あれこれdiary

海自OBによる偏見御免徒然あれこれdiary

音楽の「たまて箱」2022

 昨日(2022年7月29日金曜日)、東京オペラシティで開催された、”音楽の「たまて箱」2022”を楽しんできました。と言っても、ほぼほぼ、トリを務めた東京音楽隊の出番だけですけど(≧▽≦)

 今回は、常連のトップ出演者である假屋崎省吾さんが、急病のため出演取りやめとなりました。昨年は東京音楽隊が直前キャンセルでしたが、昨年も今年も、そんな突然のキャンセルにも代理出演者を直ちに充てることができる東京オペラシティの力量が窺われますね。

会場入口に掲示されたお知らせ

 さて、折も折、コロナの「新規感染者」数が、ワクワクするほど(メディアにとって)伸びている現状では、東京音楽隊の出演も難しいのではないかとも思われました。この2年半、東京音楽隊の演奏会が予定される度に「新規感染者」が増えて「取りやめ」となることが繰り返されてきましたから、それが常態として認識されるようになっているのかもしれません。

 ですから、前日の7月28日に、「いかづち」さんから「オペラシティに問い合わせたところ、東京音楽隊は予定通り出演するそうです」とLINEで連絡を頂いた際には、「おお!」と声が出てしまいました。いかづちさん、いつもタイムリーな情報をありがとうございます(^^)

 以前にも書きましたが、オペラシティは、現在の私の職場から徒歩で5~6分の距離ですので、ついでにあれこれやりたくなってしまいます。というわけで、第1部の「鈴木央紹トリオ(ジャズトリオ)」の演奏が終わるころ、ようやく会場に顔を出すことができ、チケットだけ頂くという形になりました。

 そして、用件を澄まして再び会場に戻ったのが14時半ころでしたから、予定では第2部の「PIVOT(オペラユニット」)のステージも終わるはずですが、少々押していたようで、20分ほど、オペラを楽しむこともできました。

 東京音楽隊のステージは、1500からの予定でしたが、15分後ろ倒しで1515からとのアナウンスがあり、休憩に入りました。久々のホールでの東京音楽隊です、なんだか緊張します。

 ちょっと一服して会場に戻ってみると、ステージの上には東京音楽隊の演奏準備がすっかり整えられています。赤羽さんがたった一人でコントラバスのチューニングをされていましたので、今回も岩田さんの出演はなさそうです。 久しぶりに隊旗を撮影してみました。

 会場内でモンスターさんとばったり出くわし、軽く言葉を交わしてからそれぞれの席に座りました。今日も、二人で反省会の流れになりそうです\(^o^)/

 時間となり、隊員のみなさんが両袖から現れました。「おや?」皆さん上は白、下は黒の演奏服を着用しているのですが、何となく違和感を感じました。これについては後ほどまた触れてみたいと思います。

 たまて箱の総合司会を務められた朝岡聡さんが左袖から現れ、東京音楽隊の沿革と国内外での活動状況などを紹介された後、樋口好雄隊長の登場を促します。

 万雷の拍手に迎えられながら、我らが樋口隊長は、上下黒のモーニングタイプの演奏服で左袖から指揮台へと歩み寄ります。先日、さいたまのけやき広場で久々にお姿は拝見しましたが、やはり、演奏服を身に纏い、指揮台に立つ姿をこそ一日も早く見たいと思っていましたので、なんとも言えない感慨を覚えました。

 樋口隊長のタクトがふり降ろされると、いきなり「ラッパ気を付け」が響き渡ったものですから思わず体が反応します。身についた習性というものは恐ろしいものです。

 初めて聞く曲でしたが、演奏後左袖から登場したMCの橋本晃作2曹が、音楽隊からのごあいさつと、今演奏した「この美しき”蒼”を守るために」の紹介をされました。

 海上自衛隊東京音楽隊は、ともに今年70周年を迎えており、1曲目に演奏されたのは、海上自衛隊70周年を記念して東京音楽隊の藤田翔吾さんが作曲されたものであること、海上自衛隊で使用されている信号ラッパを随所に使っていることなどの説明がありました。どうりで、いきなり「気を付け」がかかったわけです。

 そして、2曲目、プッチーニの歌劇「トゥーランドット」より「誰も寝てはならぬ」についても続けて説明されました。架空の時代の北京を舞台に展開されるこの歌劇の山でもある「誰も寝てはならぬ」の概要について解説が行われた後、「それでは、この曲を、わたくし橋本晃作のテノール独唱でお楽しみください」の一言で、会場がどよめきます。

 いや、見事なアリアです。会場の隅々まで響き渡る迫力の独唱に、皆さん圧倒されているようでした。先日、けやき広場で初めて生声をお聴きしたばかりですが、声楽家としての本格的な歌唱はまた格別で、実に瑞々しい感性が窺われました。

