あれこれdiary

海自OBによる偏見御免徒然あれこれdiary

スバ

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  我が練習艦隊は、間も無くフィジー共和国の首都であるスバ(Suva)に入港します。冒頭に掲げたのは同共和国の国旗ですが、左上部にユニオンジャックが描かれていることでもわかる通り、フィジー共和国は英連邦を構成する国の一つです。

 英連邦は、旧大英帝国の版図から独立を果たした50以上の国々からなる緩やかな連携の枠組みです。さらに、英連邦諸国は「英連邦王国」を構成する国と、それ以外の国に分かれます。

 英連邦王国とは、独立国ではありますが、国家元首としてエリザベス女王を戴く王国です。オーストラリア、カナダ、ニュージーランドパプアニューギニアなどオセアニアの諸国や、アンティグア・バーブーダ、バルバドスなどカリブ海諸国など、英国を含めると16カ国もあります。でも、決して英国王が元首なのではなく、エリザベス女王個人が元首なので、オーストラリアではオーストラリア女王ですし、カナダではカナダ女王となります。各国には王により任命され、その代行を務める総督が置かれていますが、実務的には各国首相の指名により就任しているようです。

 英連邦王国以外の英連邦諸国は、それぞれの国体に応じて、大統領や首相などを国家元首としています。

 緩やかや連携とは言え、2年ごとに英連邦首脳会議を持ち回りで開催したり、一部の構成国間では安全保障の枠組みが形成されるなど、一定の影響力を維持しています。

 ところで、英連邦諸国の間で、大使の交換は行われていません、連邦の枠内という建前から大使ではなく「高等弁務官」と称するのだそうです。大使館の代わりに置かれるのは「高等弁務官事務所」になります。

 今回練習艦隊が訪れるフィジー共和国は、1970年に英国の植民地から英連邦王国として独立を果たしましたが、1987年に軍事クーデターにより共和国化が宣言され、英連邦を離脱しました。その後、1997年に再び共和国として英連邦に復帰したという経緯があります。つまり、現在は英連邦には属するものの王国ではなく、大統領を国家元首としていますが、立憲君主制を採用し英連邦王国に復帰することも検討されているようです。

 公用語はフィジー語とヒンディー語ヒンディー語が何故?と思われるかも知れませんが、英国の植民地時代、砂糖のプランテーションを維持するために大勢のインド人が入植させられ、そのまま定住しました。この背景には、西洋人が持ち込んだ伝染病が原因で、フィジー人の絶滅が危惧されていたということもあるのだそうです。

 ヒンディー語公用語の一つになっていることからも分かる通り、インド系の社会的発言力は大きく、当然のことながらフィジー系との軋轢もあるようです。

 ところで、防衛省自衛隊は近年、「能力構築支援(キャパシティ・ビルディング/キャパビル)」の分野での活動を積極的に展開しています。

 キャパビルとは、発展途上国の様々な社会機能のしっかりとした能力構築を支援して、その国の自立を促していく活動で、JICAやNPOなどが様々な活動を行っていますし、防衛省自衛隊は、各国軍の人道支援や災害救援能力の他、医療・衛生、国際法、昨年からは軍楽隊の育成などの分野での支援活動を展開しています。その背景には、貧困や差別、政府への不信感などが、過激な思想や勢力lの浸透を許して社会問題を引き起こし、ひいては国際情勢の不安定化に繋がる恐れがあるとの認識があります。国際情勢を安定化させる基礎は、各国国内の安定化にあるということですね。

 

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「いずも」艦上での陸自隊員による災害救助要領展示(フィリピン)

 防衛省自衛隊が展開するキャパビルは、長年にわたりPKO等の国際協力業務で蓄積したノウハウを活かすことができ、コストパフォーマンスの良い政策として注目されています。

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 東南アジアから始まった活動は、中央アジア、南アジアを経て、オセアニア島嶼国家へと広がりを見せつつあります。当然のことながら、「自由で開かれたインド太平洋構想」に沿った動きでしょう。

 報道によれば、日米豪3カ国が初めて連携して行うキャパビルがフィジー、トンガ、パプアニューギニアを対象として展開されようとしているようです。

 事実関係は確認のしようもありませんが、今回の練習艦隊の寄港地を見る限り、しっかり符合していますので、そのような大きな流れを受けているのだろうと思われます。

 フィジー共和国は我が艦隊をどのように迎えてくれるのか、楽しみですね。

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首都「スバ」の中心街

 ちなみに、寄港中の予定については、昨夜、「すぎ」さんがコメント欄にまとめて報告してくださいました。コメントの関連部分を転載させて頂きます。

 

 艦隊の情報は在フィジー日本国大使館のプレスリリースに詳しく出ていますね。音楽隊のコンサートについてもその事だけでプレスリリースされていますね。しかも音楽隊員の全員集合写真付きで。日本国大使館のFacebook7日、11日そして今日の記事によります。23日は日本の書道、折り紙、日本の伝統的なおもちゃの紹介などの文化交流活動があるそうです。24日のJS INAZUMAのパブリックビューイングは申込締切になったそうです。26日にはUSPのLaucalaキャンパスにあるジャパンICTセンターで合同音楽コンサートがあります。

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「すぎ」さん、いつもありがとうございます。

 また、「かしま」の艦上レセプションは間違いなくありますし、そこで三宅由佳莉さんがフィジー国歌「フィジーに幸あれ」を歌われるのも確実ですので、フィジー国歌の動画を貼っておきます。英語です。

www.youtube.com

 因みに、この動画を作られているのは、世界中の全ての国歌を動画化することを目指しておられる「World National Anthems JP」さんです。すごい企画ですね。