あれこれdiary

海自OBによる偏見御免徒然あれこれdiary

東京音楽隊第66回定例演奏会・詳報

 先日(2024年5月21日)、錦糸町にある「すみだトリフォニーホール」で開催された東京音楽隊の第66回定例演奏会を聴く機会を得たことは前回報告したとおりです。

 本当に久しぶりだったので、ホール入り口の敷居(ありませんけど(≧∀≦))が高く感じられました。

 同じように、ブログを書くのも久しぶりだったので、ログインできないとか、新しい記事を書くための手順が思い出せないとか、自らのポンコツぶりに改めて驚かされた次第です(_ _).。o○

 それはさておき、当日、ホール入口前でいかづちさんと合流し、高い敷居を跨いで中へ入ると、目の前に斉藤さん、zubizubizhyさん、シャラポワさんがおられたので暫し談笑していたのですが、ふと気付くと会場内から演奏が聴こえていました。

 会場に入ると、ステージ上では太田紗和子さんのピアノと藤吉正規さんのホルンによるプレコンサートが行われていました。入場してくる観客へのサービス演奏なのですが、お二人の演奏を聴くのももちろん久しぶりですし、歩きながら聴くなんて勿体ないというか、贅沢な話だなーと思いました。

 プレコンサートが終わり、開演までの間、ハープの荒木美佳さん、次いでベースの岩田有可里さんがそれぞれチューニングのために短時間ステージ上に出てこられました。あ、本当に東京音楽隊なんだな、そんな当たり前の感覚が少しずつ蘇ってきます。

 岩田さんがチューニングを終え、舞台裏へ戻られたところで「本日の隊旗」を撮影してきました。いや、「本日の」も何も、いつも同じ隊旗なんですけど、久しぶりだったので、なんか意味有り気に書いてみました。

 本日の隊旗の向こうには、つい今しがたまで岩田さんがチューニングされていた本日のコンバスが置かれています。あとで大活躍しますよ。

 開演時刻となり、両袖から隊員の皆さんが登場すると、会場から拍手が起こりますが、以前と比べると少しおとなしめの感じがしました。気のせいかもしれませんけど。

 こうして、ステージ上に隊員の皆さんが勢揃いしたのを見て、「あぁ、東京音楽隊だ」との思いが完結したような気がします。

 コンサートマスター・近藤悟史さんのリードによるチューニングが終わると、左袖から東音教育科長の渡邊太海1等海尉がモーニングタイプの演奏服で登場されました。前半の指揮は渡邊1尉が執られるようです。

 演奏会の口火を切るコンサートマーチとして演奏されたのは「ンサート・ファンファーレ『躍動』」です。

 曲のタイトルのとおり、心を駆り立てられるような軽快なマーチなのですが、全く聴いたことがありません。それもそのはず、演奏後に登場した我らがMC荒木美佳さんによりますと、この曲は、指揮された渡邊1尉の作曲によるもので、今回の演奏会が初演なのだそうです。渡邊1尉、自らの指揮による初演おめでとうございます。いい曲でした!

 この曲を書かれた背景には、コロナ騒動で萎えかけていた世の中に活力を吹き込みたいという思いもあったのではないでしょうか、広く演奏されるといいなと思います。

 それにしても、荒木さんの「皆さんこんばんわー!」を聞くと、途端に元気になりますね。これが楽しみで来られている方もおられるんじゃないでしょうか、まぁ私がそうなんですけど。

 さて、軽快なコンサートマーチに次いで演奏されたのは、シェイクスピアの四大悲劇の一つ「オセロ」の劇付随音楽として書かれた曲を、作曲者のアルフレッド・リード自身が吹奏楽向けにアレンジした「吹奏楽のための交響的素描『オセロ』」です。

 劇の進行にあわせて、5楽章から成る多彩な楽曲が繰り出されるものですから、曲の切れ間に、終曲と思われた方々の拍手が起きてしまったのはご愛嬌。演目は当日配布されるパンフレットで初めてわかるため「予習」できませんもんね(≧∀≦)

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 プログラム上、次の演目はアメリカ民謡の「シェナンドー」とあり、三宅由佳莉さんが歌われるとなっていますが、私には馴染みのない曲です。荒木さんから曲の紹介があると、暗転したステージの上で大きな動きがありました。隊員の皆さんが、次々と右の袖へと消えていきます。残ったのは、ピアノの太田さん、ベースの岩田さん、ハープの荒木さん、パーカッションの赤嵜さんの他は2〜3名の方々のみでした。

