたが、聴衆の前で演奏することができない音楽隊の皆さんは、それ以上に遣る瀬無い思いで、この長い戦いを続けて来られたのだということに改めて思いを致しました。

 

③Tribute

 この曲は、航空自衛隊の行進曲「空の精鋭」を作曲された、空自音楽隊の矢部政男さんが作曲されたもので、戦闘機が駐機場での飛行前作業を終え、タクシーウェイを通って滑走路の離陸滑走開始地点まで移動していく様をドラマチックに描いた作品とのことです。ちなみに、矢部政男さんはすでに退官されたそうですが、引き続き作曲家としての活動を続けておられるそうです。

 この曲の動画を探したのですが、見つかりませんでした。残念です(≧∀≦)

 ここで、MCの方が「今回は陸自の音楽隊が急遽参加できなくなり、2自衛隊合同コンサートになってしまいましたが、これが仮に、1自衛隊になってしまったらどうなったと思いますか? そこは、不測事態への即時の対応を旨とする自衛隊、実は、最悪単独開催になった場合でも支障なく開催できるよう、3自衛隊音楽隊とも、万全の準備を行っておりました。」とのこと、なるほど、さすが抜かりなし(╹◡╹)

 

④あの日聞いた歌

 最後の曲目は、6曲の唱歌のメドレイでした。滝廉太郎の「花」や、「春の小川」など誰もが知っている、昔懐かしい唱歌が次々と繰り出され、気持ちの和らぐ、そんな演奏でした。

 演奏が終わり、指揮をされていた航空中央音楽隊長・松井徹生2等空佐が左袖に退場されますが、会場からはアンコールを求める拍手が鳴り止みません。どうなるのかな、と思って見ておりましたら、ステージが暗転して、「ないよ」という意思表示となりました。

 さて、休憩時間は取らないとのことですが、後半の海自のステージへの転換作業が必要となります。まぁ照明の落ちたステージ上で隊員の皆さんがステージ変換の作業を進める様を見る機会などなかなかりませんから、それもまた一興と思っておりましたら、静かに動きがありました。

 

後半 海上自衛隊東京音楽隊

 ステージに向かって左端に置かれたハープにスポットライトが当たっています。そして、慌ただしく変換作業が進む暗いステージの右袖から一人の女性海上自衛官が、静かにではありますが、堂々と歩を進めます。そうです、荒木美佳さんの登場です。ゆっくりとステージ左へと進まれる姿には、風格と言いますか、威厳のようなものが湛えられている気がしました。三宅さんにも感じることですが、お二人とも、いい意味での貫禄が備わって来たような気がしますね。

 さて、スポットライトの当たったハープに就かれた荒木さんの優雅な指先から紡ぎ出された哀愁を帯びた美しいメロディは、鬼滅の刃より「竈門炭治郎のうた」でした。

 もちろん、ステージ変換の間のサービスとしての演奏なのでしょうけれど、美しいハープの音色が会場に響き始めると、皆さん息を呑んだように聴き入っていました。ステージ上では作業が進んでいましたが、そんなことが全く気にならないほど、素敵な時間が流れて行きました。また、変換作業が終わって入場して来られる隊員の皆さんも、荒木さんの演奏の邪魔にならないよう、細心の注意を払いながら入場されているのがよくわかりました。

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 ハープのソロ演奏が終わったところで沸き起こる喝采に、荒木さんは立ってお辞儀をするのですが、会場は、荒木さんがマイクを手に何か語ってくれるのではないかとの期待感が高まっていました。でも、荒木さんに動きはありません。左袖から館山康弘・2等海尉が登場すると、荒木さんが両手でどうぞどうぞというようなジェスチャで館山さんを前に押し出しました。

