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海自OBによる偏見御免徒然あれこれdiary

東京音楽隊の「宇宙戦艦ヤマト」あれこれ

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 松本零士さん原作による「宇宙戦艦ヤマト」は、1974年にテレビアニメとして放送されるや、その壮大なストーリーが視聴者の心を捉え、空前の大ブームが巻き起こりました。当時高校1年生だった私も、週1回の放送が待ちきれず、次の放送までの間には、ワープ航法の原理や、タキオン粒子のことを理解するために、学校の勉強そっちのけで「宇宙論」や「相対性理論」について書かれた「ブルーバックス」シリーズの科学新書を読み漁ったものです。理論物理学への子供達の興味を掘り起こしたという意味でも、画期的な作品だったと思います。

 「宇宙戦艦ヤマト」が大ヒットしたのは、もちろん、壮大なストーリーと、そこに織り込まれた、大いなるものへの献身の覚悟や、悲壮感を乗り越えた勇気、信頼と敬意といった価値観への強い共感が得られたからだと思いますが、同時に、勇壮なテーマ曲をはじめ、劇中で使用された様々な楽曲のいずれもが素晴らしい作品ばかりだったことが大きいのではないでしょうか。

 テレビ放送から40年以上にわたり、作品自体も、そしてその楽曲も、ともに人気を保ち続け、それらの続編が次々と製作されているのは驚くべきことです。

 東音の名MC、荒木美佳さんが「宇宙戦艦ヤマト」の演奏の際にいつも紹介されているとおり、海上自衛隊では、「必ずここへ帰ってくる」という歌詞に肖って、艦艇部隊が海外での任務に赴く際の出航行事などでよく演奏されていますし、演奏会や自衛隊音楽まつりなどでも度々演奏されてきました。もちろん、陸自や空自の音楽隊による演奏も行われていますが、やはり海上自衛隊の制服を着用した隊員による演奏が、見た目にもよくマッチしているように思えます。

 先日の「こころの歌謡選手権大会」で伴奏を務めた東京音楽隊によるスペシャルライブでも披露されましたが、斎藤さん情報に基づき先行記事で書いたとおり、ニューアレンジでの演奏でした(特にボーカル)。

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 そこで、従来のアレンジとの比較を簡単にしてみようかなと思います。

 東京音楽隊による「宇宙戦艦ヤマト」の演奏動画は数々ありますが、私的には、昨年のニコ超2017ライブと横浜開港記念祭ライブで演奏された組曲仕立ての演奏が素敵だなと思っていますので、ニコ超ライブからのトリミング動画を作ってみました。

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 三宅由佳莉さんのスキャットによる「無限に広がる大宇宙」は、動画へのコメントなどを見ると「宇宙戦艦ヤマト」の前奏だと思ってらっしゃる方もおられるようですが、みなさまご案内のとおり単独の楽曲です。

 三宅さんの透き通った伸びのあるソプラノが、オリジナルとはまた一味違った壮大な宇宙観と、本来無機質な宇宙空間を満たして広がる、生命への限りない慈しみのような大いなる愛を感じさせてくれます。

 続く「宇宙戦艦ヤマト」は、あの力強いイントロが始まった瞬間に心が持って行かれますよね。そして、東京音楽隊による演奏の「売り」は、何と言っても川上良司さんの歌でしょう。こんなにハマる声質の隊員がいてくれることは、何より東京音楽隊の強みだと思います。

 そして、「新コスモタイガー」。コスモタイガーとは、オリジナル「ヤマト」で活躍した艦載戦闘機「ブラックタイガー」の後継機として「さらば宇宙戦艦ヤマト」以降の全作品に登場する戦闘機で、その性能向上型が「新コスモタイガー」というわけです。いや、曲の話でしたね(≧∀≦) 心の奥の方から弥が上にも士気が高まるのを感じさせてくれるこの曲、コアなファンの間では「ワンダバ」が入ることで曲本来の美しさが損なわれるとの評価が多いようです。東京音楽隊も、もちろんそこは承知していると思いますが、芸術性を犠牲にしてでも、より多くの聴衆に受け入れられる演奏を旨とする彼らは、エンターテインメント性に優る「ワンダバ」入りを演奏したものと思われます。「ワンダバ合唱団」もウケてますよね。

 最後に演奏されたのが、「大河ヤマトのテーマ」。熾烈な戦闘を繰り広げ、最終的に勝利を得たシーンを念頭にお聴きください。生死を賭けた戦いで頂点に達していた昂奮が、勝利を得たことへの高揚感に置きかわりつつあるなか、胸中に萌し始めた多くの友を失ったことへの哀しみをも使命感に転化して前へ進もうとする決意のようなものを感じさせる曲です。

 

 それでは、今回「こころの歌謡選手権大会」のスペシャルライブで披露された東京音楽隊版「宇宙戦艦ヤマト」ニューバージョンを見てみましょう。

 TAK-CHANさんから送って頂いたDVDが未だ私のPCで再生できず、現在苦戦中ということもあり、YouTubeを検索したところ、動画が見つかりました。FUJI20171118さん、ありがとうございます。

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 なるほど!

 以前、このスペシャルライブをご覧になった斎藤さんからの情報を元に、「東京音楽隊の『宇宙戦艦ヤマト』ニューアレンジ」という記事を書きましたが、そこに綴った文言が、映像を見ることでよく理解できました。

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 このアレンジが、「こころの歌謡選手権」スペシャルライブのためだけのものなのか、以後の演奏のオプションの一つになるのかは不明ですが、従来のアレンジを、よりドラマチックに仕上げた形になっていますので、カチッとした演奏会向けのアレンジのお披露目だったのではないかと思います。

 組曲仕立てにしたり、ドラマチックアレンジにしたり、東京音楽隊の「宇宙戦艦ヤマト」はこれからも目が離せないレパートリーですね。