あれこれdiary

海自OBによる偏見御免徒然あれこれdiary

日本海の怪

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 昨年(2018年)12月20日午後、日本海において哨戒飛行を行っていた海上自衛隊第4航空群(厚木)所属の哨戒機P-1(ピーワン)が、能登半島沖の我が国EEZ内で、韓国海軍の駆逐艦「広開土大王(クァンゲト・デワン)」から射撃管制(Fireing Control / FC)レーダーを複数回にわたり、各数分間照射されるという事件が起きました。

 すぐに記事を書きたかったのですが、時間が取れず年を越してしまいました。でも、事件は解決するどころか、長期化の様相を呈しているため、皮肉にも記事が間に合いました。

 報道等を見る限り、FCレーダーの照射という問題に議論が集中しているように感じられます。もちろん、それ自体重大な国際協定違反でありますが、もっと基礎的な問題があるのです。下の写真は、P-1哨戒機が撮影したVTRから切り出した「広開土大王」の写真ですが、極めて異常な状態であることがお判りいただけるでしょうか。

 そうですね、軍艦旗を掲げていません。つまり、外形上軍艦に見えるけれども国籍不明かつ、軍籍にあるか否かも不明な不審艦艇となっています。 

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 海軍艦艇がこのようなブザマな姿で公海上を行動するなど、海軍軍人の感覚として到底考えられないことです。例えるなら、パジャマ姿で出勤するようなものです。

 第一、商船、軍艦の別なく、航海中は所属国を示す旗章を掲げるのが国際法の定めるルールですし、韓国海軍の軍規にも明文で掲揚義務がうたわれているはずです。それが常識だからです。

 この映像が防衛省により公開された時、韓国国防省は強く反発しましたが、私は、このような違法かつブザマな自国海軍艦艇の姿が世界中の海軍関係者の目に晒されたことも大きな要因であろうと考えています。

 では、何故わざわざそのようなブザマな姿で行動しているのでしょうか。

 軍艦旗を掲揚するのを忘れたのでしょうか?だとしたら、すでに海軍艦艇の体をなしていませんが、経験豊かな韓国海軍の艦艇がそのような状態にあるとは到底考えられません。つまり、故意に掲揚していないということになります。一国の海軍艦艇が、故意に国際法を無視して軍艦旗を掲揚することなく公海上で行動しているのです。

 あまり注目されていませんが、同艦と行動を共にしていたと思われる韓国海警察庁警備艦「サンボンギョ」についてはどうでしょうか。

 下の写真をご覧になれば判るとおり、やはり国籍旗を掲揚していません。司法警察権を行使すべき船が、自ら国際法(おそらく国内法も)に明確に違反する状態で行動していることがわかります。

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 FCレーダーの照射以前の基礎中の基礎の部分で、彼らの行動は「異常」なのです。

 この現場での彼らの行動について、国際的監視下に置かれている北朝鮮漁船による「瀬取り」を支援しているのではないかとの意見も聞かれますが、今回彼らが主張しているように「遭難漁船の救助に当たっていた」との説明をすれば足りる話で、軍艦旗や国旗をわざわざ掲揚しない理由にはなりません。それどころか、わざわざ異常な状態で白昼堂々と行動することにより、「俺たちに注目してくれ」と言っているようなものです。何故、このようなことが起きているのでしょう。

 ここからは、全くの私見であり、何の根拠もありません。

 経験豊かな海軍艦艇や海洋警察庁船艇が、このような船乗りの常識では考えられないような異常な状態で行動しているのは、海事や軍事に関する知識には乏しいが、絶大な権限を持っている者の、浅知恵に基づく命令に従わざるを得なかったからではないかと思えるのです。それが「瀬取り」支援なのかどうかはわかりませんが、国際的に違法な活動を命じられ、「旗をおろしておけば、いくらでも言い逃れできるのだから、掲揚するな」と指示されていたのではないでしょうか。そのような艦艇乗員の誇りを踏みにじる指示を安易に下せるのは軍籍にない者しかいません。つまり、海軍や海洋警察庁が主管する作戦ではないということです。

 私も、この事件が起きた当初は「韓国海軍は何を考えているんだ」と憤りを感じましたが、その後じっくり考えていくと、どうも合点がいかず、上記のように捉え直して見ると、FCレーダー照射は、広開土大王艦長の敵対的意思というよりは、SOSだったのではないかと思えてきたのです。

 FCレーダー波の諸元は、どの国の軍隊にあっても秘匿すべき情報です。ですから、例え友好国であったとしても、外国の艦艇・航空機が近傍にいる際には、電波封止の措置が取られます。それをわざわざ照射するということは、「諸元を収集されても構わない、だって撃墜するから」という意思表示と捉えられても仕方ないでしょう。

 そのような常識からは考えられない行動、しかも海軍間の不測事態防止のために取り決められた多国間協定(CUES)にも抵触するような、間違いなく大問題に発展するような行動を広開土大王艦長が行った背景には「俺たちはこんなことやりたくないんだ。この現場のことが注目されるように問題化してくれ」という悲痛な思いがあったのではないかと想像するのです。そうでも考えなければ、一連の異常な出来事の説明ができないからです。

 先の旭日旗問題もそうですが、韓国海軍の意思だとはとても思えません。私自身は韓国海軍を敵性勢力だとは思いませんし、彼らだって海上自衛隊を敵だとは思っていないと思います。そんな彼らの意思とは無関係に、韓国国内に蠢く薄気味の悪い思念が、様々形を変えて表出しているのが現在の状況ではないかと思います。

 再度申し上げますが、単なる私見で、何の根拠もありません。そんな見方もあるのかなと読み流していただけると幸いです。

 最後に、防衛省が公表した現場での撮影動画を貼っておきます。

 

www.youtube.com

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【追記】

1月6日に続編を書きました。

retcapt1501.hatenablog.com