  福井敬さんの独唱動画がありましたので、貼っておきます。

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 歌い終えた際、大喝采が彼を讃えたのは言うまでもありません。

 喝采に応えつつも、すぐに次の曲の紹介をしようとしますが、まだ息が整っていないのかちょっと噛み噛みになってしまい、指揮台の上では満面笑顔の樋口隊長が両手で「落ち着け落ち着け」とのジェスチャーでサポートされてました。

 3曲目はNHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」のメインテーマです。我が家にはテレビがありませんから、もちろん見てない(見れない)んですが、三谷幸喜さんが手がけているということなので、面白いに違いないと思います。曲も、おそらく初めて聴きましたが、きっと多くの方には馴染みの曲なのではないでしょうか。

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 さて、4曲目は「スピリッテド・アウェイ」…宮崎駿監督によるジブリアニメ「千と千尋の神隠し」から6曲のメドレーです。曲の紹介をしたあと、橋本2曹が左袖に下がるのではなく、ピアノの脇から演奏席の中央近くまで移動して着席したので、何だろうと思って見ていました。どの曲かは失念しましたが、途中で男性コーラスをアクセントにしている部分があって、そこで他の男性隊員とともに歌われていたように思いました。

 ピアノの太田紗和子さんも、ピアノに就いたり、中央席に移動したり、橋本晃作さんと席を代わったりと、目まぐるしく動き回っていました。メドレーって、曲が切り替わるたびに演奏セットも変えなきゃならないから大変なんだろうなぁと思いました。

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 今回の赤嵜尚子さんは、もっぱら鍵盤打楽器担当だったため、ほぼステージ前面での演奏となっていました。機会があればあとでご挨拶をとも思いましたが、コロナの状況からみて、客席との接触は制限されている可能性があります。

 さて、次の曲は、「海の声」、何年か前、まだ我が家にもテレビがあった頃にauのCMで流れていた曲です。桐谷健太さん扮する浦島太郎(浦ちゃん)が乙姫への思いを歌うという無理筋の設定ですが、いい曲です(^^)

 そう、この曲も「わたくし橋本晃作の歌でお送りします」に会場は再び沸きます。

 この時、ステージ奥のパーカッション席を見たのですが、岩重政秀さんが、こぼれ落ちそうな満面の笑顔で、「うんうん」と満足そうに橋本2曹をご覧になっている姿がとても印象的でした。

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 この曲をうたい上げ、拍手喝采に応えている姿を、演奏席から見ているほかの隊員の皆さんも、とてもいい笑顔で拍手されていました。昨年入隊したばかりで、日は浅いですが、部隊にすっかり溶け込み、皆さんから愛される存在になっているのがよくわかりました。

 続いて演奏されたのは、「ウルトラ大行進」…ウルトラマンウルトラセブンウルトラマン太郎、帰ってきたウルトラマン(ほかにもあったかも(≧▽≦))のメドレーです。馴染みの曲ばかりですけど、まとめて聴くのは初めてでした。

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 続いてはディズニーアニメトイストーリーから、「君はともだち」です。私にはあまりなじみのない作品ですが、お子さん連れの方もたくさんおられたので、きっと喜ばれたことでしょう。

 室内演奏の適当な動画が見つかりませんでしたので、横須賀音楽隊による野外演奏の動画を貼っておきます。

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 さて、最後の曲は、SF映画「ジュラシック・パーク」よりメインテーマです。

ずいぶん前の映画ですが、ジュラ紀の地層から見つかった松やにの化石の中に閉じ込められていた蚊の体内から、吸血対象となった恐竜の血液の化石を分離抽出して、DNAを再現し、当時の恐竜たちを現在に蘇らせるという(確かそんな内容だったかと)壮大なフィクションに興奮させられました。そして、物語を大いに盛り上げたのが、このメインテーマです。作曲者のジョン・ウィリアムスは、「スターウォーズ」「スーパーマン」「インディ・ジョーンズ」「ハリーポッター」など、スティーブン・スピルバーグジョージ・ルーカスの作品に多くの楽曲を提供してきました。

 今年、ウィリアムスは90歳を迎えました。そして、たまて箱当日の7月29日は、ジュラシックパークシリーズの最新作「ジュラシック・ワールド/新たなる支配者」が日本で封切られる日にも当たることから、この曲が選ばれたとのことです。

 樋口隊長が隊員の方に向き直り、タクトを構えた時、会場から「あー」なのか「きゃー」なのか忘れましたが、お子さんの奇声が響き渡りましたが、樋口隊長が振り返り「恐竜がいるみたいですね」と突っ込むことで、会場は笑いに包まれました。この辺の当意即妙さが樋口隊長の魅力の一つですね。

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 ジョン・ウィリアムスの曲は、どれも聴くものの魂の底上げをしてくれるような気がします。東京音楽隊による演奏も見事でした。

