第7艦隊をご存知でしょうか。横須賀を事実上の母港とする、米海軍のナンバー・フリートの一つです。横須賀の土産物売り場などではこんなバッジも売ってて、人気あるようです。
上に掲げた意匠は第7艦隊のエンブレムですが上の方に3つの星が見えますよね。軍のエンブレムには、その部隊の指揮官の階級を示す印がつけられることが多いです。このエンブレムの3つの星は指揮官である第7艦隊司令官が海軍中将であることを示しています。現在の司令官は、今年9月12日付で就任したウィリアム・マーズ海軍中将です。
両肩に着けられているのが夏制服用の階級章ですが、金色の下地の上に錨のマークと星が3つあしらわれているのがわかりますよね。米海軍も海上自衛隊も、将官の階級章はこのように金色の下地を使用していることから、海自隊員の間では、将官(の階級)のことを一括りで「ベタ金」と呼んだりもします。敬意を伴う俗称であり、艦長のことを乗員同士の間で「オヤジ」と呼ぶのと似ているかも知れません。あ、書いててふと思ったのですが、女性の艦長のことも「オヤジ」って呼ぶのかな、まさかね(≧∀≦)
海軍中将のことを英語で、Vice Admiral(ヴァイス・アドミラル)と言いますが、別名Three Stars Admiral(三つ星提督)とも呼ばれます。因みに海軍大将(Admiral)はFour Stars Admiral(四つ星提督)、海軍少将(Rear Admiral)はTwo Stars Admiral(二つ星提督)となります。
自衛隊では「星」ではなく「桜」が使われていますが、将官については、やはり「三つ星(陸・海・空将)」とか「二つ星(陸・海・空将補)」と呼ばれることがよくあります。因みに、自衛官で大将に当たる「四つ星」をつけているのは、陸上幕僚長、海上幕僚長、航空幕僚長、そして最高位の自衛官である統合幕僚長、この4人だけです。
西太平洋からインド洋までをその責任エリアとする第7艦隊司令官やその幕僚組織である第7艦隊司令部は、艦隊の旗艦であり指揮統制艦である「ブルーリッジ」(LCC-19)に乗り組んでいます。一応洋上司令部ではありますが、地球の1/3近いエリアに展開する艦隊の指揮は衛星通信を介して行われますので、わざわざ洋上の戦闘群と行動を共にする必要はありません。老朽艦ということもあり、横須賀に係留されていることが比較的多いようです。
このブルーリッジは、毎年日本各地の港に入港しています。もちろん友好親善という目的もありますが、実際に入港することにより、それぞれの港で受けられるサービスを確認したり、周辺の社会インフラの情報をアップデートしたりもしていると思います。また、過去に米艦艇が入港したことのない港湾への入港実績づくり(チャレンジ)という目的もあるかも知れません。海軍艦艇の「チャレンジ」については、以前、関連記事を書きましたので、興味のある方はお読みください。
ブルーリッジが定係港である横須賀以外に入港する際には、自衛隊や地元の自治体、企業や関連団体などの関係者を多数招待しての艦上レセプションを開催しています。私も現役の頃、晴海に入港したブルーリッジに、某将官の代理として顔を出したことがありますが、上甲板のほぼ全部を会場として解放しての大規模なレセプションだったように記憶しています。
そして会場の一角に、軍楽隊の演奏スペースが確保され、終始奏楽でレセプションを盛り上げていました。どこの所属なのかわかりませんでしたが、海上自衛隊の感覚で行くと音楽隊は基地機能を担う地方総監の隷下部隊ですから、横須賀の海軍基地を総べる在日米海軍司令官の隷下部隊なんだろうと思っていました。
それはともかく、ブルーリッジ艦上の音楽隊には女性歌手の方がいて、いろんな歌で訪問客を楽しませてくれました。日本語の歌もあったと思います。バンドのメンバーも皆さん楽しそうで笑顔を絶やさず、おもてなしの心を感じました。
大阪港に入港したブルーリッジの艦上レセプションに招待された方が作られた動画がありましたので埋めておきます。あいにくの雨模様だったようですが、レセプション全体の様子や音楽隊の演奏、女性歌手による歌なども収録されていますので、雰囲気がよくわかると思います。
さて、ブルーリッジの艦上レセプションに顔を出したこと自体、私はすっかり忘れていたのですが、今回この記事を書き進めるうちに記憶が蘇りました。あれが7艦隊バンドなんじゃん!
