あれこれdiary

海自OBによる偏見御免徒然あれこれdiary

「煙草盆出せ」

海上自衛隊用語解説の続きです

 今回のタイトル「たばこぼんだせ」と読んで下さい。まぁ、そのままですね。

 煙草盆と聞くと、こういうのを思い浮かべるのではないでしょうか。

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 「煙草盆出せ」は、艦内で使われる(使われていた?)一種の号令なのですが、こんなものを出せとは、一体なんのこと?と思いますよね。

 ところで、このブログで私が書く現役時代の思い出話は、艦艇にまつわる内容のものが多いものですから、私が艦艇乗りだったと思われる方もいらっしゃるかも知れませんね。でも違います。 

 私が艦艇に乗り組んでいたのは、実習幹部として遠洋練習航海に参加した時だけです。ですから、私が書く内容は、昔々の話ばかりです。でも、多分基本的にそう大きな違いはないのではないかと思います。

 でも、その当時と大きく変わった点があります。それは、艦内での喫煙が全面的に禁止になったことです。以前は、艦内の居住区や食堂で喫煙が可能で、艦橋でも喫煙していたような記憶があります。

 護衛艦は、訓練や演習のために長期間にわたり洋上で活動することが多いです。単一目的の訓練であれば、スケジュール通りにこなすことができますが、対抗演習などのように、先が読めない連続状況で、咄嗟に生じる戦闘に備えてずっと緊張状態を維持するのは容易ではありません。

 そこで、把握している全般状況や最新の情報から、当面ホットな状況に入る可能性が低いと判断した場合に、艦長が達する号令が「煙草盆出せ」なのです。

 つまり、「現下の情勢は、直ちに戦闘が生じる可能性が低いと見積もられるため、各員は、今のうちにリラックスして次の状況に備えよ」という意思表示を「煙草盆出せ」という号令で伝える訳です。

 で、私の疑問です。艦内での喫煙が全面禁止されている現在の護衛艦でもやはり「煙草峰出せ」と言っているのでしょうか。現役時代にそんなこと確認していませんでしたので、わかりませんが、多分、伝統的に使われてきたものですから、今も使っているんじゃないでしょうか。近々同期の集まりがありますので、話題を振ってみようかと思います。

 因みに、リラックスモードから緊張状態に戻れという号令は「煙草盆引け」です。

 なお、艦内の居住区に置かれていた大きな灰皿というか、分厚い板で作られた底の浅い木箱の内側にブリキの板を貼って作られた吸い殻入れを「煙草盆」と呼んでいたように記憶しています。「煙草盆出せ」で、冒頭の写真のようなものが出てくるわけではありませんので念のため。