あれこれdiary

海自OBによる偏見御免徒然あれこれdiary

舞音演奏会@「ちよだ」in 名古屋港

 先週末、潜水艦救難艦「ちよだ(2代目)」が名古屋港に入港し、一般公開など広報活動を行いました。2代目「ちよだ」は、三井造船玉野工場(岡山県)で建造された最新鋭の潜水艦救難艦です。2016年10月17日の命名進水式では、三宅由佳莉さんが素晴らしい国歌独唱を行いました。

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 また、昨年(2018年)3月20日自衛艦旗授与式では、やはり三宅由佳莉さんが「海のさきもり」で、式典を引き締めました。郷里岡山で建造されたこともあり、三宅さんとは所縁(ゆかり)の深い艦であるとも言えますね。

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 潜水艦救難艦とは、海中で行動している潜水艦が、事故等で行動の自由を失い、沈降して着底してしまった場合などに、潜水艦内から乗員を救出するための艦艇です。ãã¡ãã ãã®ç»åæ¤ç´¢çµæ

 潜水艦の潜航可能深度は機密情報ですから、どの国でも関係者以外は知りません。もちろん私も聞いたことがありません。でも専門誌などでは推定可潜深度が堂々と「公表^^;」されています。それによれば、我が国の潜水艦の作戦深度は少なくとも500〜600mはあるようです。水圧は、水深10mごとに1気圧づつ上昇しますので、例えば500mまで潜ると51気圧(海面でも1気圧ありますので)の圧力が潜水艦の艦体を押し潰そうとします。潜水艦は、それに抗える構造をしていますが、それにも限度があります。その限度を越えると、瞬時に「圧壊(あっかい)」し、巨大な艦体が真空パックのようにぺちゃんこなってしまいます。そうなると「救難」は不可能ですから、潜水艦救難艦の作戦範囲は、潜水艦の圧壊深度までであることが推定されますが、それが何百メートルなのかは計り知れません。一般に日本の工業製品は、公称スペックよりも高い性能を誇りますから、ひょっとしたら1000mくらいなのかも知れませんね。

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 100気圧に迫るような高圧の下での救難活動が容易でないことは想像に難くありません。しかも、搭載されている深海救難艇(Deep Submergence Rescue Vehicle/ DSRV)を潜水艦の脱出用ハッチに接続する際、ダイバーによる外部作業が必要らしいのです。潜水艦でさえ潰れそうな高圧の深海で、生身の人間が作業するわけです。普通即死ですよね。海上自衛官は鍛え方が違うね、とかそういう問題じゃないです。どんなに鍛えても死んじゃいます。それは、人間の身体を構成している60兆個(だったかな?)の細胞が、水圧に耐えられず潰れちゃうからです。

 でも、細胞の内圧が外部の水圧と釣り合っていれば潰れることはありませんよね。そこで、深海潜水を行うダイバーは、加圧チャンバーで、何日もかけて徐々に高圧の身体を作っていきます。そして、作戦深度の水圧と釣り合う身体になったところで、深海に降ろされ、海中に泳ぎ出て作業を行うのです。書けば数行ですが、大変な作業だと思います。でも、あらゆる事態に備えておくことが必要ですし、そのためにある程度の犠牲を払うのはやむを得ないことでしょう。

  さて、前置きが長くなりました(いつものことか(≧∀≦))

 今回書きたかったのは、タイトルにもあるとおり、名古屋港イベントでの、舞鶴音楽隊の演奏会のことなんです。その枕として「ちよだ」のことをちょっと紹介しようと思っただけだったのですが、つい、いつもの癖が出てしまいました。

 静岡から名古屋に転勤になった「よっしー」さんが、名古屋港に赴かれ、演奏会の動画をYouTubeにアップして下さったので、すぐにも記事を書きたかったのですが、丁度東京音楽隊練習艦隊の節目が重なったものですから、1週間遅れになってしまいました。先週は、横須賀音楽隊の演奏会の記事を書きましたし、ブログチーム(いつの間にか誕生していた∑(゚Д゚))の皆さんが寄せてくださる取材ネタを元に記事を書くことで、このブログの幅も広がっていきそうです。

