あれこれdiary

海自OBによる偏見御免徒然あれこれdiary

今年の遠洋練習航海

 

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洋上を征く練習艦隊旗艦「かしま」

 海上自衛隊は毎年、遠洋練習航海部隊を編成して様々なコースでの遠洋航海を実施しています。その主たる目的は、江田島にある海上自衛隊幹部候補生学校を卒業し、幹部(ほとんどが3等海尉、一部の大学院卒の技術幹部は2等海尉)に任官したばかりの青年士官(実習幹部)に、集中的な艦艇実習を施すことにありますが、外国を訪問することにより、国際性を身につけさせ、また訪問各国との友好親善を促進すると同時に、我が国の国力、自衛隊の精強性をアピールすることもまた、重要な目的であろうと考えます。ある意味、遠洋練習航海部隊は、海上自衛隊の化身でありますし、日本国の化身でもあるわけです。この部隊が、遠洋練習航海部隊という編成上の名称の他「日本国練習艦隊」の名を冠しているのはそのためでしょう。

 したがって、この部隊には、海上自衛隊が有するあらゆる機能を付与する必要があります。すなわち、戦闘から奏楽付きのレセプションまで、あらゆることが自前でできる能力ということです。練習艦「かしま」の他、必ず第一線の護衛艦が随伴するのは、この部隊に最も峻厳な機能である戦闘能力を付与している意味合いがありますし、司令部に警務官(司法警察職員たる自衛官、警察手帳を持っています)が配置されているのは、我が国の領土と見なされる艦内での法執行機能の付与に他なりません。また、音楽隊が置かれているのは、最も柔和な機能である奏楽能力を付与していることになります(尤も、音楽演奏は戦闘場面での士気の鼓舞や、洋上慰霊祭等で厳かさを醸し出すなど、その機能は実に多様です)。

 最近はちっとも書いてませんが、私自身が実習幹部として遠洋練習航海に参加した際のエピソード等をシリーズで書いていた時期がありました。

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 今では遠洋練習航海部隊が訪問先から情報発信をしてくるので、黴が生えたような私の思い出話より、最新の情報の方が俄然インパクトがあるよね、というのがシリーズを中断した理由の一つでもありました。でも、古い話でも私自身が体験したことですし、興味を持って読んでくださる方もおられましたので、また書いてみようかな、とは思っていました。そこへ、水交会から出国行事へのお誘いがあったものですから、参加申し込みをしたのです。

 ところが、そこへ飛び込んだのが三宅さんが今年の遠洋練習航海部隊に参加するという大ニュースでした。もう、自分の思い出話とか書いてる場合じゃないな、と方針を大転換して、今年の遠洋練習航海部隊をフォローすることにしました。

 すでに、5月17日(金)にプレスリリースされた訪問予定国(港)の情報については、先行記事で報告したとおりです。

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 今回は、各国(港)の訪問スケジュールと、今どの辺で何してる?というあたりを報告してみたいと思います。

 訪問スケジュールは下の図のようになっており、本日現在、最初の寄港地であるハワイのパールハーバーへ向け航行中です。パールハーバーでの滞在は6月3日(月)〜6月6日(木)の4日間ですが、6月2日(日)にはパールハーバー港外に到着し、錨泊しつつ入港前の諸手続きや艦体の「化粧直し」を行います。従って、横須賀を出港してからパールハーバーまでの所要日数は12日ということになり、現在その3分の1の行程を消化しているはずですから、下図の矢印で示したあたりを航行中と思われます。

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 現在、艦隊が適用している時刻帯は、L(リマ)と推定され、日本標準時より2時間早い時刻となります。つまり、日本が正午なら、艦隊は14時ということです。

 正確に計測しているわけではなく、上の模式図から大雑把に把握しただけですので結構な誤差はあると思いますが、明日中には次の時刻帯であるM(マイク)に入り、3時間先行、そしておそらく明後日、5月27日(月)か28日(火)に日付変更線を通過すると思われ、艦隊の時刻が24時間バックし、日本標準時より21時間遅れとなります。

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 時刻帯のことについては、先行記事で紹介したものがありますので、興味のある方は訪ねてみてください。

retcapt1501.hatenablog.com

 いずれにしましても、日本近海を離れた時点から、周囲360度何もない世界、晴れた夜なら、満天の星空がこれでもかというほど降り注ぐ世界に艦隊はいます。ただのお客さんとして乗っているなら最高ですね。もっとも、大型の豪華客船とは違い、護衛艦はとにかくよく揺れます。乗艦経験の少ない者にとっては、最初の1週間くらいは相当に辛いかもしれません。でも、その辛さがシーマンとしての基礎を作ってくれます。

 みんな頑張れ、三宅さんも頑張れ、楽園ハワイが待っている(╹◡╹)