2016年3月にリリースされたアルバム「ブラバン・ヒーローズ」の発売に伴い配信された、収録曲「キューティーハニー」を歌う三宅由佳莉さんの動画があります。最初に見たときには度肝を抜かれました。既に再生回数110万回を超える人気動画ですので、ご覧になった方も少なくないのではないでしょうか。
埋め込み再生できませんので、下のリンクから飛んでみてください。
https://www.youtube.com/watch?v=TvDWJif1sSI&list=WL&index=108
この動画には数多くのコメントが寄せられており、ほとんどが絶賛する内容なのですが、中にはネガティブなコメントもあります。
ある女性は、「三宅さんはソプラノ歌手として実力があるだけに、このような下品な歌をうたっていることが残念だ。東京音楽隊はレベルの高い吹奏楽団だと思っていたが違ったのか」といった趣旨のコメントを残しました。つまり、格調高いクラシックやオペラの楽曲に専念すべきとのお考えなのだとお見受けしました。おそらくこの方は、音楽隊の「使命」をご存知ないのだと思います。
音楽隊の「任務」はつぎの3つです。
①隊員の士気高揚のための演奏
②儀式・式典における演奏
③広報のための演奏
つまり、私たちが東京音楽隊の演奏や三宅由佳莉さんの歌を楽しめるのは、③に根拠があるわけです。そして、広報のために音楽隊が行っているのは、海上自衛隊のことを広く国民にPRし、海上自衛隊に対する理解と支持の基盤を広げ、強化するという明確な目的を持った演奏活動なのです。
目的を持たない任務であるならば、芸術性のみを追求して格調高い音楽に限定した演奏活動を行っても何ら問題はないし、先ほどの女性のようなクラシックファンを十分満足させることができると思います。
しかし目的をもった任務(それを「使命」といいます)では、そんな勝手は許されません。音楽隊にとって演奏は、芸術性を追求する目標ではなく、使命を達成するための手段なのです。手段である以上、技術を磨き、芸術性を高める努力をするのは当然ですが、最終的な目的が異なるということです。
三宅由佳莉さんの歌(最近はダンスも?)も同じです。広く国民にPRするのですから、特定の得意なジャンルに限定するわけにはいきません…
…と言うのは簡単ですが、あらゆるジャンルのあらゆる嗜好を満足させるためにはどれほどの努力が必要なのでしょう。
三宅由佳莉さんは、確かに素晴らしい声にも恵まれ、歌唱力も高く評価されていますよね。でも、苦手な分野や音域もあるでしょう。私がこれまで拝見した動画などでも、苦しそうに歌われている姿も目にしました。
でも私は、たとえ上手く歌えない部分があったとしても、決して逃げることなく、正面からぶつかって行く三宅さんの勇気に感動を覚えますし、強く励まされます。
色や形のないものだからこそ、聴く人の心に残る歌を届けたい。
いつも強くそう思いながら、丁寧に気持ちを込めて歌ってらっしゃることは、歌う姿をみればよくわかりますね。
私は、そんな三宅さんの心のこもった歌と、「いっしょうけんめい生きる」姿に、失いかけていた自分を取りもどすきっかけを与えていただきました。
三宅さんの歌に癒される方は大勢いますが、私のように「救われた」人もきっとたくさんいらっしゃると思います。
三宅由佳莉さんは、今でも大変影響力のある方ですが、現状に甘んじることなく、自分が思い描く海自の「歌姫」の姿を目指して日々絶え間ない努力と挑戦を続けておられるのだと思います。
そんな三宅さんを、応援せずにはいられません。