あれこれdiary

海自OBによる偏見御免徒然あれこれdiary

自衛隊音楽まつり2019・感動のリハーサル

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 ようやく、PCからブログに接続できました。時々繋がらなくなるんですが、原因がよくわかりません(≧∀≦)

 昨日、とりあえずの報告を上げましたが、今回の音楽まつりも驚きと感動に満ちたものでした。

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 ところで、私が東京音楽隊のベーシストである岩田有可里さんフリークであることをご存知の方が結構いらっしゃるものですから、「岩田さんに会いました」と写真を撮って提供してくださる方が増えました。ありがたいことです。今回も、会場入りする岩田さんを捉えた写真をいただきました。私はお会いする機会がありませんでしたので、嬉しい限りです(╹◡╹)

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 いつもながら、本当に屈託のない爽やかな笑顔で、拝見するだけで癒されます。左側の写真で岩田さんとのツーショットに収まっているのは、今回の音楽まつりのために選抜された艦旗隊の一員で、岩田さんとともに東京音楽隊の隊旗を持たれる方だそうです。ちょっとだけ緊張気味の笑顔が印象的ですね。それにしても戦闘服がよく似合います、さすがは自衛官

 旗持ちと艦旗隊は、みなさん音楽まつりのために各部隊から選抜され、東京音楽隊に臨時勤務されているのでしょう。今や艦旗隊は東音ドリルの華ですから、希望者も多く倍率は相当高いと思われます。その彼女たちを取りまとめ、訓練・指導されているのが岩田さんなのですね。サバサバした性格の岩田さんですから、きっと、皆さんから「姉貴」として慕われているに違いありません。訓練風景を一度見てみたいですね(╹◡╹)

 

 さて、公演内容です。東京音楽隊ファンでとしての贔屓目もあるのかもしれませんが、もう「東京音楽隊が主役」と言っても良いくらいの圧倒的な存在感がありました。

 まず、荒木美佳さんによるリハーサルの前口上と、それに引き続くハープのソロ演奏が行われました。普段の演奏会でも、なんとも言えない雰囲気を醸し出して私たちを楽しませてくれる名MCの荒木さんですが、その力を遺憾無く発揮した前口上でした。引き続くハープのソロ演奏を紹介する前振りとして、自己紹介をされ「私の専門楽器はハープです」と仰った際、会場がどよめきました。なんだか凄いお宝情報を耳にしたような驚きと同時に畏敬の念が感じられるどよめきです。ちょっと小気味いい感じでした。

 更に、陸海空の音楽隊にハープ奏者はいるけれど、「ハープ専門職として入隊したのは私が初めてとなります」と仰った時には喝采が起きました。私もそれは初めて聞くことでしたので、驚きました。そうだったんですね。四の五の言うより、その様子を収めた動画をアップしましたので、どうぞご覧になってください。我らが荒木さん、本当に素敵です。

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序章 インセプション・始まりの響き

 序章は、陸海空音楽隊の合同演奏による「アベンジャーズのテーマ」で幕を開けました。事前報告で、フィナーレが空自中音メインではないか、と書いたのですが、どうやらオープニングが空メインです。空自中音隊長が指揮をとります。weloveleaderさんが多眼的な動画をアップしてくださっていますので、貼らせていただきました。これはリハーサルではなく、初日(第1回?)公演の演奏です。

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 そして、ラグビー・ワールドカップ公式テーマ曲「World in Union」では、3音楽隊所属の3人の歌姫による歌唱がありました。出だしは、中音の松永美智子さん、空中音の森田早貴さん、そして東音の中川麻梨子さんの順に各々ソロパートを歌うことで、それぞれの持ち味を、そして後半はその3人の美しいハーモニーを聴かせてくれました。

優雅な音の世界が広がり、これから始まる公演への期待が高まります。

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 演奏が終わり、ドラムに合わせて音楽隊の隊形変換と第302保安警務中隊の入場です。いつもながら一糸乱れぬ儀仗隊の統制美は、ただ行進するだけでも感動を与えてくれます。

 国旗の入場にあたっては、全員が起立して迎えます。そして第302保安警務中隊による国旗に対する着剣捧げ銃と音楽隊による君が代の吹奏に合わせ、会場全体での君が代斉唱が行われました。現役の頃には儀式等において国歌を斉唱する機会がいくらでもありましたが、退役してみると、一般社会には君が代を歌う機会など全くないことに気づきます。ですから、思い切り国歌を歌える音楽まつりのオープニングセレモニーは、私にとってとても貴重な機会なんです。

