あれこれdiary

海自OBによる偏見御免徒然あれこれdiary

感染力と致死率(2)

 前回の続きです。でも、今回はちょっと視点が異なります。

 中国武漢市を発生源とする今回の新コロナウイルスについては、当初から「生物兵器」の漏洩あるいは実験ではないのかとの意見も囁かれています。

 私も、その点については否定できないとの立場に立っています。

 以後の記述は、今回の感染事態がそのような「生物兵器」の実験であるという仮説に基づいたものですが、何らの根拠もないことをお断りしておきます。

 まず、「生物兵器」という言葉自体に馴染みのない方もおられると思いますので、そこから始めたいと思います。

 軍事作戦には、様々な様相がありますが、通常兵器での作戦の他に「CBR戦」あるいは「NBC戦」と呼ばれるものがあります。

 「CBR戦」は、Chemical(化学)、Biological(生物)、Radioactive(放射線)を駆使した戦いを指し、「NBC戦」は、「Radioacitive」を「Nuclear(核)」と、より直截的な表現をしているものです。

 陸上自衛隊には、これらの脅威に対応する部隊として「特殊武器防護隊」が置かれて おり、これまで、オウム真理教によるサリンテロや東海村での臨界事故対応、東日本大震災での福島原発対応などで活躍しました。「化学武器防護隊」を解消発展させた部隊です。

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 所属隊員の職種は「化学科」です。もともと化学兵器への対応を念頭に創られた職種ですが、時代を下るに連れて脅威と認識されるに至った核・生物兵器への対処を含め「特殊武器防護」というカテゴリーが部隊編成において先行している感じです。

 そんな「化学科」を紹介する動画が陸上自衛隊から提供されています。

www.youtube.com

 「生物兵器」とは、一部の細菌やウイルスの持つ致死性に着目して、これを兵器として活用しようとするもので、それらを用いた戦闘を「生物戦」と呼びますが、国際紛争の際に適用されるジュネーブ条約において使用が禁止されています。

 詳細は存じませんが、爾後の管理が困難であることに加え、そもそも当事国の兵員同士が直截戦闘を繰り広げることで、その結果を相互に受け入れることができるものを、疾病兵器などを持ち込むのは卑怯だろうというのがその理由だと思います。

 それでもなおかつ、多くの国で生物兵器の研究が行われています。我が国も同じです。それは、自国が生物兵器を使用しないとしても、他国が使用しないという保障にはならないため、仮に生物兵器が使用された場合、どのように対処すべきかを研究しておく必要があるからです。

 でも、国によっては、その研究の結果、「大変効率の良い兵器」と認識し、これを使用することを前提に研究を進めている場合もあるかもしれません。

 また、国際テロ組織にとっては、非常に魅力的な兵器だと思います。何しろ、化学兵器は基本的に使用された地域に被害が極限されるのに比べ、生物兵器は作戦を発動してから、成果が現れるまでに一定の時間を要するため、感染者が多方面に移動してその効力を広めますし、時間の経過は実行犯の特定を困難にし、その逃亡も容易にします。国際テロ組織にしてみれば、夢のような兵器かもしれません。

 近年、中国発の「新ウイルス」が何度も報告されていますが、仮にこれらが生物兵器の実験だったとしても、それが中国の仕業だとは思えません。敢えて自国開発のウイルスを自国発症にする必要があるとは思えないからです。実験である場合、世界中のどこにでもその発生源を設定することが可能です。

 生物兵器としての実験を行うのならば、何となくみんなが「なるほど」と納得しやすい場所を発生源として選定するに違いありません。その意味で、これまで何度も新型ウイルスの発生源とされてきた中国は、またとない候補地でしょう。場合によっては、これまで発生したウイルスも全て何者かによって作為されたものだったかもしれません。

 より重要なのは、今回の騒動が「実験」だったとするならば、その目的が、感染拡大の様相と、各国の対応の状況を確認することだったのではないかということです。

 その場合、より高い致死率の生物兵器をすでに保有し、その致死率を低く抑えたウイルスを用いての実験である可能性があると思われるからです。

 今回の事態を、そのような観点で把握するならば、やはり最初の兆候を捉えた段階でいかに徹底的に防疫フェーズに移行するかが、国民の生死を分ける鍵になるでしょう。

 国家の非常事態というものはいつでもあり得るし、その際には有無を言わせぬ大権が発動されるのもやむを得ない。そういった認識が共有されることが、今の時代を生き延びるためには必要であると思います。