あれこれdiary

海自OBによる偏見御免徒然あれこれdiary

今年の遠洋練習航海(2)

 4月に「今年の遠洋練習航海」という記事を書きました。

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 昨年の5月は、三宅由佳莉さんの横須賀音楽隊への異動や、遠洋練習航海への参加などが次々に判明し、てんやわんやだったことを懐かしく思い出しながら、コロナ禍が吹き荒れる現状において、今年の遠洋練習航海は、おそらく外国への寄港は断念し、太平洋上での長期耐洋訓練となるのではないかと書きました。

www.capitandiaryblog.com

 6月5日(金)の海幕プレスリリースによりますと、遠洋練習航海部隊は、明日(6月9日(火))に日本を発ち、7月22日(水)までの44日間、洋上訓練等を行うとのことです。途中、シンガポールチャンギ港に寄港しますが、補給のみで、交歓行事や上陸等は行われないようです。

 昨年の遠洋連取航海が5ヶ月だったことを思うと、44日間って短過ぎないか?と思いますよね。ええ、今回公表されたスケジュールは、「前期」となっています。おそらく、以後の予定については、困難な状況の中、可能な限り訓練効果を上げつつ、海外の寄港地への訪問も可能になるような調整をギリギリまで行っているのではないかと思います。それが「後期」になるのか「中期」になるのかはわかりませんが、分割実施せざるを得ないのはやむを得ないことでしょう。

https://www.mod.go.jp/msdf/release/202006/20200605.pdf

 補給のための寄港地がシンガポールであることを考えれば、前期遠洋練習航海部隊の行動範囲は南シナ海からインド洋にかけての海域なのではないでしょうか。

 このように、実質的に寄港地がないような航海日程であっても、練習艦隊音楽隊は編成されているはずです。練習艦隊音楽隊には、寄港地での演奏だけでなく、洋上慰霊祭など式典での演奏や、長期にわたり洋上での厳しい訓練を続ける実習幹部や乗員の士気高揚・慰労のための演奏などの任務もあるからです。また、音楽隊としても、自隊の隊員の慣海性を維持することや、洋上バンドとしての継続的な経験の蓄積というものも大切です。さて、今年はどなたが配属されているのでしょうね。きになるところですが、今後少しずつわかってくると思います。

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 海自のリリース内容からは、遠洋連取航海部隊がどこから出航するのかについては全く触れられていませんが、普通に考えれば横須賀でしょう。前回のプレスリリースで、近海練習航海の予定が一部変更となり、本来であれば出国に備えて横須賀へ寄港するはずが呉への帰港となっていました。

 その呉への在泊予定が5月22日(金)まででしたから、おそらく、22日に呉を出港し現在横須賀に停泊中なのでしょう。

 出国行事について、水交会からも何ら連絡はありませんし、三密を避けつつ、少数の関係者と、乗員家族らのみによる内々の行事として執り行われるのだと思います。

 昨年の観艦式が台風被害のため中止となり、今年の遠洋練習航海はコロナ禍のため超変則実施となったわけですから、海上自衛隊は踏んだり蹴ったりだな、と思われるかも知れません。

 でも、これがまさに「現実」に「対応する」ということですし、「今に対処し、将来に備える」ということでもあります。その意味で、今年の実習幹部は、却って良い機会を与えられたと言うこともできるのではないかと思います。

 遠洋練習航海部隊の行動が、実り多きものとなることを祈念いたします。