 演奏が終了し、大喝采に応えたあと、樋口隊長が左袖に捌けていかれますが、アンコールを求める拍手が続きます。東京音楽隊主催の演奏会であれば、ここで樋口隊長が再登場して「じゃぁ1曲ね」と、人差し指を立てて応えるところです。でも今回はたまて箱への出演ですから、勝手に決めることはできません。まず、総合司会の朝岡さんが登場し、東京音楽隊の演奏について感想を述べ、樋口隊長へのインタビューなどを行っていきます。橋本晃作さんのことにも話題が及び、「わたし、MCの方が『誰も寝てはならぬ』を歌うシーンなんで見たことないです」とか「橋本2曹は、海上自衛隊で唯一の声楽専門職の男性隊員で、昨年入隊されたばかりなんだそうです」との言葉に、会場は何度もどよめきました。樋口隊長からは「女性のヴォーカリストは陸海空にいますけど、彼は海上自衛隊だけではなく、自衛隊で唯一の男性ヴォーカリストなんです」と仰ると、朝岡さんは「先駆けですね」と応じていました。確かに、海自音楽隊はいつも先駆けとなって陸・空を引っ張っているように見えます。

 ここで、もう一つ話題になったのが、隊員の皆さんが着用している演奏服についてでした。「実は今日みんなが着ているのは新しい演奏服で、今日が初披露なんです」ということでした。どうりで、なんとなく「おや?」な感じがしていたはずです。

 そんなやりとりがあった後、朝岡さんから「最後に演奏されたジュラシックパークでは、勇壮な吹奏で終曲かと思いきや、最後は繊細なピアノの音で締めるなんて、演出も素晴らしかったですね。そんな素晴らしい演奏を聴かせていただきましたし、皆さん、もう少し聴きたいと思ってらっしゃると思います。そして、やはり海上自衛隊ですから、最後は勇壮な行進曲を聴かせていただきたいですね」と客席に振ると、割れんばかりの拍手が沸き起こります。「それでは、樋口隊長よろしいですか?海上自衛隊公式行進曲『軍艦』の演奏をお願いいたします」

 この瞬間は本当に気分が高揚しますし、会場にもそんな思いが漲っているのが肌感覚でわかります。2階の桟敷席の皆さんも、身を乗り出さんばかりの様子で、その瞬間を待っているようでした。

 掲げられたタクトの動きに、会場全体が注目するなか、樋口隊長の両腕が一瞬跳ね上がり振り下ろされます。出だしのサウンドで会場には興奮が広がりました。

 隊長の踊るような、それでいてメリハリの利いた指揮ぶりはいつも惚れ惚れしますが、久々の「軍艦」ですから、その感動もひとしおです。

 2011年、東京音楽隊によるオペラシティでの定期演奏会の動画を貼っておきます。

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 演奏が終わり、感動が渦巻くなか、朝岡さんが登場し、「本日のたまて箱はこれにて終了とさせていただきます」と宣言され、隊員のみなさんがステージ上から手を振り始めたので、みなさん、それ以上の期待をすることなく、席を立ち始めました。

 いい演奏会でした。

 コロナのおかげで、このような素晴らしい演奏を聴く機会が奪われ続けてきましたが、今回、コロナ「新規感染者」が大幅に増加するなか、東京音楽隊が予定通り出演を決めたことは、「出口は近い」ことを予感させてくれます。

 演奏会が終わったので、赤嵜さんたちにご挨拶できるかもと、ステージに近づいてみましたが、隊員のみなさんは、そそくさと袖に捌けていきます。やはり、会場との接触を避けるため、会場が無人になるのを待って撤収作業を行う段取りになっているのだと思いました。

 そんななか、岩重政秀さんが、最後にパーカッション席から降りてこられたので、一言だけごあいさつしました。そして、新しい演奏服の写真撮影をお願いしたところ、快諾してポーズをとってくだっさったので、こちらに掲載します。メスドレス型のスマートな演奏服で、今後、目にする機会が増えていくことでしょう。

新演奏服姿の岩重政秀さん

 1時間の短い演奏会でしたが、大変充実し、満足のいく内容でしたし、何より、ホールでの演奏会ができるようになってきたことが喜ばしいことだと思います。

 せっかく、機も熟してきたというのに…我らが樋口隊長は、もうすぐ退官を迎えられるようなのです。4年前の「誤報(ガセとも言う)」の際、ご本人から「あと4年あります」と教えていただいたので、4年後の今年は……というわけです。

 樋口隊長の誕生月はわかりませんが、9月5日(月曜日)に予定されている、第64回定例演奏会が、ひょっとしたら振り収めになるかもしれません。

 第64回定例演奏会の応募要領等は下のリンクから訪ねてみてください。

www.mod.go.jp

 ここまでお読みいただきありがとうございます。演奏会の雰囲気の一端でもお伝えすることができたなら幸甚です。

 最後に、東京音楽隊のみなさん、そして東京オペラシティの皆様、すばらしい演奏会をありがとうございました。