韓国による日韓軍事情報包括保護協定(GSOMIA)は、結局、期限最終日の昨日、韓国政府による協定終了通告の「停止」が行われ、同協定が存続することになりました。
このブログでは、政治案件を積極的に取り上げてはいません。私は専門的な知識や経験を持ちませんし、解説するブログやYouTubeのチャンネルがいくらでもあるからです。でも、今回はあえて私見を述べさせていただきたいと思います。
そもそも、戦略物資の対韓輸出管理厳格化(ホワイト国リストからの韓国の除外)という、「日本政府内部の手続き変更」を撤回させるための「カード」として切られたGSOMIA破棄ですが、当初から「失望した」とする米国の、破棄撤回を求める圧力に晒され続けるなか、我が国政府の微動だにしない対応に苦慮してきた韓国政府内部からは、終盤に至って「東京五輪で旭日旗の使用を禁止すれば破棄撤回してもいい」などという、およそ何の関係もない条件が打診されるなど、「なんでもいいから、破棄撤回の大義名分をくれ!」と言わんばかりの悲鳴が聞こえていましたので、この結果については予想されていた向きも多いのではないかと思います。
それにしても、我が国のマスコミ報道からは、またしても国民をミスリードする意図が強く伺えました。
ホワイト国からの除外について、韓国では「輸出規制強化」との誤った反発が起きましたが、我が国マスコミも「規制強化」との文言を使用してきました。経済産業大臣から、「規制強化ではない、管理の厳格化である」と、正確な報道をするよう明確な注意喚起が何度もなされたにも関わらずです。
国際社会にとって極めて深刻な状況を惹起しかねない恐れがあるからこそ、本来、厳格な輸出管理が求められている戦略物資ですが、長年の実績から真に信頼できる相手国に対しては、輸出手続きを大幅に簡略化し、事実上ノーチェックで、求められる量を輸出できる仕組みが「ホワイト国」指定です。アジア諸国の中で、日本がホワイト国に指定していたのは韓国のみでしたし、世界中の戦略物資輸出国で他に韓国をホワイト国に指定している国はありません。極めて特異なホワイト国指定であったことがわかると思います。しかも、経済産業省による何年にもわたる内偵の結果、エンドユーザーが特定できない戦略物資が存在し、その量が文政権誕生以来急激に増大しているという深刻な問題がありました。ホワイト国指定の条件でもある年次の両国間協議に何年もの間韓国側が応じず、エンドユーザー不明の戦略物資はどこに行ったのか資料を提出するよう求めても、これに応えないという信義にもとる態度を崩さないからこそ、信頼に基づく「ホワイト国」リストから外し、「以後、本来の輸出手続きを行います」と通告したのが「輸出管理の厳格化」であり、いわゆる「徴用工(実際には戦時雇用労働者)」判決への制裁でも何でもありません。国際社会の安全保障に対する当然の責任を果たしただけのことです。
ですから、韓国は他の多くの国と全く同じ条件で戦略物資を輸入できるわけですし、「ホワイト国」への再指定を望むならば、我が国が求めている資料の提出(もちろん妥当な使用が証明できることは必須ですが)と、年次協議に応じるという当然の義務を果たせば済むことです。であるにも関わらず、それをせずにGSOMIAを一方的に破棄し、「撤回して欲しいならホワイト国に再指定せよ」などという主張が成り立ちますか?
こんなにもわかりやすいことを、俊秀揃いのマスコミ各社が理解できないはずがありません。それなのに、GSOMIA問題と輸出管理の厳格化を同列に扱い、日韓両国間の落とし所はどこかなどという間の抜けた報道を繰り返してきました(本当に間抜け)。
結局、問題を正確に捉え国民の知る権利に寄与しようとするのではなく、針小棒大に報道することで、国民を煽り、売り上げ部数を伸ばしたいということなのか、韓国の主張を正当化して国民に植え付けようという亡国的意図でしょう。ジャーナリズムではなく、プロパガンダとアジテーション。そんな見え透いたことを続けているから、心ある多くの国民が離れて行くのです。
それはともかく、一連の状況を見ていると、米国が大きなパラダイムシフトに向けた舵を切りつつあるように思えてきます。
2年ほど前、「北朝鮮ミサイル実験の本当の脅威とは」という記事で、ソ連崩壊で後ろ盾を失った北朝鮮について、
興味深いのは、北朝鮮が選択した後ろ盾が、中国ではなく、米国だということです。「瀬戸際外交」と呼ばれる対米戦略により、少しづつ実利を上げてきた北朝鮮ですが、最終目的は米国に現体制の存続を認めてもらうことに他ならず、金日成時代から一貫して、「米国命」とばかりに一途にラブコールを送っているようにも見えます。
その意味では、同盟国のはずなのに、対米戦略がブレにブレまくっている韓国より、米国にとってははるかに信頼出来る相手、少なくとも外交上の計算が可能な相手だと言えるかもしれません。