 捧げ銃と国歌の斉唱が終わり、国旗が退場すると、再び全音楽隊による演奏です。私の目の前の楽器ステージに並んだファンファーレ隊による1964年東京オリンピック・ファンファーレが高らかに鳴り響き、続いて合同演奏によるオリンピックマーチが始まりますが、合同演奏ならではの豪華な音の厚みが、正にずどんとぶつかってきます。302保安警務中隊が西側に、そして心地よい音の波を広げながら音楽隊が左右に捌けて序章が幕となりました。

 ここで、ナレーター(野地将年さん?)により、各自衛隊音楽隊の沿革が紹介されました。とても良い声ですよね。荒木さんの声もそうなんですが、ずーっと聞いていたい心地よさがあります。お二人に共通するのは、ただ地声が良いということに留まらず、そこに実に細やかな感情の起伏を無理なく載せることができるところではないでしょうか。声の向こうに色鮮やかな風景が広がります。そんなナレーションに彩りを添えたのが荒木美佳さんによるハープのソロ演奏です。静かな語り口と荒木美佳さんが奏でる「戦場のメリークリスマス」のしっとりとした音色が、ナレーションが伝えようとしている、音楽隊の変革への真摯な思いを、私たち一人ひとりに届けてくれました。

 

第1章 トラディション・伝統と伝承の響き

 変革のためには、まず守り伝えるべきものをしっかりと守らなければならないとのコンセプトがこの章のテーマです。

 最初に登場したのは陸上自衛隊中央音楽隊と第302保安警務中隊による混成部隊です。正に陸上自衛隊伝統のテーマ曲とも言える「陸軍分列行進曲(抜刀隊)」の勇壮な演奏とともに入場する様は、威風堂々精強無比の趣です。やはり、こういう一面が軍楽隊の真髄であろうと思います。様々な新しい演奏形態の追求も大切ですが、これがなければ自衛隊の音楽隊ではありませんから。陸自中音は、昨年もミリタリズムを追求した勇壮なドリルを展開しましたが、今回もそれを踏襲した原点回帰のステージでした。

 

 続いて、我らが東京音楽隊のドリル演奏です。トラディションというコンセプトに沿っていることは確かですが、あっと言わせる演出はエボリューション(変革)というよりレボリューション(革命)と呼ぶに相応しいのではないかと思います。本当に驚きました。事前情報で、東京音楽隊の大錨の真ん中に「穴」が空いているということは報告した通りです。何なんだろうね、あの「穴」は、と思っていましたが、ステージに照明が当たった瞬間、ど真ん中にクリスタルピアノと太田紗和子さんの姿が浮かび上がり度肝を抜かれました。音楽まつりではもちろん見たことのない光景です。

 「ベートーベンコラージュ」と題した演奏曲目は、ピアノ協奏曲第5番「皇帝」から始まります。吹奏楽の重厚な響きと太田さんによるピアノの美しい旋律が織りなす夢のような世界が一気に会場を満たして行きます。ドリルチームの足運びにもプロイセン風のアレンジがされていて、ビジュアル的にもドイツ的な雰囲気がしっかりと組み込まれていました。そしてピアノ演奏は運命やエリーゼのためにを挟んでピアノソナタ第8番「悲愴」へと。ここで中川麻梨子さんが静かに登場し、この壮大な曲をヴォカリーズで歌い上げます。何と言えばいいのか、言葉も見つかりません、ただただ唖然としてステージに見入るだけでした。こんなことをやってのけるんだ、もう畏敬の念しかありません。

 そして、スネアドラムの響きに合わせてドリルチームが隊形を変換し、大錨を形作って行きます。太田さんのピアノがその要です。こうして途中で途切れた横隊を綺麗に回転させるのは、大変難しいです。でも、綺麗に回ってましたね、ここまで来るのには相当の苦労があったと思います。

 さらに、退場にあたっては、米海軍の公式行進曲「錨を上げて」を演奏しつつ、複雑な隊形変換を繰り返す美しい行進を見せてくれました。最後は「軍楽隊」の真骨頂を見せつけたわけです。