 このブログにおいて、かねてより注目もし、何度も取り上げさせていただいた方々がメインの小編成での演奏です。私の席から見ると、ステージの左右に分かれた岩田さんのベースと荒木さんのハープの存在感が大きく、「雅」のデュオを彷彿とさせるものがありました。

 ステージの準備が整ったところで、三宅由佳莉さんが左袖から登場し、大きな拍手に応えながらステージ中央に姿勢良く立ちます。なんか懐かしい…と思ったのは、久しぶりということもありますが、髪が20代の頃のようなショートヘアであったからかも知れません。心なしか表情まで、以前の三宅さんのように感じられました。いや、気のせいかも知れませんけど(╹◡╹)

 そんなことを考えながら、演奏が始まってからもぼんやりとステージを見ていたのですが、三宅さんの歌声が発せられた瞬間、頭のてっぺんから声が入ってくる感覚にビクッとして我に返りました。長らく聴いてなかったので、忘れかけていた感覚です。本当にびっくりしました。

 その後は、しっとりと歌い上げられるこの曲を、ゆったりとした心持ちで堪能させていただきましたが、本当に、いつまでも聴いていたい心地の良い歌声でした。

 この曲の動画は色々ありましたが、以前、三宅さんとよくコラボされていたヘイリーさんの歌唱が馴染むかなと思い、下に貼っておきます。

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 ところで、この曲の演奏中、パーカッションの赤嵜さんの動きが気になりました。おそらくビブラフォンに就かれていたと思うのですが、楽器に覆い被さるようにして、ベースの弓のようなものを縦に動かして演奏されているのが気になって仕方なかったんです。終演後、いかづちさんにその話をしたところ、ビブラフォンにはボウイングという弓を使った演奏方法があることを教えていただきました。また、関連動画も探してくださったので、ぜひご紹介したく下に貼っておきます。

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 三宅さんが左袖に退かれると、右袖からは、再び隊員の皆さんが次々とステージに登場され、席についていきます。前半最後の曲は「スクーティン・オン・ハードロック」です。

 この曲は、6年前(2018年)9月に昭和女子大人見記念講堂で行われた第58回定例演奏会において、冒頭の「軍艦」(!)に続いて演奏された曲でもあり、懐かしく思い出されます。

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 荒木さんの解説によれば、「ハードロック」は通りの名前で、作曲者であるホルジンガーが、自宅の近くにあるこの通りを疾走するイメージで書き上げたとのことですが、まさにその通りで、軽快な疾走感に溢れる曲です。人見記念の演奏会の際には、2回席でステージからの距離が遠かったので細かいところがよく見えなかったのですが、今回はかなり近いところでしたし、ステージに向かって右側だったので、ベースの岩田さんの演奏姿がとてもよく見えました。ですから、演奏会の全編を通じて、クールなベース演奏を、目でも耳でも楽しむことができたのですが、この「スクーティン・オン・ハードロック」での岩田さんの演奏は、本当に格好良かったです。終始クールな表情のままですが、まるで別の生き物のような左手の動き!どうしたら、あんなに指が動くんだろう。驚愕です∑(゚Д゚)

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 この曲が終わったところで休憩に入りましたが、いつもなら何分間の休憩なのかアナウンスされるところ、今回はただ単に「休憩に入る」ことだけが伝えられました。

 いつも、休憩時間にはステージ下まで行って、前半の後片付けや後半の準備などをされている赤嵜さんのところへ伺うのですが、前回の記事でも書いたとおり、何となく、そのような交流を抑制するような配慮が感じられたものですから、部隊側の事情を忖度しまして、やめておくことにしました。確かに、誰一人としてステージ下から隊員の皆さんに声掛けしている人はいなかったように思います。私がしばらく来れなかった間に何かそのような変化があったのかも知れません。

 

 さて、後半については、植田隊長自らの指揮により演奏が行われました。

 後半の口火を切ったのは「マーチ『プロヴァンスの風』」です。

 この曲は、2015年度全日本吹奏楽コンクールの課題曲でもあり、吹奏楽に携わる皆さんには大変馴染みのある曲だと思います。

 音楽隊の演奏会には、中高吹奏楽部の皆さんや、その関係者の方々も大勢いらっしゃることもあるのでしょう、吹奏楽コンクールの課題曲がプログラムに含まれていることが多いような気がします。

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 後半の2曲目は、ジブリアニメ「ハウルの動く城」の劇中、重要な場面ごとにアレンジされた曲を集めた「ハウルの動く城』ファンタジー」です。

