海上自衛隊の儀礼曲の一つである「軍艦行進曲」は、帝国海軍軍楽長・瀬戸口藤吉氏の作曲によるもので、日露戦争当時から帝国海軍将兵の士気を鼓舞し、国民の間では「軍艦マーチ」として広く親しまれていました。
しかし、大東亜戦争に敗れた我が帝国陸海軍が武装解除され、GHQの占領政策により、およそ旧軍を連想させるようなものは一切タブー視されるような風潮が我が国を覆い尽くした結果、残念ながらこの曲が演奏されることはなくなりました。
そんなあるとき、米海軍軍楽隊が公衆の面前で「軍艦行進曲」を演奏して我が国民を驚かせ、「世界屈指の名曲を演奏できることを光栄に思う」とのコメントで大いに感動させたことがあるそうです。名曲を前に、敵も味方もないという、米海軍らしい粋な計らいだと思います。
その一方で、特定の意図を持つ国内のある勢力が、旧軍の威光を貶める目的で、軍艦行進曲や陸軍分列行進曲(抜刀隊)をパチンコ店で流すようになったとの話があります。事の真偽は明らかではありませんが、確かに、私の若い頃、軍艦マーチと言えばパチンコ屋の代名詞のようなものでした。
最近、東京音楽隊をはじめ、海上自衛隊の音楽隊による演奏会の様子を動画投稿サイトで楽しむ機会が増え、演奏会の最後には必ず軍艦行進曲を演奏することや、曲名については「行進曲『軍艦』」と紹介していることを知りました。
海上自衛隊の音楽隊は、「軍艦行進曲」の栄光が貶められていた時代から、何十年にもわたり、その名誉回復のために地道な戦いを続けてこられたのかと思うと、胸に迫るものがあり、現役時代にはそんなことをまるで知らなかったことを恥じ入ることしきりです。そして、あえて「行進曲『軍艦』」と呼称する理由も分かるような気がします。
この曲は海上自衛隊の儀礼曲の一つとして制定されていますので、当然のことながら、公の様々な行事で演奏されます。
1991年、湾岸戦争後のペルシャ湾に残された多数の機雷を処分するため、国を二分するような大論争の末、海上自衛隊の掃海部隊が、自衛隊創設以来始めての海外での実任務に派遣される際に呉基地で行われた出航行事でも、呉音楽隊は、普段通り「軍艦行進曲」の演奏を予定していました。ところが、これを知った某政府中枢が、「軍艦マーチで見送るなどとんでもない。海上自衛隊は何を浮かれているのか。」として、演奏の中止が命じられたと、当時私たちは聞きました。国の威信をかけて大変危険な任務に就こうとする部隊を見送る時に、海上自衛官が誇りにしている「軍艦行進曲」を演奏できないことが、隊員の士気をどれだけ下げることになるのか。皆、怒りと悲しみを感じていました。
ところが、これに義憤を感じた米海軍軍楽隊が「お前たちが演奏できないなら、俺たちがやってやる。」と申し出てくれたおかげで、勇壮な「軍艦行進曲」が響き渡るなか、ペルシャ湾派遣部隊は出航することができたのです。
米海軍には感謝の言葉もありませんが、何故、外国の軍隊が理解してくれ、自国政府は踏みにじるのか、当時はやるせない思いでした。
そんなこともありましたが、軍艦行進曲は音楽隊の活躍もあって、今また支持を広げつつあるように思います。やっぱり、世界屈指の名曲ですね。
海上自衛隊東京音楽隊が参加した海外のタトゥー(各国軍楽隊による祭典)でも、この曲の演奏が始まると、会場は大いに盛り上がっていました。
三宅由佳莉さんの着物姿での「故郷」も見所です。
https://www.youtube.com/watch?v=NQEO3ZiZiTY&index=47&list=WL
2016年のバーゼルタトゥー(スイス)
三宅由佳莉さんの「祈り」」「アメイジング・グレイス」もいいですよ。
https://www.youtube.com/watch?v=Z_JTJR8O2Dc&index=46&list=WL
追加記事です。
平成29年4月29日、ニコニコ超音楽祭に初出演した東京音楽隊が演奏する「軍艦」ですが、「海行かば」のパートから歌が入り驚きました。ご覧になってください。
追加記事です。
平成29年10月8日、防衛医科大学校の並木祭で演奏された「軍艦」です。歌唱を交えたこの演奏、はっきり言って感動します。
追加記事です。
行進曲「軍艦」にまつわる動画(記事動画ですが)を見つけました。ちょっと感動したので、リンクを貼ります。盛岡一高出身の方必見。