先回の記事で、三宅由佳莉さんが初めてSMAPの番組「ベビスマ」に出演した際の動画を紹介しましたが、動画の中で、三宅さんは板割りで、空手二段の腕前を披露されました。
わざわざ ↑ この記事を見るのも面倒でしょうから、板割りのシーンだけ3コマ載せておきます。動画で見ると、突きの鋭さがより良くわかりますが、このコマだけでも雰囲気は伝わるでしょう。板を持ったスタッフの驚いた顔がよく物語っています。
これまで、何度か記事にも書きましたが、高校時代のダンス部での経験と、大学時代の空手道の鍛錬の成果が、現在の三宅さんの流麗かつキレのいいダンスパフォーマンスに結実しているのは間違いありません。
そこで今回は空手の話です。
日大芸術学部に入学したあと、将来のミュージカル女優を目指していた三宅由佳莉さんは、実はダンスサークルに入るつもりで部室を訪ねたらしいのですが、たまたまダンスサークルには誰もおらず、帰ろうとした時に、空手部の練習風景が目にとまり、そこで型の練習している女性部員の凛とした姿に心を打たれ、入部を決めたそうです。
もちろん、それまで空手の経験など全くないわけですから、当然白帯からのスタートです。入部して、初めて出場した試合では、開始数秒で負けてしまったそうです。相手の選手は黒帯ではなかったものの、色帯で、ご自分は真っ白帯の初試合なのですから、負けて当然だったにもかかわらず、それが悔しくで「そこまで泣くか」というほどの大泣きをされたそうです。
その悔しさをバネに、その後は毎日、いっしょうけんめい稽古に打ち込まれ、3年生の頃から試合でも勝ちはじめ、やがて全国大会で優勝するまでになったそうです。
いま、たった2行で書きましたが、この展開、凄くないですか?
負けて当然の勝負に負けた悔しさをバネに、自らを奮い立たせてその世界のトップをとるなどということは、普通の人間にはできません。そもそも、負けて当然の試合に負けたからといって、みんながびっくりするほど大泣きするような、強烈な負けじ魂を持っている人は本当に限られています。
そして、そのような強烈な負けじ魂こそが、三宅由佳莉さんをここまで成長させてくれた大きな要因であるとも言えるでしょう。
この写真は、平成20年8月、全日本空手道剛柔会の全国大会に出場された時の写真だそうです。手足の指先まで神経が行き渡り、次の瞬間どのような動きにも対応できるような潜在的躍動感を裡に秘めながらも安定した構え、相手を射殺すかのような鋭い目がまことに印象的ですね。
さて、空手の試合には「組み手」と「型」があります。「組み手」は、まさに相手との格闘ですが、「型」は、一人での演技が評価されます。
三宅由佳莉さんが、全国大会で優勝されたのは、個人の「型」の部だそうです。
いったい、どのような感じなのでしょうか?
下の動画は、三宅由佳莉さんではありません。平成24年11月にパリで行われた世界空手道選手権大会、「型の部」で優勝された宇佐美里香さんの映像です。
素晴らしくキレのある美しい演武に、会場全体が魅了されていくのがありありとわかります。決勝の相手は、地元フランスの選手であるにもかかわらず、会場全体が宇佐美選手と一体化したかのような大声援。日本人として、とても誇らしい気持ちにさせてくれるいい動画ですし、良いものは良いと認めるフランス人の民度の高さを感じさせてくれます。
三宅さんが全国大会で優勝した際も、きっとこんな感じだっただろうなと思います。
宇佐美さんも、間違いなく強烈な負けじ魂をお持ちのはずです。だからこそ世界大会で優勝できるまでに技を磨き続けることができたのでしょう。
もう一つ、印象的な動画をご紹介します。2010年世界空手道選手権大会団体女子決勝戦に進んだ日本のナショナルチームの3人。この日のため、6年間磨き続けてきた剛柔流の型「クルルンファ」で臨みます。ところが、対戦相手のベトナムチームにトラブルがあり、棄権により日本チームの優勝が決まりました。優勝したにも関わらず、自分たちの演武ができない悔しさに3人は泣き崩れます。彼女たちの血の滲むような修練の日々を、そして彼女たちの心中を誰よりも理解としている藤岡コーチが「せめて演武だけでもやらせて欲しい」と大会本部に掛け合い、その熱意に心を動かされた大会委員長が日本の演武を決断しました。そして、彼女たちの素晴らしい演技に会場は興奮に包まれ、終演後にはスタンディングオベーションでこの気迫溢れるチームを讃えます。大会役員たちの表情も感動に満たされているのが分かります。ぜひご覧ください。
実はこの「クルルンファ」、三宅由佳莉さんが得意とする型でもあります。そして、宇佐美さんやこの優勝チームの皆さんと三宅由佳莉さんには、空手を通して身につけた共通の精神的支柱が備わっているに違いないと思います。その意味で、女子空手の動画を紹介させて頂いた次第です。
さて、三宅さんですが、ご両親からは「負けず嫌いだね」と言われるそうです、幼少期から、負けじ魂をもって、一生懸命努力する子だったのでしょう。
それは、海上自衛隊に入隊されてからも、いささかも変わっていないようですね。
ご自分が思い描く歌姫の姿を目指し、秘めた思いを胸に、我々には想像もできないような、とてつもない努力を続けておられるのだと思います。
今回は、空手部でのエピソードを通じ、三宅由佳莉さんの強烈な負けじ魂について書いてみました。