 ジブリ作品は私も好きで、「ハウルの動く城」も観たのですが、ずいぶん前のことなので、細部は忘れてしまいました。演奏を聴きながら、あ、あの場面かな?などと記憶の断片を蘇らせつつ、この曲を楽しませていただきました。

 それにしても、いつも感じさせられることながら、音楽隊の演奏の幅は本当に広いですよね。以前、海自音楽隊出身のジャズトランペッター・類家心平さんがゲスト出演された際に、仰っていたことを思い出します。「聴いている皆さんには分からないことかも知れませんが、例えばジャズとクラシックでは、演奏方法が全く違うんです。にもかかわらず、あらゆるジャンルの音楽を事もなげに演奏されている音楽隊の皆さんには心からの敬意を表します。」

 本当にすごいことなんだな、と思います。

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 さて、後半の3曲目は、再び三宅由佳莉さんの歌唱となります。「明日への手紙」…未来の自分への励ましのような歌詞が心に沁みる歌…荒木さんからはそのような説明がありました。

 そして、前半の三宅さんの歌唱の時のように、ステージ上には大きな変化が、多くの隊員の皆さんが右袖からはけて行かれます。そしてステージに向かって右端におられた岩田さんも、ベースを横たえて右袖に消えてしまったのですが、程なく、別のベースを抱えて左袖から登場、ステージ左端には太田さんのピアノ、荒木さんのハープ、そして岩田さんのベースがコンパクトに並んでいます。そして、赤嵜さんらパーカッションメンバーも。今回の演奏会では、このような小編成でのしっとりとした曲での三宅さんの歌唱を通じてメッセージを発信することが企図されているようです。

 そして、三宅由佳莉さんが歌われるこの曲、本当に心に沁みました。この曲を通じて、困難を抱える多くの人の支えになりたいという気持ちが込められているのだと思いますが、決して押し付けがましくなることなく、自然に寄り添うような形で支えていきたいという思いが伝わってくる気がしました。

 支えを必要とする人々には、「私が支えます、何でも言ってください」という情熱を受け止めるエネルギーさえ残っていない場合が少なくありません。ですから、いつも、負担にならないように、気づいたら支えてもらっていたことを知るような支え方を模索しているのではないでしょうか。そんなことを感じさせる演奏でした。

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 そして、この演奏会の締めは、多くの人に愛されているガーシュインの代表作の一つ「パリのアメリカ人」です。楽曲で遊んでいるような、とても楽しい曲、「音楽」という言葉がまさにピッタリハマります。

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 以上でプログラム上の演目は終了ですが、もちろんそれで終わるとは誰も考えてはいません。植田隊長が左袖に消えた後も、長い長い拍手が続きます。程なく再び登場された植田隊長は、拍手に応え、また、バンドを讃えて自らも拍手を送り、そしてまた袖へと戻ってしまいます。それでも鳴り止まない盛大な拍手に応えてみたび登場され、指揮台の上られたので、ようやく長い拍手はおさまりました。

 ここで、ひょっとして、「軍艦」前にもう1曲、三宅さんの歌とかあるかも、と思いました。プログラム上の演目は8曲ですから、少し余裕があるのではないかと思ったからです。

 でも、サプライズはなく、ここは定番どおり勇壮な「軍艦」の演奏が始まり、会場も盛り上がります。すぐに会場全体から手拍子が湧き上がり、最後まで続きました。

 やっぱりこれを聴かないと、落ち着きません。何度聴いても飽きない。いいものはいいとしか言いようがありません。サプライズはなかったけれど、満足のいく演奏会でした。次、聴けるのはいつかな( ´Д`)y━・~~

 

 ところで、番外編的に書きますけど、今回のプログラム、三宅由佳莉さんは2曲歌われましたが、テノール・橋本晃作さんはどうしたのだ? 皆さんそう思いますよね。

 開演前に、jubijubizhyさんと談笑していた際、プログラムを指差して、「何か感じませんか?」私はピンと来なかったので「はて?」と考えていると、「橋本さんの名前がないじゃなですか」「あ、なるほど…まさか、退職?」「なわけないでしょ!」

 jubijubizhyさんが情報網を駆使して調べたところ、なんと、演奏会の前日、橋本晃作さんは、練習艦隊音楽隊の一員として、日本を後にしたとのことです。

 はぁー、早めに行けてよかったねーと思うと同時に、三宅さんが練習艦隊所属だった間、多くの皆さんの助けを借りながらフォロー記事を書いたことを思い出しました。みんなで寝不足になりましたね。今回は、あそこまでフォローはできないと思いますが、橋本さんの海外での活躍ぶりはたいへん気になりますので、可能な限り追いかけてみたいと思います。