先日、仕事中に、文書受付担当から一通の封書が届けられました。
仕事柄、毎日のように色々なところから来簡があるのですが、普段見慣れない白い封筒だったものですから、「ひょっとして、クレームか」と一瞬身構えてしまいまいました。でも、封筒の裏に書いてある差出人の名前を見てホッとしました。O先輩です。
昨年の11月に、横浜みなとみらいにあるクイーンズスクエアで開催された「横浜音祭り」を聴きに行った際、会場でO先輩にお声かけいただいたことは、横須賀音楽隊の演奏会レポート記事の中で紹介させていただきました。
海上自衛隊の先輩であると同時に、現在の私の職場の先輩でもあったのですが、昨春、現役を退かれたとのことでした。二つの職場で、通算すれば40年近く”同僚”として過ごしたにも関わらず、ただの一度も接点のなかったO先輩と私が、やはり現役時代には全く接点のなかった音楽隊を介して初めて出会ったことに不思議な縁を感じます。
今回、O先輩がお便りをくださったきっかけは、1週間あまり前に投稿した記事に寄せられた「すぎ」さんからの久々のコメントでした。
「すぎ」さんは昨年、三宅由佳莉さんが遠洋練習航海に参加されている間、現地で投稿される様々な関連情報を探し出してはコメント欄で報告し、みんなを楽しませて下さいましたし、5ヶ月にわたる「三宅由佳莉さんの遠洋練習航海」シリーズ記事を支えても下さいました。改めて御礼申し上げますm(_ _)m
昨年、遠洋練習航海部隊が出国する少し前に、インスタグラムに忽然と現れた謎のサイトがありましたよね。アカウントは「ganbaru.ashitae」、サイト名は「三宅由佳莉」なのですが、未だに一言のメッセージも発せず、誰をもフォローせず、投稿写真だけがゆっくりとしたペースで増えていきます。なんともクールなサイトで、物言わぬが故に却って存在感が大きくなってきています。
そのサイトに、新聞記事の写真が二つ掲載されたことを「すぎ」さんは報告して下さいました。もちろん、三宅由佳莉さんのインタビュー記事です。ただ、映像としての掲載であるため、写真上、記事が途中で切れてしまっているので、「その先が読みたい(≧∀≦)」と「すぎ」さんは叫んだわけです。
この「叫び」を受けて、O先輩は「本とわたし」というコラムのコピーを届けてくださったのです。今月10日付の読売新聞神奈川版に掲載されたものです。
記事を撮影して掲載すれば簡単なのですが、色々と問題がありそうですので、「すぎ」さんが「読みたい!」と叫ばれた部分を抜き書きしておきます。インスタグラムの写真と併せてお読み下さい。
初めての遠洋航海は、生活面を含め、すべてが不安でした。音楽の面でも、各国の国歌を寄港地で初めて歌いましたが、英語やフランス語、スペイン語で月に2、3か国を覚えなければならず、特に歌詞の長い曲は大変でした。国歌を歌う緊張感は半端ではありません。そんな時には「『いま、ここ』に強烈なスポットライトを当てよ」という本の言葉を思い出して乗り切りました。
不安は、ちょっと先のことを心配したり、過去のトラウマにとらわれたりすると生まれます。「強烈なスポットライトを当てる」とは、未来や過去を考え過ぎず、「いま ここ 自分」と誠心誠意、向き合うことだと思います。遠洋航海中の演奏会でも、「今、この瞬間、ここで出会えるお客さんに感謝したい」という気持ちで歌いました。
海外に行くと、現地にいらっしゃる日本人の思いというか、日本の歌を大切にしたいと改めて思います。各寄港地で、一度は耳にしたことがある唱歌や童謡を聴いたくださった日本人から、涙ながらに「ありがとう」と声をかけていただきました。
学生時代は、自分が歌いたい、自分が人前で披露したいという思いが強かったのですが、入隊直後の訓練で一緒だった教育隊の同期が、人のために歌うことに気づかせてくれました。初めて私の歌で泣いた彼女たちが発した「ありがとう」の言葉。歌には誰かを励ましたり、勇気づけたりする力があります。私自身も出会いや発見に励まされながら、自衛隊での声楽家の道を切り開くつもりです。
何もコメントする必要もないですよね。本当に三宅さんの人柄そのままです。
「すぎ」さん、胸の痞えが下りましたか?
O先輩、貴重な資料のご提供、ありがとうございました。