 短い時間の中に、詰め切れないほどの魅力をこれでもかと盛り込んだ、まさに圧倒的なドリル演奏でした。

 横須賀地方総監部Galleryさんが正面側から撮影した動画をアップしてくださったので、埋めておきます。是非ご覧になってください。感動しますよ。

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 今回、東京音楽隊がベートーベンを取り上げたのは、この章の「トラディション(伝統)」というコンセプトに沿うこともさることながら、ゲスト出演しているドイツ連邦軍参謀軍楽隊への敬意を示すという意味合いもあると思います。本当に素晴らしいステージでした。それにしても、ベートーベンです。一体誰が企画したのでしょう、心底感動しましたし、東京音楽隊に惚れ直しました。

 

 続くのは在日米陸軍軍楽隊と米海兵隊第3機動展開部隊音楽隊です。毎年米軍の陸海空軍そして海兵隊の4軍から2軍種の参加を得ていますが、特徴的なのは、その明け透けなノリの良さでしょう。「音楽を楽しもうぜ」というメッセージが演奏からも、個々の隊員の動きからも伝わってきます。特にボーカルの皆さんのノリの良さは格別です。

 楽しく、そして力強い演奏を披露してくれました。

 

 海兵隊の音楽隊が東側に捌けるかと思いきや、途中で止まり、続いて西側から陸軍音楽隊が再び登場、おやおや?と思っていると、陸海空自衛隊の音楽隊も次々と登場して、5隊による合同演奏となりました。日米の合同演奏は、これまで数え切れないくらい行われてきましたから、こなれたものですね、全く違和感のないステージです。ここでも米軍ボーカリストのノリの良さが際立っていました。

 

第2章 イクスパンション・広がりの響き

 この章は、陸上自衛隊北部方面音楽隊の演奏から始まります。例年、陸上自衛隊からは2個方面隊の音楽隊が出演してきましたが、今年は北部方面だけです。今後1個方面隊の出演に絞られるのでしょうか。ひょっとすると、その分、海外の軍楽隊を招待し、国際軍楽祭(タトゥー)の色彩を強めて行くのかもしれませんね。

 北部方面音楽隊のステージでは、ボイスパーカッションが注目されました。今まで、音楽まつりでボイパが披露されたことはなかったんじゃないでしょうか、定かではありませんが、私には見た記憶がありません。これも変革の一つということなのでしょう。ボイスパーカッションを披露された後、この隊員さんは私たちの目の前の楽器ステージに上がり、ティンパニの演奏をされていました。本物のパーカッショニストだったんですね。

 北部方面隊の演技を見ていて「おや?」と思ったことがあります。スネアドラムを叩く女性隊員のスティック捌きなのですが、叩いて一拍置く時に両手のスティックを口の高さまで持ち上げて水平に保持していました。とてもカッコいいのですが、これは英国海兵隊軍楽隊で行われている演奏様式です。これを取り入れたのでしょうか。これはまた後で触れます。

 ssさんの動画を埋めさせていただきます。

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  そして、米軍以外の海外からのゲストバンド出演です。

 最初に登場したのはベトナム人民軍総参謀部儀礼団軍楽隊です。今回が初めての出演となります。政体としては共産主義国家ですが、日本や米国とも良好な関係を築いており、軍事交流も盛んです。

 元来、日本と同じ漢字文化圏にあり、共に長く中国の影響を受けてきましたから、その曲調にはどこか中国的なテイストがあります。昨年のシンガポール軍楽隊のような派手なパフォーマンスはありませんでしたが、白と赤を基調とした制服や、女性隊員による歌やリボンの演技も交えた華やかなステージを展開してくれました。

横須賀地方総監部Galleryさんの動画を埋めさせていただきます。

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 次に登場したのは、ドイツ連邦軍参謀軍楽隊です。昨年のフランス海軍バガッド・ド・ランブイエ軍楽隊に引き続き、ヨーロッパからは歴代2国名の参加となるそうです。やはり、音楽まつりも国際軍楽祭の方向を見据えているのではないかと思います。

 ベトナム人民軍の華やかなステージとは対照的に、とてもカッチリとして、ドイツ軍のイメージ通りのオーソドックスなステージだと思いました。それがまたよく似合っています。私が注目したのは、隊長の指揮ぶりです。本当にメリハリが効いた軍楽隊らしい印象です。終演後の敬礼も、正に軍人!というキレのあるものでした。