と書きました。
それが、具体的に裏付けられようとしているように感じるのです。
まず、米朝首脳会談について振り返ってみますと、シンガポールに続くハノイでの第2回首脳会談は、核合意に向けた大きな期待にも関わらずトランプ大統領の強硬な原則的姿勢で決裂し、北穂朝鮮からは、米側の妥協を引き出すとの約束をしていた文大統領への不信感が吹き出したと言われています。
それは本当なのでしょうか。
日本で開催されたG20サミット後、トランプ大統領は板門店での第3回米朝首脳会談を「電撃的」に行いました。トランプ氏のTwitterでのつぶやきに金正恩氏が直ちに応じて実現したとされています。
それは本当なのでしょうか。
何事につけ、型破りなトランプ氏ですが、飲み会じゃあるまいし、首脳会談がTwitterで実現するなど、あり得ないことでしょう。仮に本当だとすると、両氏は、尋常ではないほど反りが合っているとも言えると思います。
いずれにしても、私が申し上げたいのは、米朝間には、非常にしっかりとした信頼関係と連絡体制がすでに築かれているのではないかということです。
北朝鮮の立場で考えて見ましょう。
何より重要なのは、米国による現体制維持の承認と経済支援です。北朝鮮はロシアも中国も信頼していないようです。孤立無援で体制を維持しようと必死の努力を続けています。ですから、米国による体制保証がない限り、対米交渉のカードとしての核開発は絶対に手放せないでしょうが、仮に米国が現体制の維持を保証してくれるなら、核の放棄という条件を飲むに吝かではないと思われます。要は、何より米国の「確約」が欲しいというわけです。
他方米国の立場はどうでしょう。
米国は長らく、中国、ロシア、北朝鮮という、米国にとって「厄介な」勢力と、38度線を挟んで対峙する戦略構図を描いてきました。米中経済戦争を見るまでもなく、現在の米国にとって最も厄介なのが習近平体制下での中国でしょう。おそらく米国は、本気で習体制を葬り去ろうとしています。
韓国は、米極東戦略の最前線として、最もしっかりしてくれなくては困る存在であるにも関わらず、政権が変わるたびに大きく触れ回り、最大のリスク要因となってきましたが、米国が対中姿勢を硬化させる現今の情勢下にあって、中国と抜き差しならない関係にある文政権には米国もいよいよ匙を投げざるを得なくなっていると思われます。
米国にとっては、同盟国のキャップを被りながら何をしでかすか分からない韓国よりも、赤い帽子を被ってはいても、一途に米国を頼ってくる北朝鮮の方がはるかに信頼に足る存在ではないでしょうか。
そのように考えると、米国にとって好ましい極東の戦略構図が見えてきます。
つまり、北朝鮮により統一された半島国家と米国が同盟関係を結ぶということです。
従来の常識からは考えられないことですが、このところ起きている様々な事象を矛盾なく説明できるシナリオの一つにはなろうかと思います。
GSOMIA破棄の撤回を求める米国は、「在韓米軍を危険に晒す恐れがある」との理由で、韓国に並々ならぬ圧力をかけ続けましたが、一方の当事国である日本に対しては何らの働きかけもしませんでした。確かに、日米韓の協力関係が死活的に重要であるならば、日韓GSOMIAは米国にとって極めて重要です。その割には、何が何でも継続させる、という意思が感じられないばかりか、GSOMIA破棄後の、過酷な韓国冷遇措置への正当性を予めショウアップしているといった印象さえありました。
米国は、韓国を見捨てたのではないか。そう思ったのは、GSOMIA破棄撤回圧力と並行して、米国が韓国に突きつけた要求の数々を見た時です。
①米軍駐留費年50億ドルの支払い
②中国の覇権拡大に対抗するため米国が主導するインド太平洋戦略への参加
③第5世代通信ネットワークへのファーウェイ製品使用禁止の宣言
④ホルムズ海峡の安全確保のため米国が呼びかけている有志連合への兵力の派出
⑤新型精密誘導中距離ミサイルの韓国への配備の受け入れ
つまりこれは、米国の同盟国として留まる意思があるのかどうか、はっきり示せという踏み絵です。とても飲めそうもない条件ばかりが並んでいるのを見て、これは「ハル・ノート」だなと思いました。
果たして真相がどうなのかは知る由もありませんが、ファクトを繋いで行くと、私には、米国がそのようなパラダイムシフトを企図しているように見えるのです。
第2回米朝協議がハノイで開かれた際、「何故ハノイ?」という違和感を強く感じました。このような会談の場として使われた実績がないように思えるからです。
でも、米国がパラダイムシフトを企図しているのならば、かつて米国との激しい戦争の末、南ベトナムを「解放」した北ベトナム共産政権が、統一ベトナムを発展させ、現在では米国と良好な関係を築いている姿を、北朝鮮の目指すべきモデルとして提示する意図があったのかも知れませんね。わかりませんけど(≧∀≦)