海上自衛隊の砕氷艦「しらせ」が11月12日(日)、晴海埠頭を出港し、南極に向かいました。これから夏を迎え、海氷域が小さくなる南極で、昭和基地への支援活動等を行います。
「しらせ」は、南極観測支援を目的に、文部科学省の予算で建造されており、報道では同省での名称である「南極観測船」と呼ばれています。このため、同艦が海上自衛隊所属の艦艇であることをご存知ない方も少なくありません。
でも、海上自衛隊唯一の「砕氷艦」であり、このとおり艦尾には自衛艦旗を掲げています。
現在の「しらせ」は2代目ですが、初代「しらせ」の前に活躍していたのが、砕氷艦「ふじ」です。
歴代の砕氷艦は、横須賀地方総監の直轄艦として横須賀地方隊に所属しています。直轄艦というのは、間に中間司令部等が介在しない直属の艦ということです。
砕氷艦といえども、海上自衛隊の艦艇ですから、南極支援の合間には広報支援業務で、日本各地の港を訪れ、艦内を一般公開したりしています。
ずいぶん前のことになりますが、砕氷艦「ふじ」が、広報支援のため、とある港に入港した時のこと、一般公開で乗艦してこられた、あるご婦人が、「ふじ」のヘリ甲板に駐機してあったヘリコプターの機体に「海上自衛隊」と書いてあるのを見て「どうしてここに自衛隊がいるの!わたしはこんなものが見たくてきたんじゃないのよ!なんなのこれは!」と怒り出したのです。
そばにいた隊員が、「申し訳ございません、そうは仰られましても、お客様がお乗りになっている、この船は海上自衛隊の砕氷艦でございます」とご説明したところ、目を白黒させながらお帰りになったそうです。
自衛隊と聞くだけで嫌悪感を感じる人が少なくなかった時代のことです。
ちなみに、砕氷艦「ふじ」は、現在名古屋ガーデン埠頭にある海洋博物館の体験型歴史的資料として一般公開されています。体験型歴史的資料「南極観測船ふじ」
さて、この度「しらせ」が出港する際の様子を収めた動画がアップされていましたので、ご紹介します。東京音楽隊が演奏する「行進曲『軍艦』」そして「蛍の光」に送られて、出港していきます。
この動画の「行進曲『軍艦』」、ちょっと変だなと感じませんか?わかりますか?
そうなんです、いつまでも終わらないエンドレスバージョンです。出港行事の際には、最後に「蛍の光」を吹奏するタイミングまで、「軍艦」エンドレスバージョンを吹奏し続け、場がシラけることのないように演出されているのですね。
『軍艦』ファンにとってはたまらない演奏ではないでしょうか。
それにしても、「出港よーい!(用意)」の号令にぴったりあわせて演奏を始める技といい、東京音楽隊の皆さん、「BZ」です。
横須賀地方総監の直轄艦なのに、なぜ、横須賀音楽隊ではなく、東京音楽隊が演奏するのでしょうか。これには意味があります。
確かに、砕氷艦「しらせ」は横須賀地方隊所属の艦艇ですが、南極観測支援業務は、海上幕僚監部の事業であり、海上幕僚長を通じた防衛大臣の命令を受けて行われているからです。
かつては、次期越冬隊の方々も、晴海から一緒に出港していかれたのですが、現在は、南極へ向かう際の最後の寄港地である、オーストラリアのフリーマントルで合流しているようです。研究者のみなさんの貴重な時間を、単なる航海のために浪費することを極力抑えるためなのだと思います。
出港に先立ち、晴海のボーディングエリアで行われた出国行事の動画もありましたので、埋めておきます。あまり目にする機会はないと思いますので、ちょっと長いですけど、興味のある方はご覧になってください。小野寺防衛大臣の訓示や、村川海幕長の壮行の辞などもなかなか聞き応えがあります。
また、東京音楽隊が様々活躍しているのもお分かり頂けると思います。
長くなりましてので、今回はこの辺で終わりますが、「しらせ」や南極観測支援については、また続きを書いてみたいと思います。