 そうなんです、今回、東京音楽隊のMCを務められたのは、荒木さんではなく、館山康弘・2等海尉です。このブログでも、これまで何度も取り上げさせて頂いているので、皆様ご存知だと思いますが、大変歌の上手な方ですよね。一昨年の12月にトリフォニーホールで行われた東京音楽隊の定例演奏会でも、第1部の2曲目に荒木さんのハープソロが控えていたため、第1部のMCを務められていました。

 今回は、どのような事情でMCを努められているのかは分かりませんが、他軍種との調整の中で、MCは准尉または幹部となったのかも知れません。

 館山さんの挨拶と、1曲目の曲紹介が終わったところで、横野和寿さんのリードでチューニングが始まりました。いやー、ほんとに9ヶ月ぶりの生音ですから、チューニングの響きを聴いただけで感動してしまいました。いいもんですね(╹◡╹)

 それにしても、大変無理筋な前半との休憩なしでの繋ぎを実にスマートにこなしているように思えました。

 あ、岩田有可里さん、ちゃんと出演されていましたのでご安心くだいさい。何しろ遠くて表情などは全く分かりませんでしたが、目の前に座っていた「いかづち」さんによると、久しぶりの演奏会なのでちょっと緊張されているというか、気合が入っているような気がしたとのことでした。多分、皆さんそうなんだと思います。

 そして、我らが樋口好雄隊長が登場すると、やはり拍手の強さが違います。観客の人数は半分しかいませんが、みんな一生懸命手を打ち鳴らしていました。「いかづち」さんによると、ちょっと痩せられたような気がするとのこと。演奏会がないのでトレーニングに打ち込まれていたのかも知れませんね。

①海を越える握手

 いよいよ、久々の東京音楽隊の生演奏をこの耳で聴けるのかと思うと、期待感で心が膨れ上がります。樋口隊長のタクトが振り下ろされた瞬間に鋭く吹き上がった音に気持ちが持っていかれました。この音が聴きたかったんだよな。本当に感動しました。樋口隊長の躍動感あふれる指揮ぶりも全く衰えることなく指揮台の上に健在です。

 あ、感動のあまり、曲のことに触れるのを忘れていました。

 この曲は、米海兵隊軍楽隊長だったジョン・フィリップ・スーザの作品ですが、演奏を聴く機会も多く、耳によく馴染んだ名曲だと思います。久しぶりの演奏会ですから、コンサートマーチとしては、このような、みんなの耳に馴染んだ曲でまずは流れを作るという意図だと思います。確かに気持ちがぐんと上がりました。

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El camino real (エル・カミーノ・レアル

 この曲は、アフルレッド・リードの作品で、館山さんの解説によりますと、エル・カミーノはスペイン語で「道」、レアルは「王」つまり、エル・カミーノ・レアルとは「王の道」という意味だそうです。華麗に踊るダンサーたちを引き連れた威風堂々たるスペイン王の行進の様子を思い浮かべながら聴いて欲しいとのことでした。

 この曲でもメリハリのある東京音楽隊の演奏には魅了されました。

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③Tennessee Walts(テネシー・ワルツ)

  この曲については、中川麻梨子さんの歌が披露されるのではないかと、ちょっと期待していたんです。YouTubeで検索すると、中川さんが過去に歌われた動画がたくさん出てきたからです。でも、前半の航空自衛隊の演奏では、森田早貴さんが出演されなかったので、ひょっとしたら、コロナ対策のため、歌唱なしとの申し合わせができているのかなとも思ってはいました。

 ところが、館山さんが、「この曲を中川麻梨子3等海曹の歌でお送りします」と紹介されたため、会場には期待感が溢れました。私自身も、中川さんの生の歌声を拝聴するのは今年3月1日に行われた国旗国歌演奏会以来9ヶ月ぶりです。

 歌唱が素晴らしいのは言うまでもありませんが、何より、観客の前で歌えるのが嬉しいという気持ちが伝わって来ました。あぁ、このコンサートが開催できて、本当に良かったなと心から思いました。

