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海自OBによる偏見御免徒然あれこれdiary

知将の退官

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 統合幕僚長の河野克俊海将が退官され、本日付、陸上幕僚長・山崎幸二陸将が統合幕僚長に就任されます。

 河野海将の統幕長在任は4年半。通常2年程度で交代となることを考えると、極めて異例の長さだということが言えます。統合幕僚長と言えども、定年年齢は60歳ですが、定年延長の措置が取られて61〜62歳で退官というのが一般的だと思います。

 ところが、河野海将在任期間中、この定年延長措置が3度に渡り行われた結果、64歳での退官となりました。

 何故でしょう。

 河野さんは、私が江田島幹部候補生学校で学んでいた時の「幹事付」でした。「幹事付」というのは、学生隊幹事の下で、幹部候補生の生活全般について厳しく指導する立場にある若い幹部です。幹事付は2名おり、「赤鬼」「青鬼」とも呼ばれています。

 そんな鬼の一匹だった河野さんですが、私たちは心から慕っていました。

 海幕長から統幕長への就任は望んでいなかったとも聞きますが、我が国を取り巻く安全保障環境の厳しさが、河野海将を必要としていたのではないかと思います。

 こんなに長期にわたる在任期間は、安部総理からの厚い信頼によるものだとも言われていますが、十分頷ける話だと思います。何しろ、この間様々な問題が浮上し、通常であれば引責辞任に追い込まれるようなことが一再ではなかったのですから。

 「ドラえもん」の渾名を持つ河野さんは、それこそ何でもポケットからいろんなものを取り出しては困難な問題を解決する手段を提供しておられたのではないかと思います。その背景にあるのは、米軍、特に米海軍からの絶大なる信頼にあると思います。決して英語が流暢に話せる訳でもないのに、能力と人格は言葉の壁を超えて伝わるということでしょう。

 私が心から尊敬する先輩の退官にあたり、記事を書かずにはいられませんでした。

 河野さん、長期にわたる重責、お疲れ様でした。