 よっしーさんは、強風吹き荒ぶ中、しっかりと演奏風景を録画してくださいました。ありがとうございます。下の動画がそれです。是非ご覧になってください。舞鶴音楽隊の魅力が溢れていますよ(╹◡╹)

 因みに、名古屋港は横須賀地方隊の警備区内ですから、本来であれば横須賀音楽隊の管轄ですが、今回は何が事情があったのかな?と思い、よっしーさんにその点について取材をお願いしました。その結果、音楽隊の広報演奏は、必ずしも警備区にとらわれず柔軟に運用されているということがわかりました。そうだったんですね、広報関係の業務に就いたことのない私には初耳でした。

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 さて、演奏会ですが、舞音の皆さんはディキシーランドジャズを奏でながら徐々に登場して、詰め掛けた大勢の聴衆の心を掴んでいきます。この辺の盛り上げ方は本当に上手ですよね。

 最初の曲は「聖者の行進」でした。

 指揮にあたる舞鶴音楽隊長は、前の東京音楽隊副長・北村1尉です。そしてMCは田中恵美子2曹でした。田中2曹のMCも味があります。聞き取りやすい声と滑舌の良さが強みだと思います。2014年に舞鶴で行われた舞音の海フェスタマリンコンサートの動画をご覧になった方も多いと思います。三宅由佳莉さんの出演で会場が大盛り上がりだった、「I LOVE BRASS」さんの、あの動画です。

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 最初にこの動画を観たときから、田中2曹の司会ぶりがとても強く印象に残っています。荒木美佳さんとはまた違う路線ですが、味があるなぁと思わせるものをお持ちですね。今回も、風で楽譜が飛ばされた時の咄嗟の対応力には舌を巻きました。

 2曲目は、映画「アラジン」から「ホール・ニュー・ワールド」です。横山匠3曹(字が違ってたらごめんなさい(≧∀≦))のサックス・ソロが光りました。

 3曲目は、まさかの「ゲゲゲの鬼太郎」を、中田久(同前)1曹が「怪しげにw」そして、本当に楽しそうに歌います。こんなパフォーマンスもあるんですね、後半は大笑いしながらも大変驚きました。田中2曹のフォローも爆笑の連続です(^ ^)

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 そして、田中2曹が、今この時も、世界中の海の上、空の上そして海の中で任務に就いている海上自衛官がいること、演奏会を通じてそんな自衛隊を身近に感じ、さらなる応援をしていただけると幸いであるとの口上を述べると、たくさんの拍手が応えてくれました。

 4曲目が「最後の曲」として紹介されると客席からは「えー?」の声も上がります。

 最終曲として紹介されたのは「ザ・チキン」。縁の下の力持ち的存在のベース・ギターを主役に据えた名曲ですが、ベースギターだけでなく、多くのパートがソロ演奏を聴かせてくれます。ゲゲゲの鬼太郎で十分笑いをとった後で、演奏技術をしっかりと見せつけるという意図なのでしょう。大当たりです。東京音楽隊の演奏による動画は何度か拝見しましたが、特にソロ・演奏でのキャラの立ち方が舞鶴の方が「濃いなぁ」と素直に思いました。そして、素晴らしい演奏もさることながら、役者揃いと言いますか、「楽しませるためならなんでもやるぜ」という感じがよく伝わります。

 そして、アンコールに応えての演奏は、もちろん行進曲「軍艦」です。

 強風の中にも関わらず、本当に安定した演奏には恐れ入りました。そして、東京音楽隊や横須賀音楽隊とはまた違った魅力溢れる音楽隊であることがよくわかりました。動画をご覧になって、気になるプレイヤーを見つけられた方が多いんじゃないでしょうか、舞音のフォローも楽しみになりました(╹◡╹)

 よっしーさんが動画をアップして下さったおかげだと思います、改めて、よっしーさんには感謝申し上げます。ありがとうございました。