海上自衛隊東京音楽隊の歌手である、三宅由佳莉さんは、岡山県倉敷市のご出身で、高校を卒業するまでの18年間をこの街で過ごされました。
倉敷市といえば、どんなイメージでしょう?
私は、固有名詞の字面と音の響きというものが、イメージに与える影響は大きいと思っていますが、倉敷という名称から受けるイメージは、古風かつ上品で落ち着いた佇まいといったところでしょうか。昔から美観地区の整備に注力されてきたこともあり、倉敷川周辺の街並みは、ただただ美しいの一言です。
私が広島県江田島にある海上自衛隊幹部候補生学校に入校中、一度だけ倉敷市に一人旅をしたことがあります。防衛大学校の学生時代から、「倉敷」という名前に心惹かれるものがありましたので、初めて訪れた倉敷の美観地区には大変魅せられました。
倉敷川周辺の美観地区、正式には国の「重要伝統的建造物群保存地区」という全然美しくない名称ですが、景観はこのとおり、見事です。
そんな美しい倉敷で生まれ育った三宅由佳莉さんですが、海上自衛隊東京音楽隊での歌手としての活躍が認められ、昨年1月、岡山県知事からの委嘱により「おかやま晴れの国大使」に就任されました。岡山県のPRなどを行います。
ちなみに、「晴れの国大使」就任後のロングインタビュー記事が、岡山県公認の「晴れの国おかやま応援サイト もんげー部」に載っています。読みたいかたは、このリンク(8092fun.jp)から飛んでください(無料会員登録が必要です)。
下の動画は、委嘱状授与式の様子を伝える地元テレビのニュースです。
一公務員の立場で、このような委嘱を受けるのは異例中の異例です。海上幕僚監部も頭を悩ませたのではないでしょうか。結局、海上自衛隊東京音楽隊所属の3等海曹三宅由佳莉としてではなく、岡山県倉敷市出身の歌手三宅由佳莉として委嘱を受けるという整理になったものと思われます。だから私服でなのですね。
さて、授与式後の記者会見で、「故郷」をアカペラで披露されていますが、この曲の良さを改めて気づかせてくれる、そんな歌声ですね。
三宅由佳莉さんは、この「故郷」という曲を、いろいろなところで歌ってらっしゃいますので、動画を交えながら、いくつか紹介してみたいと思います。
まず、平成26年5月5日〜12日、海上自衛隊東京音楽隊が、ノルウェイの首都オスロで行われた「ノルウェイ憲法制定200周年記念行事 Military Tattoo 2014」に参加した際、東京音楽隊のバンドによる「天地人」の勇ましいドリル演奏から、曲調ががらりと変わり、振袖姿で淑やかに歩みながら、三宅さんが歌いだす「故郷」には感動します。
また、昨年8月17日〜30日には、スイスのバーゼルで開催された「Military Tattoo 2016」に、東京音楽隊がメインゲストとして招かれ、ここでも三宅さんは真っ赤な振袖姿で、やはり「故郷」を歌い、ヨーロッパ中から集まった聴衆を魅了しました。
これらの動画へのコメントで多いのが「泣ける」「涙が出る」といった声でした。
この歌は子供のころからそれこそ何度も聞いてきた曲のはずです。今あらためて、涙が出るほど感動するのは何故でしょう。
心を込めて歌っているから? それはそうですね。でもそれだけでは説明がつかないのではありませんか? 問題は、どんな心が込められているかだと思います。
努力を重ねることにより、心を込めて歌うことはできても、そこから先は、込める心の本質そのものが問われるということなのではないでしょうか。
最後に、三宅由佳莉さんが、平成27年1月10日(110番の日)に、故郷である倉敷市のイオンモールで行われた「海上自衛隊・県警音楽隊合同演奏会」の最後の曲目として披露された「故郷」です。歌を披露するにはあんまりな環境であるにもかかわらず、歌い出しで心を持っていかれます。心を込めて歌っているというだけでは説明がつかないと言った意味がわかっていただけると思います。
このように、みんなが知っている歌にきちんと織り込まれているにもかかわらず、忘れ去られてしまった、日本人が本来持っている心の記憶を呼び覚ましてくれるのが、三宅由佳莉さんの歌なのではないでしょうか。
このほどリリースされた最新アルバム「SING JAPAN〜心の歌」に収録されている曲を聴いてみても、やはり同じような印象を受けます。ゆきかぜさんがコメントを寄せられていたように、このアルバムの三宅さんの歌声を聴くと、現在を生きる若い方なのにもかかわらず、古き良き時代の日本人の心が感じられます。
聴く人にとって、三宅さん自身が「故郷」のような存在なのかもしれません。
今回は、三宅由佳莉さんの「故郷」倉敷のこと、そして、三宅由佳莉さんが歌う「故郷」の素晴らしさについてご紹介させていただきました。