 驚いたのは、退場行進の途中で部隊が立ち止まり、総員で「ありがとう、日本!」と言ってくれたことです。会場は盛り上がりました。

こちらも横須賀地方総監部Galleryさんの動画です。

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  同じブラスバンドでも、国により、それぞれの伝統的な音楽のテイストを持っていますから、海外の軍楽隊からはエキゾチックな魅力が伝わります。私たち観覧者にとってはそれが素敵な魅力になりますし、音楽隊員にとっては刺激でもあり、新しい取り組みへのヒントになっているのでしょう。また逆に、ゲストバンドにとっても同じことが言えるのではないかと思います。もちろん、みんな同じになったのでは意味がありません。それぞれの国の伝統や精神を守りながら、他国と共有できる領域を広げていく。それこそが国際交流というものだと思います。どこかの国が文化や価値観を押し付けるような行為は、誰にも何ももたらさないでしょう。

 あ、また脱線してしまいました(≧∀≦)

  

 次に登場するのは航空自衛隊航空中央音楽隊です。おなじみのカラーガード隊との演技ですが、今回の演目は「スターウォーズ」。途中、カラーガード同士の戦闘にも似た演技も盛り込み、従来より緊張感のあるステージになっていた印象があります。

 以前にも書いたと思いますが、潜水士さんは東京消防庁の幹部職員なのですが、今回、東京消防庁のカラーガーズ隊の隊員さんを二人を同伴されていました。お一人はご自分の部隊から派出されている隊員さんで、もう一方は東京消防庁音楽隊からカラーガーズ隊に選抜されている方だそうです。お二人とも、他の部隊のカラーガーズの演技がとても参考になったと仰っておられたとのこと。私も過日東京消防庁音楽隊の演奏会を2度に渡り拝見し、普段馴染みのない音楽隊の演奏を聴くのはとてもいい刺激になるなと感じた次第です。

 横須賀地方総監部Galleryさんの動画を貼ります。

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 空中音の演技が終わったところで、異変が起きました。私の席から見ると、向かって正面右前方のバルコニーのような空間にスポットライトが当たり、海自隊員によるスネアドラムの演奏が始まったのです。一体何だ?と会場が戸惑っていると、今度はその対角線上、つまり私の席の左上後方の同じような空間で陸自隊員によるスネアの演奏が行われ、違いに演奏を交換するという、これまで見たこともないような演出です。この時のスネアの演奏の仕方が、先ほどの北部方面音楽隊の女性隊員と同じように英海兵隊方式のスティック捌きでした。今後各音楽隊がこのスティック捌きを採用するのかどうかはわかりませんが、見栄えのする演奏方法だとは思います。

 これを皮切りに、これまで出演した全ての音楽隊が逐次登場し、大きな合同演奏へと広がっていきます。このステージの指揮を執るのは陸自中央音楽隊長、樋口孝博1等陸佐です。この時点で、ファイナルの指揮は、我らが樋口好雄隊長に違いないと思いました。楽しみです。

 スネアのセッションが行われている中、ステージ中央に置かれた不思議な楽器。そもそも楽器なの?と思える「箱」でした。その上に陸自の女性隊員が座っています。そしてその箱を叩き始めると軽快な乾いた音が響きます。その周りに各自衛隊の音楽隊員が円陣を組むように集まり演奏を始めます。ベトナム、ドイツのサックス奏者が左右から演奏しながら登場、それに引き続き次々と登場する隊員たちは幾重にも円陣を作り、文字通り演奏の輪が広がっていきます。

 数学徒さんの動画を埋めさせていただきます。

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 選曲もあるのかもしれませんが、とても後味の良い、洗練された演出だったと思います。この演技の後半、正面席からはわかりづらかったかもしれませんけど、防衛大学校儀仗隊のみんさんが横一列になるように登場してフォーメーションに加わりましたが、音楽隊が捌けた後も、その場に残り、自分たちのステージが始まるのを待っているようでした。

 

第3章 ジェネレーション・世代を超えて

 第3章は防衛大学校儀仗隊によるファンシードリルから始まります。

 前のステージですでに登場していた彼らは私たちの目の前に横一列に並んでいます。そこに鳴り響いたのが「起床ラッパ」 そこからナレーションが防衛大学校儀仗隊を紹介し、ステージ背面からの彼らの登場となります。演技については、動画を見なきゃわかりませんよね。これも横須賀地方総監部Galleryさんがあげてくださいましたので、埋めておきます。

