海上自衛隊用語の続きです。
今回は、素直に「でふねゆうせん」です。
これはそもそも、海自用語というよりは海事用語です。港湾を出入りする船が、港口でお見合いする形となる場合、出航する船を優先し、入港船は待機するという約束事です。
船乗りにとっては常識ですし、港則法などで法定もされています。理由はお分かりと思いますが、入り船優先にした場合、港内が輻輳する恐れがあるからです。
このように、「出船優先」は海上での一般ルールですが、海上自衛隊では、例によって艦艇以外の部隊でも、結構頻繁に耳にする言葉です。例えば、部屋の入口を出入りする隊員同士が鉢合わせしたような場合、入室しようとしていた人が、「出船優先」と言いながら道を開けたりします。階級の上下ではなく、「出船」を優先します。
一般の社会でこのルールが適用されているのが、電車の乗り降りですよね。もちろん、都会の電車であれば、いつも混んでますから、降りる人(出船)を降ろさなければ乗る人(入り船)のスペースが確保できないという事情もありますけど。
それでも、出船が終わらないうちに乗車しようとする入り船が結構いますよね。これは「乗り降り」という言い方も影響しているかもしれません。乗る方が優先されているようにも取れますから。
だからなのかわかりませんが、鉄道会社によっては、「乗り降り」ではなく「降り乗り」と言っているところがあると聞いたことがあります。なるほどと思いました。言葉に言霊が宿っているかどうかはわかりませんが、耳から入る言葉、目から入る言葉が、私たちの心理活動に何らかの影響を与えないわけがないですもんね。
電車の乗り降りでは、「降りる方が済んでからご乗車ください」がルールになっていますが、その他の出入り口では、一般的と言えるルールは確立していません。
私は、コンビニなどの出入り口で、他人と鉢合わせした場合にはには、習い性で「出船優先」を常としています。もちろん、自分が「入舟」の時だけです。出船の時に同じことをすると、大抵トラブルの元になるはずです。
歩行者は右側通行、という一般原則もすっかり崩れ去っているように思えますが、それでも、そういう原則があるということをみんなが知っていることが重要です。
私は、同じように「出船優先」の原則が一般ルールとして定着すれば、ほんの少しですけど、世の中がスムーズに回るような気がします。