暑いですねー(≧∀≦) 水分補給、しっかりやってますか?
ここ数日、軽い熱中症(かな?)で、記事を書く気力に欠けていたものですから、「ちょっと夏休み!」とさせていただきました(╹◡╹) 鎌倉での横音演奏会のあと、ぼんぼり祭りをじっくり見て回ったのですが、水分補給をすっかり忘れていたものですから、気付いた時には体が完全に干上がっていました。帰宅して風呂に入る前に体重計に乗ったらなんと2Kgも減ってました。そんなに水分が抜けるの? 驚きです。
さて、本題です。
先日「東京消防庁音楽隊の創立70周年記念コンサート」という記事を書きました。
それに引き続きの「70周年記念特別演奏会」を聴く機会を得ることができたのは大変幸運なことでした。
会場となった東京芸術劇場のコンサートホールを訪れるのは今回が初めてでしたが、ご覧のようにステージ奥には大変美しく印象的なフォルムを持つパイプオルガンが設えられていて、ライティングによって自在にその色を変化させます。色彩による視覚的な要素を加えることで、音楽表現の幅が広がるというわけです。
すごいのは、その個性的なフォルムが、決して過度の自己主張をして音楽への集中力を奪うことはしないのに、しっかりとした存在感だけは保っていることです。デザインというものの奥深さを感じます。
さて、先日のコンサートと今回の演奏会、実は全く同じプログラム構成で、前回の「コンサート」がプレ公演、今回の「特別演奏会」が本番という位置付けだったようです。ちなみに配布されたパンフレットも同じです(≧∀≦)
でも、本番だけあって、今回は冒頭にサプライズプログラムが用意されていました。小池百合子東京都知事が登場して挨拶をされたのです。それだけ、重要な節目を祝う特別演奏会だということでしょう。
挨拶の後、小池都知事から東京消防庁音楽隊に対し「感謝状」の贈呈が行われ、更には、来年に迫る東京オリンピックで、自衛隊の音楽隊などとともに演奏支援に当たる同音楽隊に対し、ファンファーレトランペットが贈呈されました。
そして、なんと小池都知事の指揮で、同音楽隊による、前回の東京オリンピックファンファーレの演奏が行われました。
なかなか、趣向を凝らした贈呈式でした。小池都知事が大きな拍手に送られながら左袖へと退場され、演奏会の始まりです。
同じプログラムではありますが、前回はスマホでの動画撮影をしながらの鑑賞でしたから、生演奏に集中することがなかなかできませんでした。今回は、前回のプログラムを思い出しつつ、音楽隊の演奏やカラーガーズ隊の演技に、思う存分意識を集中させることができました。
「ネタバレ」という言葉がありますが、実は映画でも、初めて観る時よりも、2回目、3回目に観る方が、より深い感動を味わうことができるのだと聞いたことがあります。初めて観る時には、ストーリーを理解することに意識が向いてしまうからなんだと思います。
その意味では、海自の音楽隊が得意とする「サプライズ」企画は別として、演奏会のプログラム構成などは予め把握しておいた方がより楽しめるということも言えるでしょうし、事前にプログラム曲を聴いて予習しておいたほうが、実際の演奏を深く味わうことができるのではないかと思います。
プログラムを見てみましょう。
第1部
①祝典のための序曲(C.T.スミス)
②美中の美(J.P.スーザ)
⑥孤独の戦士(式町水晶)
第一部の前半は、誰の耳にもよく馴染んだ美しいメロディーのオンパレードです。東京消防庁音楽隊の質の高い演奏が、私たちを心ゆくまで楽しませてくれました。私は門外漢ですから、悲しいかな演奏技術などを語る言葉を持ちません。いつも自分の個人的な感性でしか語ることができないのですが、先回と今回の演奏会を通じて感じたのは、丁寧な音作りでした。特に、インパクトのあるパート以外の部分を優しく包み込むように美しく仕上げているからこそ、ハイインパクトのパートが活きているように感じられました。
そして後半、赤色の部分は、ゲストプレイヤーであるヴァイオリニスト・式町水晶(しきまち・みずき)さんを迎えてのジョイントコンサートとなりました。
1996年北海道生まれの式町さんは、3歳の時に脳性麻痺と診断され、リハビリのために4歳からヴァイオリンを始められたのだそうです。そのような目的でヴァイオリンを始めた彼が、キングレコードのレーベルを背負うプロヴァイオリニストとして活躍されていることに驚かされます。ステージ上の式町さんは、そのような説明を聞かなければ、生まれながらの健常者として順風満帆の人生を歩んでこられたようにしか見えません。プロになることを決意し、着実に実力を伸ばしてその夢を実現するために、どれほどの努力が払われたのでしょう。
⑥孤独の戦士 は、式町さんが12歳の時に作曲されたものです。
脳性麻痺に冒されていたことから、身体動作が健常児とは異なっていたのでしょう。学校での虐めに遭い、また、医師からは遠からず失明する可能性があることを宣告され、孤独と出口の見えない闇を感じられていたと、さらっと仰っておられましたが、そのような環境に置かれた12歳の少年が、平静な心を保てるとは到底思えません。自らの心象風景を曲に仮託することで、内に抱える葛藤を昇華されたのがこの曲なのではないでしょうか。