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 そして、おなじみ自衛太鼓です。太鼓指導は、今年ももちろん北海自衛太鼓の高橋直保・陸曹長です。昨年も書きましたが、こればかりは言葉で表すのは不可能です。会場で体感する以外に、あの威力を理解することはできないでしょう。まだ、動画も上がっていないようですので、ここに貼ることはできませんが、どなたかがアップしてくださったところで貼らせていただくことにします。威力は伝わらなくとも、その圧倒的な雰囲気はお判りいただけると思います。

 

最終章 ディスティネーション・到達への響き

 そして、いよいよ最終章です。事前情報を報告した記事では、オープニングが東京音楽隊メインで樋口隊長指揮ではないかと予想しましたが、逆で、実際にはフィナーレが東音メインとなりました。予想が外れてよかった。このフィナーレ、感動ものでした。

 演奏は、大川好さんのフルートから始まりました。そして横野和寿さんのクラリネットへ、さらに空自のクラリネット奏者へと、音が少しづつ大きくそして厚みが増していきます。ラヴェルの「ボレロ」は私も大好きな曲です。大川さんのフルートが奏でられ始めた時、おお、と感動しました。音楽まつりのステージで、しかも敬愛する我らが樋口好雄隊長の指揮でこの曲が聴けるのか。そう思っただけで鳥肌ものでした。

 海自ドリルでのベートーベンといい、フィナーレでのラヴェルといい、なんと優雅な構成なんだろう。冒頭、「東京音楽隊メインと言ってもいい」と書いた理由がお判りいただけると思います。この官能の階段を一つ一つ踏みしめながら登っていくような、破滅が待っているのはわかっていても一歩また一歩と吸い寄せられることを否めない破戒者のような、あるいは甘美な死への誘いのような、美しいけれど恐ろしい、そんな曲だと私は思います。でも、感覚が麻痺してしまいそうなこの曲が大好きです。感じ方は人それぞれだとは思いますけど。

 今回の演奏では、音楽隊による演奏がクライマックスに達したところで、両脇に控える防衛大学校儀仗隊による空砲の発射で幕となります。迫力の演奏でした。これが生で聴けたことは本当に幸せでした。

 そして、またしてもベートーベンからの「希望の歌」陸海空男女6人のボーカリストによる歌唱ですが、東音メインのフィナーレですから、歌い出しは藤沼直樹さん、そしてそれを受けての中川麻梨子さんからでした。藤沼さん、いい声してますね。中川さんも、それまで聴かせてくれたソプラノの迫力ある声とは違う綺麗な地声で歌われていました。そして6人のボーカリストが会場を自在に移動しながら歌を繋いでいきます。

最後は3人の歌姫が中央に並んでのクライマクス、感動的でした。

 全出演部隊の退場に当たって演奏されたのは、君が代行進曲です。これも私の大好きな行進曲ですので、もう堪りませんでした。素晴らしいフィナーレです。

kentaro T.さんの動画を貼らせていただきます。

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 全出演部隊が退場する中、私は中川麻梨子さんの動きを見ていたのですが、両脇に捌けることなくまっすぐ楽器ステージの前まで歩いてこられ、立ち止まりました。あれ、最後に何かあるんだと思い、ちょっと緊張しました。あとで、配られたプログラムを見たら、ちゃんと書いてあったんですけど(≧∀≦)

 ここで中川さんが披露されたのは、松田聖子さんの「瑠璃色の地球」です。とても素敵な曲ですが、この曲を中川さんの美しい声が、大切なものを優しく包み込むように丁寧に歌い上げていきます。感動が会場全体に広がっていき、温かいものが私の心を満たしてくれました。

 こちらも、数学徒さんの動画を埋めさせていただきます。

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 リハーサルとは言え、ほんんとうに忘れがたい、音楽まつりになりました。一度会場に足を運ぶと間違いなく病みつきになると、どなたかが仰っていましたが、本当にそうだと思います。たとえ立ち見でも構わないので、もっとたくさんの人が入れるようにはできないものでしょうか。安全の問題とかがあるので、そう簡単ではないのかもしれませんが。

 さて、如何でしたでしょうか、リハーサルの雰囲気がお伝えできたのなら幸いです。

 その全体像を動画でご覧になりたい方は、全編ノーカット版の動画を埋め込ませていただいていますので、お楽しみください。

sora soraさんによる全編ノーカット版

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