先回、三宅由佳莉さんの転勤について記事を書いたところ、ずっと東京音楽隊で歌ってほしいとのコメントをいただきました。
実を言えば、私もそう思いますし、私の記事を読んでくださっている三宅由佳莉ファンのみなさんも同じ気持ちなのではないでしょうか。
前々から気になっていたことを自分なりに整理してみようと思って書いた先回の記事ですが、なんだか組織論的な観点での書きぶりになってしまいました。
海上自衛隊の人事制度の一端をご紹介するという意味はあったかもしれませんが、なんとなくぶっきらぼうな内容ですよね。
そこで、今回は、三宅由佳莉さんの立場から考えてみようと思いました。
三宅さんは以前、インタビューで
「私は制服を着て歌うことに誇りを持っているので、将来、結婚して子供が生まれても、自衛官として歌い続けていきたいです」
と答えています。「海上自衛隊の歌姫・三宅由佳莉さんインタビュー」JIJI.COM
ファンにとっては嬉しい言葉ですよね。
ここで注目していただきたいのが、「制服を着て歌うことに誇りを持っているので」「自衛官として歌い続けていきたい」という部分です。
別のインタビューでは「私は、自衛官として歌うことに意味があると思っています」とも仰っています。
どういうことでしょうか。
私なりに解釈すると、自衛官の心を持った歌い手として歌うからこそ、他のどんなに歌唱力に優れた歌手にも真似のできないやり方で、国民の心にメッセージを届けることができるのだということを強く自覚しておられるのだと思います。
以前、別の記事で、かつて、自衛隊音楽まつりには、宝塚出身のスター歌手などをゲストに招き、自衛官の制服姿で歌を披露してもらっていたことを紹介しました。
確かに、歌も、ダンスも、トークも、さらには制服の着こなしも超一流ですから、素晴らしいステージであったことは間違いありません。でも、どこまでいっても「本物」ではないのです。
技術や演出では絶対に伝えられないのが、「本物が持つ説得力」だと思います。
さて、三宅由佳莉さんの階級「3等海曹」は、海曹、つまり下士官のなかで一番下の階級です。とはいえ、後輩隊員も増え、今では同じ3曹の中でも序列が相当上の方でしょうし、遠からず2等海曹に昇任されるでしょう。
最近撮影された動画を以前のものと比較してみると、海曹としての「風格」のようなものが感じられます。恋ダンスの「チーム三宅」(勝手な命名です)をまとめ上げるリーダーシップもなかなかのものです。
三宅由佳莉さんは、歌い手としての研鑽を積む傍ら、海上自衛官、下士官としても間違いなく成長されていることがよくわかります。
しかし、今後中堅海曹として勤務するにあたり、三宅さんは、物足りなさを感じておられるはずです。
それは、自衛官たる歌手である三宅由佳莉さんには、歌手としての成長に見合った、自衛官としての中身の充実が不可欠なのですが、音楽隊での活動だけでは限界があるということです。
とはいえ、歌手である以上、音楽隊やその関連配置以外に就くことはまずないでしょう。
三宅さんは、遠洋練習航海部隊に乗り組む臨時編成の音楽隊への参加を希望されていますが、あるインタビュー記事のなかで「参加する必要性を感じている」と仰っています。「参加してみたい」ではなく「必要性を感じている」というのです。
この言い回しに、全てが現れていると思います。
バンドのメンバーは、毎年交代で遠洋練習航海部隊に臨時勤務しているわけですから、彼らには、艦艇勤務が何たるかを語る言葉があります。それは、当然演奏にも活きてくるでしょう。
また、実戦部隊の実情を知っているだけでなく、「わかっている」ことが、隊員向けの演奏に力を添えてくれるでしょう。
さらには、そのことが、国民向けの演奏の際に、「本物が持つ説得力」となって伝わるでしょう。
三宅さんが、ある種の「焦り」を感じておられるであろうこと、そして、だからこそ「参加する必要性を感じている」のだということが、私には解る気がします。
いつも、真摯に自分の「使命」と向き合っておられる三宅さんの、そんなささやかな希望が叶うならば、今後、彼女がさらに大きく飛躍するきっかけとなってくれるに違いありません。