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④海の男たちの歌

 そして最後の曲です。これは、昨年9月に日比谷の野音で開催された海上保安庁音楽隊とのジョイントコンサートでも披露された、力強くもファンタジックな作品です。

 船の上での生活や作業を表すメロディや音が次々と繰り出されるのですが、途中で鯨の鳴き声が、様々な楽器を駆使して表現されています。この曲では、いつも大忙しのパーカッションパートが、一際目まぐるしく動き回っておられるように思いました。

 昨年のジョイントコンサートの動画を貼っておきますね。

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 ところで、「いかづち」さんによると、チューバの芝陽子さんがステージ上におられたとのことです。ということは、先般の横須賀音楽隊によるふれあいコンサートに出演されていたのは、一時的な支援であって、異動ではなかったということのようです。

 パーカッションの中島佳奈恵さんについては、お姿見えなかったと思うので、おそらく横須賀へ異動されたのではないでしょうか。ただ、当直勤務等で出演されないということもありますので、何とも言えないですね(≧∀≦)

 さて、この曲が終わり、拍手喝采の中、樋口隊長が左袖へと向かわれます。もちろんアンコールを求める拍手は鳴り止むことがありません。前半はここでステージが暗転してしまいましたが、今回はどうなんだろう…と思っていると、ステージ上から突然ドラムの響きが。会場の期待感が急激に膨らむなか、登場されたのは航空中央音楽隊の松井徹生2佐です。おや?でもバンドは東京音楽隊のままです。どうなるんだろう?

アンコール

 そのまま指揮台に登られた松井2空佐は観客席に一礼すると東京音楽隊に向き直りタクトを振り上げます。奏でられたのは、なんと「空の精鋭」です。驚きました。ステージ裏には航空中央音楽隊の皆さんがおられるのに、松井2空佐が東京音楽隊でこの曲を振っているのです。私は一瞬複雑な思いを抱きましたが、次の瞬間深い感動を覚えました。航空中央音楽隊の皆さんは、久しぶりの観客の前での演奏会で、この曲を自分たちで演奏したかったはずです。その思いがあるはずだと思ったので一瞬複雑な気持ちになったのですが、その思いがわかっている東京音楽隊は、彼らのためにも心からの演奏をしているに違いないと思い至り、深い感動を覚えたのです。コロナ禍の中、なんとか開催できたこのコンサートを安全にかつ感動深いものにしようと、各音楽隊が多くのことを忍んで準備して来られたことが、このことを見てもよく分かりました。

 そして、空の精鋭が終わると再びドラムロールに代わり、松井2空佐は喝采を浴びながら左袖へ、樋口隊長が再び登場しました。そして指揮台で一礼するとバンドに向かってタクトを振り下ろしました。「軍艦か」と思って構えていたところに聴こえてきたのは、陸上自衛隊の行進曲「凱旋」でした。そうか、今回は出演できなかった陸上自衛隊中央音楽隊の皆さんの気持ちを込めて東京音楽隊が演奏するのだな。

 この「凱旋」は全曲演奏ではありませんでしたが、しっかりと陸上自衛隊の存在感を伝えてくれました。そして、ドラムが響き渡る中、樋口隊長は指揮台の上に止まり時を待ちます。もう間違いありません。次に来るのは、そう「軍艦」です。

 樋口隊長のタクトが振り下ろされ、演奏が始まると、今回の演奏会では初めて、演奏中に客席から手拍子が起こりはじめました。樋口隊長が振り返り手拍子を求めるジェスチャをしたものですから、観客席は大きな手拍子で盛り上がりました。やはり気分を高揚させてくれる曲ですし、東京音楽隊の演奏だと思いました。

 このアンコールの様子だけでも皆さんにお届けできないかと、フェイクではありますが、今回の演奏順番どおりの動画を作ってみました。会場に足を運ぶ機会のなかった皆様に雰囲気の一端でも感じ取っていただければと思います。 

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