あれこれdiary

海自OBによる偏見御免徒然あれこれdiary

河野大臣のSF司令部視察

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 河野大臣とは言うまでもなく、現在防衛大臣の職に就かれている河野太郎さんのことです。父君である河野洋平さんが、いわゆる「従軍慰安婦」問題について官房長官時代に出された「河野談話」が、我が国の良識ある人々の間では大変な不興を買っていることから、前職である外務大臣に就任された際には、大変なアレルギー反応が起きました。でも、その後の活躍ぶりは、皆さんご存知のとおりです。防衛大臣になられてからも、その機敏、適切かつ断固たる意思決定には多くの賛辞と強い支持が寄せられています。もちろん閣僚ですから、それらは個人的なスタンドプレーではなく、内閣の意思を反映したものなのでしょうけれど、それを如何に効果的にショウアップするかに心を砕いておられるに違いありません。

 因みに、「河野談話」については、某隣国が都合の良いようにつまみ食いして反日活動の根拠としていることもあり、様々誤解を呼んでいる面がありますが、その発表までのプロセスを見れば、我が国らしい誠実さに基づいていることがよく分かります。河野太郎さんの公式サイトに解説が載っていますのでお読みいただけると幸いです。

www.taro.org

 そんな河野大臣ですが、Twitterでのつぶやきも頻繁にされています。それがまた、型にはまらず、ウィットに富んでいるものですから、幅広い人気を集め、現在のフォロワー数は160万人以上です。

 いつだったか、ご自身の講演会の予定をツイートされた際に「暇なら私も行きたいくらいだ」なんて呟かれていました。超多忙な毎日のはずなのに、このようなツイートがサラッとできてしまう所に魅力を感じますし、それは心も頭も全然余裕だということを言外に示して、私たち国民を安心させる効果もあるように思います。 

 河野大臣はYouTubeでのライブ配信も時々されています。私も一度拝見したのですが、広く国民から寄せられる質問に丁寧に答えておられました。そんな質問の一つに確か「政治家になるためには、どのような努力をすれば良いですか」というようなものがありました。河野さんは、こう答えました(記憶頼りなので正確ではありません)

 政治家になることは目的じゃない、手段だ。大切なことは、何になるかではなく、この国のため、世界のため、自分が何をしたいのか、どんな国、どんな世界にしていたいのかというビジョンだ。まずそれをはっきりさせなさい。それを実現するために政治家になることが必要なら目指せばいい。でも、自分の目標を実現する方法は数限りなくある。事業を始める、NPOを立ち上げる、地道に草の根運動をする等々。目的がないのに政治家を目指しても、人生を棒に振るだけだ。

 実に正論ですし、ともすれば忘れがちな大切な事です。河野さんは、ご自身の目標を達成するために政治家の道を選ばれたということがよく分かります。だからこそ、信頼と支持の輪が広がっているのでしょう。

 かく言う私も160万分の1なのもですから、毎日のように河野大臣の呟きが届きます。

 昨日の呟きが、タイトルにもあるSF司令部視察でした。

 え?「自衛艦隊司令部」じゃないの? その通りです。

 海上自衛隊では、自衛艦隊のことを「SF」と呼びます。サイエンスフィクションではありません。「Selfdefense Fleet」の略です。 帝国海軍で連合艦隊のことを「GF」(Grand Fleet)と呼んでいたのと似ていますね。尤も、これはどうも和製英語のようで、英語圏では「Combined Fleet」とされています。言語に忠実に表記するならば「CF」でしょうか。

 それはともかく、SF隷下の部隊も、「EF(Escort Fleet」/護衛艦隊)、「AF(fleet Air Force/航空集団)」、「SBF(SuBmarine Fleet/潜水艦隊」)などの略称で呼ばれていますし、海自内部では全く違和感なく定着しています。近年は統合運用が推進されていますので、陸空自の特に作戦畑にも浸透していると思います。

 そのSF司令部に、この時期河野大臣が視察された理由は、当然のことながら尖閣を巡る緊張の高まりを受けたものでしょう。もちろん、ホットになり兼ねない東シナ海情勢のもと、今後様々な方面にわたり機微な報告を行うであろうSF司令部の視察を行い、その活動状況を把握することは、ご自身の判断をよりシャープなものとする上で役立つと思います。でもそれだけではないでしょう。外務大臣防衛大臣を歴任し、安倍内閣の中でも重鎮と言える河野さんが、この時期にSF司令部を視察すること自体が関係国への明確なメッセージにもなります。私はテレビも新聞も信頼に足るメディアだとは思っていませんので完全に断絶しておりますから、今回の視察が大手メディアで取り上げられたかどうかは承知しませんが、おそらく全くフォローされていないのではないでしょうか。そんなことは先刻ご承知であるからこそ、ご自身の活動を自ら発信されるためにTwitterを使っておられるのだと思います。

 SF司令部は、私も現役時代に2度、通算3年ほど勤務した場所ですので、写真を見て大変懐かしく思いました。

 最初の勤務は3等海佐の時で、幕僚のコード番号が2桁のいわゆる「子幕僚」の頃でしたから、それはそれは忙しく、幕僚室のソファで寝る日々が2年も続いたのですが、ものすごくやりがいもあり、大変良い思い出になっています。海自創設以来初めての「海警行動(海上における警備行動)」が発令されたのもその時でした。毎年行われる海演(海上自衛隊演習)では必ず演練する「海警行動」でしたが、戦後の我が国では決して発令されることはないだろう、という暗黙の共通認識もありました。それは、我が国の為政者に対する諦めでもありましたが、それでもなお、自らを研ぎ澄ましておかなければとの思いで皆研鑽を積んできたのです。

 ですから、あっという間に持ち回り閣議で「海警行動」が発令された時には正直驚きましたが、極めてスムーズに作戦が遂行されたのは、平素の演練の賜物であったと言えるでしょう。訓練とは実に大切なものです。

 それにしても、全く現実味のなかった「海警行動」が、当たり前のように発動された背景は何でしょう。

 能登半島沖で、海自のP3ーC哨戒機が北朝鮮工作船と思しき不審船を発見したことが事の発端でした。北方へ高速で逃走を図る当該船舶を連続追尾するためには、海保の巡視船の到着を待ついとまがありませんでしたし、船足的にも付近に展開していた海自護衛艦の投入が不可欠でした。それでも、そこまでして断固たる対応を取ることを政府として決断した背景には、社民党などが「あり得ない造り話」と吹聴していた拉致問題が現実の事件であったことが明るみに出て以来の、我が国の世論の大きな変化があったのは間違いないと思います。

 国民から権能を付託されている政府ではありますが、対外的に実力を行使するには、国民の支持が不可欠です。私は以前から、国民の理解と支持というものが防衛力の大きな要素であると書いてきましたが、それはこのような文脈からも明らかでしょう。

 ですから、音楽隊が日々果たしている役割は極めて重要なのだと思います。

 今回は、河野大臣のツイートからの連想記事となりました。