昨年の2月6日(月)海上自衛隊東京音楽隊の室内楽アンサンブルと三宅由佳莉さんによる小さな演奏会が、有料老人ホーム「グランクレール馬事公苑」のラウンジで行われました。同施設のブログで紹介されているのを昨日見つけました。
演奏会の写真です。すごく豪華な施設ですね。
「三宅由佳莉さんの2017年レビュー」にも書き足しました。他にも何件か書き足してありますので、興味のある方は覗いてみて下さい。
さて、この施設は、東京音楽隊に隣接しており、いわば「ご近所さん」というわけで、同じ町内会同士と言ったところでしょうか。
陸・空自衛隊も含めて、他の音楽隊は、大きな基地や駐屯地の中に施設を構えていますので、周辺地区とのお付き合いは、基地や駐屯地のお仕事です。ところが、東京音楽隊は、上用賀に独立した敷地と施設を構える特異な存在です。ご近所とのお付き合いも自分たちで行っているのだと思います。
Googleマップで見ると、このような位置関係です。
本当に目と鼻の先ですね。
施設のブログには、
「…その有名な音楽隊の皆様がご好意で、毎年グランクレール馬事公苑のラウンジで
演奏を披露してくれています。」
と書いてありました。でも、誤解を招かないように言わせていただくと、ご近所だからと言って、東京音楽隊が「好意で」演奏会をやるわけにはいきません。部隊として演奏会を行う以上、法令に示された根拠に基づき、隊長命令をもって任務として行います。
先月の世田谷ボロ市パレードも同じです。
ではどのような根拠があるのかと言いますと…
記事末に抜粋してありますが、①防衛省の広報活動に関する訓令、と②海上自衛隊の広報活動の実施に関する逹、が法令面での根拠になります。これらの条項のどれに該当するのかをきちんと説明できないものは、任務としての演奏活動を行うことができません。
また、三宅由佳莉さんがテレビやラジオに出演したり、雑誌の取材を受けるのも、協力的広報活動の条項に照らし、「広報上の効果が認められる」と判断されるからこそ実現しているというわけです。全て根拠があり、必ず命令が下ります。
このようなグラビア撮影はもちろんのこと、
こういう取材も、同じです。
自衛隊にはいくつかの種類の命令があります。
防衛出動や治安出動、災害派遣など、自衛隊法に定められた部隊の「行動」に関しては「行動命令」が出されます。また、儀式や行事、日課の変更などについて出される命令は「日日命令(にちにちめいれい)」、任務遂行のために部隊として活動する場合に出される命令は「一般命令」といいます。「日日命令」は「にちめい」「一般命令」は「はんめい」と略して呼称されることが多いです。
東京音楽隊の演奏活動については、東京音楽隊長名で発出される一般命令で行われることになります。「○○○における、広報演奏に関する東京音楽隊一般命令」という仰々しい名前のついた命令書が正規に発簡され、この命令書が、車両運行、旅費支給その他関連業務の根拠になりますし、仮に事故等に遭遇した場合には隊員への補償、あるいは損害を与えた第三者に対する国家賠償の根拠にもなります。
そして、最も大切なことは、防衛大臣が定めた規則に基づき、防衛大臣に報告され了承された計画どおりに、部隊が活動するということなのです。この仕組みがシビリアンコントロールであり、例え武器を持たない音楽隊であっても、隊長の一存で勝手に部隊を動かすことなどできないわけです。
三宅由佳莉さんの優雅なステージの下には、お堅い根拠法令がしっかり敷かれているというわけですね。ちょっと興醒めしました? ごめんなさいm(_ _)m
〜〜〜根拠法令〜〜〜
防衛省の広報活動に関する訓令
第3章 協力的広報活動
(部外行事に対する協力)
第12条 実施担当官は、国の行政機関、地方公共団体、外国の行政機関その他の部外団体等から 行事に対する協力の要請を受けた場合には、その行事が次の各号の一に該当し、かつそれに対 する協力が広報上相当の効果があると認められるときに限り、所要の協力を行なうことができ る。
第3節 協力的広報活動
(放送及び出版物等に対する協力)
第17条 実施担当官は、ラジオ及びテレビジョン放送に関して協力の要請があり、その趣 旨及び内容を十分検討の上広報上の効果があると認められる場合は、所要の協力を行うことができる。
2 実施担当官は、新聞、雑誌、図書等の刊行に際し協力の要請があつた場合は、前項の規定により所要の協力を行うことができる。
第5節 報告 (報告)
第28条 部隊等の長は、四半期ごとに広報活動実績報告書を作成し、当該四半期経過後15 日以内に海上幕僚長に報告しなければならない。