当時、刑務所での慰問演奏でこの曲を演奏されたこともご自分で紹介されていましたが、自らの犯した罪を償い、再び社会に受け入れてもらいたいと切望しながらも、そこに横わるであろうことが予期される厚い壁に怯み、慄く受刑者の心には、同じように深く絶望的な孤独を背負いつつ、そこから自分の足で歩むことを静かに決意した少年の雄々しい感性が救いとして響いたに違いないと思います。
プログラムには上記の3曲しか記されていませんが、第一部の最終曲である「情熱大陸」終演後、の熱烈な喝采に応えて演奏された曲がもう一つあります。
式町さんの演奏は、基本的にエレクトリックヴァイオリンなのですが、アンコール曲はアコースティックヴァイオリンで演奏されました。このヴァイオリンがもう一つの主役と言っても良いでしょう。その名を「津波ヴァイオリン」と言います。
そうなんです、東日本大震災で東北地方の太平洋岸を襲った大津波。そこに瓦礫となって流れ着いた多くの木材。それらの中から、ヴァイオリンの筐体として使えるものを選び抜き、製作されたのが「津波ヴァイオリン」なのです。
式町さんは、津波ヴァイオリンプロジェクトで製作された千本のヴァイオリンの一つを授かりました。ヴァイオリンには、上下の響板の間を支える「魂柱(こんちゅう)」というパーツがあります。
津波ヴァイオリンの魂柱には、陸前高田の「奇跡の一本松」が使用されているのだそうです。魂の柱。洋楽器のパーツにそのような名称が冠されていることにも驚きますが、あの大災害で尊い命を落とされた皆様の思いを一身に背負って立ち続けたのだと、私たちに思わせたあの「一本松」が、魂の柱に姿を変え、千本の津波ヴァイオリンの音色を支え続けるのです。
式町さんが、津波ヴァイオリンで演奏して下さったのは、震災応援歌の一つとして広く愛されている「花は咲く」でした。このような演奏を2度までも生演奏で聴くことができたことに、ただただ感謝するばかりです。式町さん、素敵な演奏とエピソードをありがとうございました。
第二部
①ファイアーマンスピリットマーチ(服部克久)
②塔の上のラプンツェル・メドレー(星出尚志・編曲)
③オリンピック・ファンファーレとテーマ(J.ウィリアムズ)
④風が吹いている(水野良樹)
⑤スーパーマンのテーマ(J.ウィリアムズ)
第二部は、東京2020を意識し、オリンピックを軸に組み立てられたプログラム構成になっています。ファイアーマンスピリットマーチは、そのタイトルからもわかるように、火災現場に立ち向かう消防官を讃える勇壮な行進曲です。海自の音楽隊で言えば行進曲「軍艦」のような位置付けでしょうか。華やかなカラーガーズ隊の演技とともに演奏されるこの曲が終わったところで、MCの女性消防官の方からカラーガーズ隊の沿革や活動状況などについて説明がありました。その間、プログラムにはありませんが、音楽隊が静かに奏でるBGMは、「ゆず」の「栄光の架橋」です。そして、MCのナレーションが終わり「それでは、次の演技まで、音楽隊の演奏でお楽しみください」と締めくくったタイミングで、それまでグッと抑えていた音量を上げて曲のサビに入ります。曲もナレーションも最大限に生かす素敵な演出でした。
東京消防庁音楽隊のステージを拝見して強く印象に残っているのは、やはりカラーガーズ隊とのコラボです。必ず一緒に演奏・演技が行われるわけではないらしいのですが、両者相まってのステージ作りが一つのイメージとして出来上がっているのだと思います。カラーガーズ隊は、旗の演技だけでなく、所々に徒手でのダンスを入れたりして、その演技は多彩です。
自衛隊の音楽隊の演奏会をずっと見てきたからかも知れませんが、カラーガーズ隊の中から歌を歌う隊員が現れたら、ステージに新たな華が添えられるのではないかと思いました。
さて、第二部のアンコール曲は、大河ドラマ「韋駄天」のメインテーマ、これもオリンピック・パラリンピックに因んでの選曲でした。
そして、本当のフィナーレは、前回の東京オリンピックマーチが高らかに演奏される中、カラーガーズ隊のみなさんが1階客席の間の通路を二手に別れて登場し、客席に向き直って手拍子を求め、さらにステージ上に上がって演技を披露し、最後は手を振りながら左右にはけていくというものでした。
とても素晴らしい演奏会でした。
ところで、もうお気付きの方もおられるかも知れませんが、私が2度にわたり記念演奏会を聴くことができたのは、このブログを読んで下さっている「潜水士」さんのおかげなんです。東京消防庁の現役幹部消防官である「潜水士」さんは、広報活動にも一部関与されている関係で、ご自身の裁量に託された招待枠を、私のために行使して下さったのです。感謝の言葉もありません。おかげさまで、初めて自衛隊以外の音楽隊の演奏会を生で聴き、こうして記事にする機会に恵まれました。
終演後、「潜水士」さんとは、池袋駅の近くにある居酒屋(名前忘れた(≧∀≦))で、焼き鳥をつまみに2時間ほど酌み交わしました。ほとんど初対面に近い間柄ですが、旧知の友のように忌憚のない話で盛り上がり、楽しいひと時を過ごすことができました。
本当に多くの方々に、様々な形で支えられているのだということを改めて実感しましたし、あれこれ思い悩み、試行錯誤を繰り返しながらも、このブログを続けてきてよかったと思った次第です。