先回の記事で、「横浜音祭り」のヨコスカ街なかミュージック連携ステージの全プログラムを楽しんできたことを報告しました。
横須賀に所在する自衛隊・米海軍の4つのチームがそれぞれのパフォーマンスを繰り広げたのですが、いずれも深く印象に残るプログラばかりでした。
そして、その最後を飾ったのが、米海軍第7艦隊音楽隊のビッグバンド「パシフィック・アンバサダーズ」による演奏会でした。スマホで撮影した動画を貼っておきます。
この時、スペシャルゲストとして登場したのがキャスリン・ウィトベック(Kathryn Whitbeck)さんでした。
スペシャルゲストと言っても、第7艦隊音楽隊に所属している女性歌手なのですが、「パシフィック・アンバサダーズ」のメンバーではないので、同バンドの演奏会としては「ゲスト」の位置付けというわけです。その彼女が披露した2曲め、「津軽海峡冬景色」には驚かされました。石川さゆりさんのオリジナルからの若干のアレンジはありましたが、綺麗な日本語で情感たっぷりに歌い上げ、会場を魅了しました。
この時思い出したのが、メキシコのマサトランでの練習艦隊音楽隊の演奏会で、三宅由佳莉さんが「ベサメ・ムーチョ」をスペイン語で歌い始めた時の悲鳴にも似た聴衆の大歓声でした。
やはり、自分たちの母国語で歌ってもらうと嬉しいし、感動するのは、どの国でも同じなんだなと思います。だからこそ、三宅さんもKathrynさんも、歌詞をちゃんと諳んじているんですね。
会場で何曲かの歌を聴かせていただき、Kathrynさんに、なんとも言えない魅力を感じました。会場に居合わせた方の多くが同じ感じだったのではないでしょうか。決して派手なパフォーマンスがあるわけでもないのに、忘れがたい強い印象を与える。なんだか三宅由佳莉さんに似ているような気がします。
それにしても、軍服を着崩すというのはなかなか大胆ですね。驚きました。この写真も「モンスター」さんからの提供です。
「いかづち」さんが、彼女の動向に関する情報を色々と集めて送ってくださいましたが、ブルーリッジの訓練航海プログラムでフィリピンやタイ、インドネシアなどを訪問して現地での演奏会や学校訪問プログラムなどを通じて友好親善に大きく寄与しているようですし、訪問先のラジオ番組などへの出演オファーもあり、7艦隊の域内各国で人気の歌手のようです。「いかづち」さんが発掘してくださった写真や動画を下に貼っておきますね。
下の動画は、おそらくインドネシアを訪問した際にテレビ番組に出演したものではないかと思います。ブンガワン・ソロ、昔六本木に同じ名前のインドネシア料理店がありました。ランチは手頃な料金で提供されていたので、防衛庁(当時)が六本木にあった頃には時々食べに行ってましたが、今もあるのかな?
Kathrynさんの歌、インドネシア語がうまいのかどうかはわかりようもないのですが、とても雰囲気づくりの上手な方だなぁと思います。
次の動画は、どうやらブルーリッジがフィリピンのマニラに入港するに先立ち、演奏会の開催を PRするための動画のようです。こちらはタガログ語での歌唱です。
見た目はもちろん全然違うんですけど、なんか、やっぱり持っている雰囲気が三宅さんに似ている気がします。
米海軍の音楽隊において、歌手隊員がどの程度いるのか、またどのようにして採用されていくのかなど、人事制度の細部はわかりませんが、いくつか読んだ記事などによれば、Kathrynさんはちょっと注目に値する存在のようです。
今回の演奏会でも、上の動画でも、ポピュラーな曲ばかりが歌われていますが、実は彼女も本格的なソプラノ歌手なんです。
彼女を完全フィーチャーしたアルバムも2枚ほど出されていますが、1枚は地声で歌った曲、そしてもう1枚はソプラノ曲が集められています。サンプルトラックを聴き比べると、まるで別人のようです。もちろん才能にも恵まれているのでしょうけれど、きっと努力の人なんだと思います。
そして、自衛隊の音楽隊と同じように、第7艦隊音楽隊も、日本国内のいろいろなイベントへの出演依頼が多いようですし、定期演奏会のようなものも行なっているようです。
近いところでは、12月18日(水)に横須賀芸術劇場において、海上自衛隊横須賀音楽隊とのジョイントコンサートが予定されています。Kathryn Whitbeckさんの歌声が聴けるかも知れませんし、ひょっとしたら三宅さんとのデュエットも? さぁどうなんでしょう。
申し込み方法等は下のリンクからどうぞ。22日締め切りです。