あれこれdiary

海自OBによる偏見御免徒然あれこれdiary

「貴様ら、何をやらかした!?」

f:id:RetCapt1501:20171113004645j:plainパナマ国旗     ↓現在のパナマf:id:RetCapt1501:20171113004709j:plain

 遠洋練習航海の続きです…

 太平洋側からパナマ運河に入る前に、首都であるパナマ市のバルボア港に入港したときのことを思い出しました。記述が前後してしまいましたが、面白い経験だったので是非紹介したいと思います。

 遠洋練習航海で訪れた各寄港地では、必ずレセプションが行われました、ホスト国の歓迎レセプションと、日本側の返礼レセプションです。日本側の返礼レセプションは、わが艦隊がホストをする場合には「かとり」のヘリ甲板をレセプション会場にしつらえて行うのですが、首都や首都近郊に入港した場合には、現地の日本国大使主催のレセプションが行われました。

 パナマ市も首都ですので、日本国大使主催のレセプションが行われました。実習幹部は必ずしも全員が出席するわけではなく、歓迎レセプションと返礼レセプションのいずれかに出席するよう、予め予定が組まれています。ところがこのレセプションは、事前調整の手違いなのか、一部の非番の実習幹部にも急遽追加の出席指示があり、私も自由上陸の予定を変更して出席することになりました。ところが、担当幕僚も慌てていたのか、追加出席を指示すると、そそくさと先行してしまいました。

 でも、もともと参加予定ではなかった我々には、レセプションについて、なんの情報もありません。

 「出席せよはいいけどさ、何時から、何処でやるわけ?」

 不満を言ってても仕方がないので、タクシーに分乗してとりあえず日本大使館へ向かいました。確か土曜日だったと思います。大使館は閉鎖されていましたが、当直の方なのか、インターフォンに応答があり、事情を話すと、タクシーの運転手に行き先を説明してくれたので、なんとか会場に向かうことができました。やれやれです。

 レセプションはすでに始まっており、司令部幕僚からは、「なぜこんなに遅かったんだ」と言われましたが、「辿り着いただけでも奇跡です」と返しておきました。

 レセプションでは、いつも充実した時間を過ごすことができました。軍関係者だけでなく、ホスト国の各界の方々、現地日本人会の方々などと交流できるのは貴重な体験です。パナマでの日本大使主催レセプションもそうでした。

 アルコールが適度にまわってくると、みな饒舌になり、笑い声があちこちで上るようになってきます。

 パナマ公用語スペイン語です。アメリカ合衆国の強い影響下にあるにもかかわらず、英語はあまり通じません。街中ですと、完全に通じませんでした。1、2、3ですら英語は通じないので買い物で苦労しました。

 レセプションの最後の方で私がお相手していたのはパナマの方で、スペイン語オンリーでしたので、言っていることはよくわかりませんでしたが、なんとなく身振り手振りで意思疎通を図っていました。

 その方が、レセプションが終わったら、一緒について来いというのです(正確には、そんな素振りで何か喋ってました)。近くにいた同期たちも、来い来いと呼び集められ、6〜7人だったと思いますが、彼の後に従いました。

 ひょっとして、自宅に招いて飲み直そうということなのかな? などと思いながら歩くこと5〜6分くらいだったでしょうか、なんとなくいかめしい感じの施設のゲートを敬礼を受けながら入っていきます。敷地内には、パトライトを装備した車両や制服に身を包んだ隊員がたくさんいました。おそらく、パナマ市警察本部、あるいは国家警察軍司令部だと思います。おじさんは、そこの司令官なのでしょう。

   それにしても、 我々には逮捕される謂れはありませんでしたから、大変戸惑いました。

「何のために俺たちを連れて来たの????」

    彼が部下に何やら指示すると、直ちにパトカーが数台、我々の目の前に並びました。そして、身振りで「乗れ乗れ」と、なんと、パトカーで艦まで送り届けてくれるらしいのです(╹◡╹)

    せっかくのご厚意ですので、我々は遠慮なくパトカーに分乗しました。我々を乗せたパトカーは、パトライトを点灯し、サイレンを鳴らしながら、赤信号もなんのその、パナマの夜を疾走して、あっという間に艦隊が停泊する埠頭に到着しました。

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    驚いたのは、「かとり」の玄門当直と艦隊司令部の当直幕僚でした、何しろ、サイレンを鳴らしながらパトカーが何台も横付けし、そこから制服姿の実習幹部がゾロゾロ降りてくるのですから。

「貴様ら、何をやらかしたんだ?!」

   慌てている当直幕僚をみて、気の毒にも思いましたが、レセプション会場までの進出を丸投げされた仕返しができたようで、ちょっと気分の良い夜でした。