あれこれdiary

海自OBによる偏見御免徒然あれこれdiary

三宅由佳莉さんの、言霊

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 今回のタイトルを見て、違和感を感じた方もおられるかもしれませんが、別に三宅さんのことを神格化しようとか、そういう意図はありません。

 ただ、今回書こうとしている内容を、端的に表す言葉が「言霊」かな、と思って使ってみました。

 先日、「三宅由佳莉さんの、最近の動向(18-03)」という記事で、潜水艦「せいりゅう」及び、潜水艦救難艦「ちよだ」の自衛艦旗授与式で、三宅由佳莉さんが歌われた「海のさきもり」について、従前と比べて低音部に深みのある力強さが備わったと書きました。技術的なことは良くわかりませんが、間違いなくそう感じました。

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 三宅由佳莉さんの、弛まぬ修練の成果が形になって現れているんだなと思いますし、自衛隊に歌姫が増えたことも、とても良い刺激になっているのでしょう。

 成長し続ける三宅さんを応援して行きたいと思います。

 実は、上で述べた2艦の自衛艦旗授与式の様子を拝見して気づいたことが、もう一つあります。それが今回のタイトルに関係することなのです。

 最初に見たのは「ちよだ」の動画でしたが、「海のさきもり」が吹奏される中、三宅由佳莉さんが正面奥から歩いて来られ、中央に設えられた小さな演台に乗った、次の瞬間、私は「え?」と思いました。私は当然、自衛艦旗の授与者である海幕長がおられる方、つまり向かって右を向くものだと思っていたからです。今回はスタンドマイクではなくハンドマイクを携行しての登壇でしたから、本当に不意打を喰らったように驚きました。下の動画で確認してみてください。

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 なぜ驚くかというと、三宅由佳莉さんは、音楽隊の一員として歌唱しているはずですすが、本隊とは逆方向に向かって、つまりひな壇に背を向けて演奏しているわけです。

 では、従前はどうだったでしょうか。

 ちょうど2年前の3月に、潜水艦「じんりゅう」の自衛艦旗授与式では、ひな壇の位置関係は今回とは異なりますが、少なくとも、音楽隊、儀仗隊、乗員たちと同じ方向を向いていました。下の動画で確認して見てください。

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 どっちを向いたっていいじゃないか、と思われるかもしれませんが、全く意味合いが異なります。今回のように授与者に背を向けて、就役する新艦艇の乗員に対面するということは、授与者側の立場で演奏しているとも言えるからです。

 三宅さんがうっかり間違えたとは流石に思えないので、自衛艦旗授与式における「海のさきもり」の意味づけが変わった、あるいは、新たに意味付けが行われたのではないかと感じました。

 そこで、潜水艦「せいりゅう」の動画を見てみたところ、三宅由佳莉さんは、音楽隊や儀仗隊と同じ方向ではなく、ひな壇の方を向いて歌っています。でも、ひな壇と三宅さんの間には、新たに乗り組む乗員達が整列しているのです。

 つまり、いずれの式典においても、三宅さんは、ひな壇ではなく、新たに乗り組む乗員たちに向かってこの儀礼曲を歌っていたと考えるのが自然です。

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 「海のさきもり」は、海上自衛隊が発足した当初からの儀礼曲で、自衛艦旗授与式などで吹奏されてきました。でも、歌唱を伴いませんから、次第に歌詞があることすら忘れ去られていました。

 三宅由佳莉さんが入隊されて以来、自衛艦旗授与式で歌唱される機会が少しづつ増え、現在は横須賀音楽隊に中川麻梨子さんという非常に大きな戦力が加わったこともあり、歌唱を伴う式典が定番となりつつありますが、おそらく海上自衛隊として、歌唱を伴うことによる式典の意味合いの変化を、十分に咀嚼できていなかったのではないでしょうか。

 以前、別記事でも紹介しましたが、「海のさきもり」の歌詞はとても素晴らしい内容です。たとえ厳しい環境にあっても、国土と同胞を守り抜くため、海のさきもりを自認し、気高くあろうとする心意気が込められています。

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 ですから、この曲は、新たに自衛艦旗を授けられ、防衛の任に就こうとする乗員たちに向けたメッセージに他ならないわけです。

 そう考えると、おそらく、この儀礼曲の歌詞が持つ、深いメッセージ性というものを式典の形式上も生かすべきであるという判断があったものと推察します。

 三宅由佳莉さんや中川麻梨子さんが、自衛艦旗授与式でこの儀礼曲を「言葉」で歌うことにより、新乗員たちは、任務に就く覚悟を新たにすることでしょう。

 「言葉」の、そのような作用をもたらす力を「言霊」と呼ぶのではないでしょうか。